アンブッシュマーケティングとは?オリンピックでの事例とリスク

2024年パリオリンピックが7月26日に開幕しました。
毎日、速報を見ながら喜んだり落ち込んだりしています。
オリンピック期間中は、オリンピックに関連した広告が目に入ります。
応援する気持ちから、つい商品を手に取ってしまうこともあると思います。
しかし、広告担当者としては「アンブッシュマーケティング」の知識をしっかりと持っておくことが重要です。


今回は、アンブッシュマーケティングの基本について解説します。


アンブッシュマーケティングとは?

定義と概要

アンブッシュマーケティング(ambush marketing)とは、世界的な大会や著名なイベントについて、公式スポンサーではない企業が、あたかも公式スポンサーであるかのように見せかけるマーケティング手法です。
「便乗商法」や「あやかり商法」とも呼ばれます。
この手法は、イベントの盛り上がりやムーブメントを利用して、消費者の誤解を狙うものです。


歴史と背景

アンブッシュマーケティングは、1980年代から注目され始めました。
特に大規模なスポーツイベントでは、公式スポンサーに多額の投資が必要となるため、予算が限られている企業がこの手法を利用して、コストを抑えつつも大きな効果を狙うことが多いです。
しかし、この手法には大きな問題が伴うことを認識する必要があります。


正規のスポンサーシップと比較

正規のスポンサーシップは、イベントの運営側と正式な契約を結び、公式な権利を持つ企業が行います。
これに対して、アンブッシュマーケティングは非公式であり、法的・倫理的な問題が生じることが多いです。
公式スポンサーシップは、ブランドイメージの向上や消費者からの信頼を得やすいですし、長期的なビジネス戦略としても有効です。


アンブッシュマーケティングの手法

メディアを利用した方法

メディアを通じて、イベントに関連する広告を展開することで、消費者にイベントとの関連性を示します。
しかし、この手法は公式スポンサーの権利を侵害する可能性が高いですし、法的なリスクを伴います。


イベントに直接関連する方法

イベント会場の近くでプロモーション活動を行う方法もありますが、これも公式スポンサーとの混同を招く恐れがあり、倫理的な問題が生じます。
イベント運営側との信頼関係を損なう可能性があるため、慎重に検討すべきです。


デジタルマーケティングの活用

ソーシャルメディアやオンライン広告を利用して、イベントに関連するコンテンツを発信する方法もありますが、これも同様にリスクが伴います。
消費者に誤解を与えないよう、透明性を持ったマーケティングが求められます。


アンブッシュマーケティングの法律と倫理

国際オリンピック委員会の規制

国際オリンピック委員会(IOC)は、アンブッシュマーケティングを防ぐために厳しい規制を設けています。
公式スポンサーの権利を守るため、無断でのロゴ使用や広告活動は厳しく取り締まられます。


法的な問題点

アンブッシュマーケティングは、商標法や不正競争防止法に抵触する可能性が非常に高いですし、無断でイベントのロゴやフレーズを使用することは、これらの法律に違反する行為となります。
また、知的財産権の侵害にもつながるため、企業はこれらのリスクを認識し、適切な対策を講じることが重要です。


倫理的な側面

アンブッシュマーケティングは、公式スポンサーや消費者に対して誠実ではないとされています。
消費者を誤解させることで、企業の信頼性が損なわれる可能性が高く、長期的にはブランドイメージに悪影響を及ぼします。
企業は倫理的な観点からも、正しいマーケティング手法を選択することが求められます。


オリンピックでマーケティングしていいの?

経済効果

オリンピックは、BtoC企業にとって大きな商機です。
2020年東京オリンピック時の試算では、経済効果は約32兆3千億円とも言われていたそうです。
この効果は、「直接的効果」「レガシー効果」に分けられ、前者には大会運営費や観戦チケット費用、企業のマーケティング活動費用などが含まれます。
後者には交通インフラ整備や訪日観光客の増加、スポーツ人口の拡大などが含まれ、長期的な経済成長に寄与すると言われています。


スポンサーの種類と活用方法

オリンピックのスポンサーには、「ワールドワイドオリンピックパートナー」と「大会ごとのスポンサー」があります。
大会ごとのスポンサーはさらに、「オリンピックゴールドパートナー」「オリンピックオフィシャルパートナー」「オリンピックオフィシャルサポーター」に分かれます。
これらのスポンサーから得られる収入は、大会運営費の調達や日本代表選手の強化に使われます。


スポンサーになると得られる権利

スポンサーは、オリンピック・パラリンピックに関する知的財産権を使ったマーケティング活動が認められます。
具体的な権利には、呼称の使用権、マーク類の使用権、商品・サービスのサプライ権、大会関連グッズのプレミアム利用権、大会会場でのプロモーション、関連素材の使用権などがあります。
これらの権利を有効に活用することで、ブランドの認知度や信頼性を高めることが可能です。


アンブッシュマーケティングの禁止事例

知的財産の無断使用

オリンピックのシンボルやエンブレムを無断で使用した広告やPRは、法律違反となります。
たとえば、「オリンピックエリアに新店舗オープン!」「オリビアンがやってくる!」といった表現は、知的財産権の侵害にあたるため許されません。
また、公式のロゴやフレーズを無断で使用することも禁止されています。


パートナーであると誤解を招く広告

公式スポンサーでないにもかかわらず、オリンピックのパートナーであるかのような広告やPRも禁止されています。
具体的には、「がんばれ!ニッポン!」などのスローガンや「◯◯◯リンピック」といった表現が該当します。これらの表現は、消費者に誤解を与える可能性が高いため、避けるべきです。


イメージを流用する広告

オリンピックを連想させるグラフィックや表現もNGです。
たとえば、「2024年にはばたく子どもたちを応援」「2024円キャンペーン」なども、便乗商法として問題視される可能性があります。
これらの表現は、消費者にオリンピックとの関連性を想起させるため、注意が必要です。


オリンピックは、大規模な商機であると同時に、厳しい規制が伴います。
アンブッシュマーケティングは法的リスクを伴うため、広告担当者は法令や規則を遵守し、誠実なマーケティング活動を行うことが重要です。
最新の情報を常にチェックし、正しい情報発信を心がけることが必要です。
また、企業は消費者に対して誠実であることを忘れずに、長期的な信頼関係を築くことが求められます。


参考記事
https://manamina.valuesccg.com/articles/776