現代のマーケティングにおいて、企業が顧客との関係を深め、持続可能な成長を目指すために注目されているのが「コミュニティマーケティング」です。
これは、単なる商品やサービスの販売促進だけでなく、顧客同士がつながり、企業と共に価値を創造する場を提供する手法です。
SNSの普及により、消費者が情報を発信し、他の消費者に影響を与える時代が到来していると言われています。
この変化に伴い、企業が一方的にメッセージを送るだけではなく、顧客自身の声を重要視し、彼らの力を活かす「コミュニティマーケティング」がますます重要になっています。
今回は「コミュニティマーケティング」についてまとめます。
コミュニティマーケティングの
基本的な目的とメリット
顧客インサイトの取得
コミュニティ内で顧客同士が交流することで、企業は顧客がどのように商品やサービスを利用しているのか、どのような不満や期待を抱いているのかといった、貴重なインサイトを得ることができます。
このインサイトは、定量的なデータでは見つけにくい「顧客の本音」であり、製品開発やサービス向上のヒントとして非常に役立ちます。
リファラル(推薦)の強化
コミュニティに参加する顧客は、自然と自社の製品やサービスを他の人に薦める「リファラル」活動に積極的になるのだそうです。
自分が支持しているブランドや商品を広めたいという意識が強まり、SNSや口コミを通じて無料で新たな顧客を引き寄せる力となります。
顧客エンゲージメントの増強
顧客同士がコミュニティ内でつながることで、企業やブランドに対するエンゲージメントが高まります。
顧客は、同じ商品やサービスに興味を持つ仲間とつながることで、「自分が選んだブランドに対する満足感」を強く感じ、他の競合製品に移る可能性が低くなると言われています。
LTV(顧客生涯価値)の向上
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額を指します。
コミュニティに参加している顧客は、商品やサービスに対する忠誠心が高まり、リピート購入や高額商品の購入に積極的になります。
これにより、企業は安定した収益を長期的に得ることができるのです。
カスタマーサポートの効率化
コミュニティ内でユーザー同士が質問に答え合う場を提供することで、企業のカスタマーサポート負担が軽減されます。
専門的な知識を持ったユーザーがサポート役となることで、迅速かつ的確な対応が可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
従来のマーケティングとの違い
ターゲット層の違い
従来のマーケティング手法は、主に潜在顧客や見込み顧客にアプローチすることを重視していました。
しかし、コミュニティマーケティングの特徴は、すでに自社の商品やサービスを利用している「既存顧客」に焦点を当てる点です。
既存顧客はすでにブランドのファンであり、その満足度を高めることで、新規顧客への影響力を持つ「アンバサダー」となる可能性があります。
関係強化と新規顧客発掘
従来のコミュニティ活動は、顧客との関係強化に重点を置き、主にアップセル(顧客の単価を上昇させる取り組み)やクロスセル(関連商品を購入してもらうためのセールス手法)を狙っていました。
一方、コミュニティマーケティングは、既存顧客との関係強化に加えて、新たな顧客の発掘にも力を入れます。
既存顧客を通じてブランドの価値を広げることで、見込み顧客や潜在顧客へのアプローチが可能になるのです。
コミュニティマーケティングの手法
コミュニティサイト運営
企業は専用のコミュニティサイトを運営し、ユーザー同士が情報を共有できるプラットフォームを提供します。
商品レビューや活用法、質問への回答などが行われることで、顧客がブランドに対する知識を深め、信頼を築く場となります。
例えば、コンテンツ投稿型や課題解決型のコミュニティが考えられます。
ライブ配信の活用
ライブ配信を活用することで、リアルタイムで顧客とコミュニケーションを取ることが可能です。
顧客は企業に対して直接質問を投げかけることができ、企業側もその場で回答することで、双方向の信頼関係を築きます。
また、ライブコマースとして販売活動と結びつけることもでき、収益拡大にも貢献します。
SNSのハッシュタグ活用
ハッシュタグを活用して顧客同士が関連投稿をシェアすることで、コミュニティ外にも広がるPR効果が期待できます。
既存顧客が自主的にハッシュタグを使って投稿することで、企業はSNS上で自然な形でのブランド露出を増やせます。
オフラインイベントの開催
顧客同士が実際に交流する場を提供するオフラインイベントも効果的です。共通の興味を持つファン同士が顔を合わせ、実体験を共有することで、ブランドに対する愛着がさらに強まります。
これにより、より深いエンゲージメントを築くことができます。
成功するためのコツ
- 継続的な顧客との関係構築
企業は、単にコミュニティを作るだけでなく、顧客との対話を継続的に行う必要があります。
顧客からのフィードバックに耳を傾け、素早く対応することで、顧客の忠誠心を高めることができます。
- インセンティブの慎重な扱い
コミュニティ内で活動するメンバーに報酬を与えることは避けるべきです。
報酬が絡むと、メンバーの自主性が損なわれ、コミュニティの本来の価値が失われる可能性があります。
コミュニティは自主的な活動を促進し、自然な交流を生むことが最も重要です。
- 定性的な効果測定の重要性
コミュニティの効果を測定する際には、数値的な指標だけでなく、質的な要素にも注目することが大切です。
コメント数や投稿数だけでなく、その内容がコミュニティにとって有益かどうかを評価することが、コミュニティ運営の成功につながります。
コミュニティマーケティングの
実際の事例
Snow Peak:オンラインとオフラインの両輪
アウトドア用品メーカー「Snow Peak」は、オンラインとオフラインの両方でコミュニティを活用し、ファンとの関係を深めています。
オフラインイベント「Snow Peak Way」では、顧客がキャンプを楽しみながら交流でき、イベント後にはその体験がオンラインコミュニティで共有され、新たなファンを呼び込む仕組みが整っています。
引用:https://www.snowpeak.co.jp/event/spw/
mineo:コミュニティサイトの活用
携帯電話サービスを提供する「mineo」は、ユーザー同士が情報を交換するコミュニティサイト「マイネ王」を運営しています。
ユーザーのアイディアが製品開発に反映されることもあり、コミュニティが企業運営に直接貢献しています。価格競争に陥りやすい業界で、顧客との強固な関係を築くことに成功した好例です。
引用:https://king.mineo.jp/
LEGO:オンラインコミュニティの成功事例
「LEGO」は、ユーザーが自分の作品を発表し合うオンラインコミュニティ「LEGO IDEAS」を運営しています。このコミュニティは、言語や年齢を問わず多くのユーザーに支持され、LEGOの世界観を広げる重要な役割を果たしています。ユーザーによる創造性がブランド価値を高める好事例です。
引用:https://ideas.lego.com/
コミュニティマーケティングは、企業と顧客の関係を深め、長期的にブランドの価値を高める手法です。
コミュニティ内で顧客が自主的に活動し、ブランドに対する愛着を強めることで、新たな顧客の獲得やリピーターの育成につながります。
企業にとって、コミュニティは単なるマーケティングツールではなく、貴重な資産となると考えます。
参考記事
https://yapp.li/magazine/4654/