2025年には国民の5人に1人が後期高齢者になると予測され、介護職員の需要は約32万人増加すると見込まれています。
しかし、介護現場では「仕事のやりがい」に対する満足度は高いものの、体力的・精神的な負担も大きく、業界の魅力が十分に伝わっていないことが課題となっているそうです。
国は「介護のしごと魅力発信等事業」を展開するなど、福祉業界の魅力発信やイメージアップを図る取り組みを推進しています。
施設のWEBサイトやリクルートサイトの拡充など、福祉業界の魅力を発信していくためのデザインが不可欠であると言われているものの、そういった観点で運営している事業所はまだ多くはないのだそうです。
そんな中、デザインの力を通して、医療・福祉業界の魅力を発信する取り組みを開始している事業者もあるそうで、改めてデザインスキルの重要性と広告の可能性を感じます。
参考記事：医療福祉業界の課題をデザインの力で解決する【Care Design Center -ケアデザ-】が業界特化型ブランディングサービスの申し込みを開始：山陽新聞デジタル｜さんデジ
今回は、医療・福祉の魅力を発信する介護施設のWebサイトについて考えてみたいと思います。
市場の現状：日本の高齢化と介護市場の動向
日本は高齢社会が進んでおり、統計によると、65歳以上の高齢者人口は2025年には全人口の約30％を占める見込みです。
将来に対して悲観的になってしまう側面もありますが、逆に、医療・福祉関連のサービスは市場としてのポテンシャルが非常に高いとも言えます。
介護市場の拡大
- 需要の増加
高齢者の増加に伴い介護サービスへの需要は年々増しており、特に、在宅介護サービスやデイサービスの需要が高まっています。 - 技術の進展
介護技術の進化も市場の成長を後押ししており、例えば、ウェアラブルデバイスや遠隔介護サービスなど新しい技術が導入されています。
競争環境
- 市場参入者の増加
市場のポテンシャルの大きさから、新規参入者が増えており、競争が激化していると言えるそうです。 - 差別化の重要性
効果的な広告戦略が、企業のブランドを際立たせる要因となるため、差別化の重要性がますます高まっています。
参考記事：https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000608284.pdf
効果的な介護施設の広告のポイント
介護サービス業界の広告は、デザインとメッセージングの両方に注意を払う必要があると言われています。
効果的な介護サービス関連の広告のポイントについてまとめました。
視覚的アピール
- 安心感を与える青や緑など、清潔感と信頼感を演出する色使いが好まれる傾向にあります。
- 高齢者や介護者にも親しみやすいシンプルで明瞭なデザインを心がけます。
ターゲットに合わせた画像の選定
実際の利用者のポジティブな生活の様子を捉えた写真を使用することで、実際の生活をイメージしやすくなります。
感情に訴えるストーリーテリング
読者の共感を呼び起こすストーリーを用いて、介護の現実とその解決策を描写することが重要で、さらに事例や証言を交えることで、説得力を増す試みが効果的です。
明確で具体的なコールトゥアクション
どのように行動すれば良いかをわかりやすく伝え、ウェブサイト訪問や問い合わせへと導くことが重要で、「今すぐ詳細を見る」「無料相談を予約する」など、具体的な行動を促す言葉を選ぶことが効果的です。
介護サービスの広告における注意点
介護サービスの広告はデリケートなテーマを扱うという側面もあるため、他のサービスの広告とは異なる点に注意を払う必要もあると言われています。
正確性と尊重
提供するサービスや製品の情報は常に正確であり、誤解を招くような表現を避ける必要があります。
また高齢者や介護が必要な方の能力を適切に評価し、彼らを尊重する表現を心掛けることが重要です。
法規制の遵守
介護サービスに関連する法律や規制を理解し、広告がこれらの基準を満たしていることを確認することが必要です。
感情的訴求とバランス
介護サービスのプラスの側面を強調し、希望や支援のメッセージを前面に出すことが効果的ですが、感情に訴えるアプローチは、過度にならないよう注意する必要があります。
ターゲットオーディエンスの明確化
広告を見ることが想定される具体的なターゲットオーディエンスを明確にし、そのニーズに合わせた内容を作成することが重要です。
介護サービスのWebサイト事例
効果的に介護業界の魅力を伝えているWebサイトの事例を紹介します。
・株式会社リビングプラットフォームケア
全国で有料老人ホーム、グループホーム等の高齢者向け介護サービスを運営する株式会社リビングプラットフォームケアはWebサイトは、施設情報で施設の内観や設備を、写真や動画でわかりやすく紹介しており、スタッフのインタビューやサービスの特長、利用者の生活の様子も動画を交えて紹介しています。
介護に関する一般的な疑問に答える内容も充実しており、利用者が自身に合ったサービスを簡単に見つけることができる設計になっています。
https://care.living-platform.com/facility/50より引用
参考記事：https://medical.jiji.com/prtimes/198281
・社会福祉法人 明照園
利用者に安心感を与える優しい色使い、読みやすい大きな文字、アクセスしやすいコンテンツレイアウトを特徴とし、施設や法人の理念も明確に伝えています。訪問者に信頼感と親しみやすさを提供し、組織のブランド価値を高めるWebサイトになっています。
・通所介護Popo Queseracera
通所介護施設「ポポ・ケセラセラ」はドイツの医療トレーニング療法と日本のパワーリハビリテーションを組み合わせた独自の運動プログラムを提供するリハビリテーション施設です。
従来の介護施設とは異なる、洗練されたデザインのWebサイトは、高品質なサービスと居心地の良い空間づくりへのこだわりを表現しており、「ポジティブな介護を、ここから」というメッセージは、利用者一人ひとりの個性を尊重し、前向きな気持ちで介護に取り組める環境を提供するという施設の理念を明確に示しています。
https://studio.popo-q.co.jp/about/より引用
今回は、介護サービスのWebサイトについて考えてみました。
高齢化が進む社会において、介護サービスはますます重要な役割を担うことになります。
医療福祉業界を支えるデザインの力に、今後も注目していきたいと思います。