SNSやWebサイトでの「いいね」やコメントなど、ユーザーとのエンゲージメントを高める施策は、多くの企業が積極的に取り組んでいます。
しかし、エンゲージメントが高い=ブランドが大好き!というわけではありません。
実は、その先にある“コミット”こそが、企業が本当に目指すべきユーザーとの関係性と言われています。
コミットメントとは、ユーザーが主体的にブランドを支持し、積極的に広めていく状態のことです。
今回は、エンゲージメントとコミットメントの違いを整理し、ユーザーが”コミット”してくれるブランドを作るための具体的な方法について考えます。
エンゲージメントとコミットメントの違い
エンゲージメント(Engagement)とは?
SNSでの「いいね」やコメント、シェアなど、ユーザーが何らかのリアクションを示している状態を指します。
エンゲージメントは“その瞬間の関心”を測る指標となりますが、必ずしも「継続的な愛着」や「熱心なファン化」を示しているわけではありません。
コミットメント(Commitment)とは?
コミットメントは、ユーザーがブランドに深く関わり、長期的・主体的に支持している状態のことを指します。
具体的には、リピーター化や、口コミ・レビューの投稿、コミュニティへの参加など、ブランドに対して能動的に行動する姿勢が見られます。
- 自社のSNS投稿を自発的に拡散する
- ファンコミュニティを運営・参加して情報を共有する
- イベントや新商品を積極的に応援し、周囲にも薦める
このように、コミットメント状態にあるユーザーは、企業にとって”長期的に価値を生み出す存在”として重要視されています。
なぜコミットメントが重要なのか
リピーターとしての安定的な収益
コミット度合いの高いユーザーは、他社製品やサービスに目移りしにくく、リピート購入・利用率が高いのが特徴です。
単発の売上ではなく、“継続的な収益”につながる重要な顧客層といえます。
自然発生する口コミ・レビュー
企業が特別なインセンティブを与えなくても、コミットしているユーザーは積極的に口コミやレビューを投稿してくれます。
この“自発的な情報発信”が、新規顧客獲得に大きく寄与します。
ブランドコミュニティの形成
コミュニティが形成されると、ユーザー同士の情報交換や共感によってブランドへの愛着がさらに深まります。
これは企業が一方的に押し付けるのではなく、ユーザーが主体となって盛り上げることで持続的な発展が期待できます。
ユーザーが”コミット”する
ブランドの共通点
ブランドの価値観が明確
ユーザーが「応援したい!」と思うブランドには、はっきりとしたビジョンや価値観があります。
たとえば、「環境に配慮している」「地域コミュニティに貢献している」など、社会的意義を打ち出している企業は支持されやすい傾向があります。
ユーザーとの対話を重視
SNSやカスタマーサポートを通じて、ユーザーの声を積極的に取り入れる企業は、ユーザーとの信頼関係を深められます。
単なる「コメント返信」だけでなく、ユーザーの要望を実際に商品やサービスに反映することで、ブランドへの愛着が一層高まります。
ユーザー同士がつながる場を提供
コミュニティやファンミーティングなど、ユーザー同士が交流できる場を積極的に設ける企業は、結果的にコミット度が高いファンを多く抱えています。
共通の趣味や価値観をもつ仲間を見つけられることは、ユーザーにとって大きな魅力です。
ユーザーを”コミット”へ導く具体策
施策1:コミュニティ運営とファン参加型企画
- オンラインコミュニティの設立: 自社SNSだけでなく、SlackやDiscordなどを活用してファン同士が自由に交流できるスペースを設ける。
- ファンイベント・ユーザー会: オフラインやオンラインイベントで、ブランドに関連するワークショップや情報交換の場を定期的に開催。ユーザーはブランドの”共創者”として参加感を得られる。
施策2:UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
- レビューや写真投稿を積極的に紹介: 自社SNSやブログなどでユーザーの声や写真をリツイート・ピックアップする。
- 投稿キャンペーンの実施: 「ハッシュタグ○○をつけて写真を投稿しよう」のように、ブランドに関連するSNS企画を展開し、ユーザー発信を促す。
施策3:ブランドの価値観を発信し共感を得る
- ミッション・ビジョン・バリューの見える化: ウェブサイトやSNSで、ブランドが大切にしている価値観を具体的に伝える。
- 社会貢献やサステナブルな取り組み: ステークホルダーにも喜ばれるような活動を取り入れ、結果を公表する。
ユーザーは「このブランドを選ぶことで社会に貢献している」と実感しやすくなる。
施策4:”応援したい気持ち”を仕組み化する
- ポイント・サブスクリプション制度: リピートユーザーやコミュニティ参加者に還元する仕組みを作ることで、活動を継続しやすくする。
- コンテンツの先行公開・限定特典: 新商品の先行情報やファン限定コンテンツなどを用意し、特別感を提供。
コミットユーザーに「自分だけが知っている」優越感や特典を与える。
コミットメントを測る指標
エンゲージメントは「いいね」や「コメント数」などで把握しやすいですが、コミットメントを測るには以下の指標が有効です。
- リピート購入率・継続率: 製品・サービスを継続的に利用しているかを計測。
- NPS(Net Promoter Score): 友人や知人にブランドを薦める意欲がどれくらいあるかを数値化。
- UGC投稿数・口コミ件数: 企業が依頼しなくても自発的に投稿してくれるユーザーがどのくらいいるか。
- コミュニティ参加率・アクティブユーザー数: オンラインコミュニティやファンイベントに積極的に参加・発言しているユーザーの割合。
ユーザーコミュニティが
根付いている企業
カゴメ
カゴメが運営する「&KAGOME」は、コミュニティサイトの成功例として知られています。
2015年に開設され、現在では会員数が6万人を超えています。
このプラットフォームでは、ユーザーが自らのレシピや食に関する情報を共有し、交流することができ、ブランドへの愛着を深める場となっています。
スノーピーク
スノーピークは、アウトドア用品のメーカーであり、顧客との関係を強化するために「スノーピークファンミーティング」を開催しています。
このイベントでは、顧客が製品に対する意見を直接伝えることができ、企業側も顧客のニーズを把握する貴重な機会となっています。
これにより、顧客満足度の向上とブランドロイヤルティの強化が図られています。
引用元:https://www.snowpeak.co.jp/event/spw/
マイネオ
マイネオは、MVNO(格安スマホ)サービスを提供する企業で、ユーザーコミュニティ「マイネ王」を運営しています。
このコミュニティでは、ユーザー同士が情報を共有し合い、互いに助け合うことでブランドへの忠誠心を高めています。
特に、ユーザーからのフィードバックを基にしたサービス改善が行われており、顧客の声が直接反映される仕組みが整っています。
「エンゲージメント=ブランドへの強い愛着」と思われがちですが、実際には”いいね”や”コメント”が多くても、一時的な関心にとどまるケースは少なくありません。
これからの時代は、ユーザーが自発的・継続的にブランドを応援してくれる”コミットメント”状態こそ、真に目指すべきゴールとなります。
ユーザーにコミットしてもらうためには、ブランドの価値観を明確にし、ユーザーと企業が一体となって楽しめるコミュニティづくりを行うことが大切です。UGCや口コミの力を活用しながら、ユーザーがまるで”共創者”のように主体的に関わってくれる状態を育んでいくことが大切だと考えます。