競合に埋もれない!小さなビジネスを伸ばすコンセプト設計と5つのフレームワーク

地元でカフェを立ち上げたい、自社の商品をもっと広めたいなど、新しい事業のアイデアが浮かんだ場合に、「どんな打ち出し方をすれば魅力が伝わるのか?」「競合が増える中でウチの強みって何だろう?」と頭を悩ませることはないでしょうか。

小さなビジネスこそ、“何を、誰に、どうアピールするか”がとても重要で、大規模な広告予算や知名度がなくても、コンセプト(商品やサービスの核となる考え方・方向性)がしっかりしていれば、限られたリソースで大きな成果を上げられる可能性があります。

そこで今回は、コンセプトを明確にするために役立つ5つのフレームワークと、具体的な取り組み方についてまとめてみます。


コンセプト設計とは?

コンセプト設計とは、商品・サービスの「本質的な価値」や「ターゲット」をはっきり定めることを指し、小規模ビジネスにおいては競合がひしめき合う中で、自社の独自性をどう打ち出すかが生命線となります。

  • どのような課題を解決できるのか
  • 誰にとって最適なサービスなのか
  • 他社とは何が違うのか

こうしたポイントが曖昧だと、広告を出してもメッセージが刺さらずコストだけかさむ結果になりかねません。
逆に、明確なコンセプトがあると、低予算でも的確な宣伝ができ、リピーターづくりにも強いビジネスを育てられると考えます。


コンセプト設計で重視すべき3つのポイント

ユーザー目線で考える

「お客さまがどんな課題を抱えているか? その課題をどう解決できるか?」を常に意識し、小規模ビジネスは大企業と比べて資金力や知名度で劣る分、きめ細やかなサービスや地域密着性などをユーザー目線で訴求すると効果的です。


目的やターゲットを明確にする

自社が「何を達成したいのか」「どの層に向けるのか」を決めると、広告や販促が無駄なく進めやすくなります。
たとえば、「地元の30代女性にゆっくりくつろげるカフェ空間を提供したい」など、できるだけ具体化することが重要です。


特徴やメリットを明確にする

自分たちの商品・サービスが持つ“強み”と、それがお客さまにもたらす“メリット”をはっきり言語化すると、販促コピーやSNS発信にも使いやすくなります。


アイデア出しの6原則「SUCCES」とは

コンセプトの種となるアイデアを考える際に役立つのが、「SUCCES(サクセス)」という6原則です。

  • Simple(単純性)
    一言で伝わるわかりやすさ
  • Unexpected(意外性)
    「おっ、面白い」と注目を集める工夫
  • Concrete(具体性)
    イメージできる数字や事例、わかりやすい例え
  • Credible(信頼性)
    根拠や実績、専門家の意見など
  • Emotional(感情性)
    感動や共感を呼び起こすストーリー
  • Story(物語性)
    人は物語として情報を記憶しやすい

たとえば小さなパン屋さんなら、「〇〇さんが育てた地元小麦100%使用。1日〇個限定で即完売の“幻の食パン”」など、数字・ストーリー・意外性を組み合わせると記憶に残りやすくなります。


小規模ビジネス向け:コンセプト設計を効率化するフレームワーク5選

それでは、コンセプト設計を具体的に進めるときに役立つ5つのフレームワークを紹介します。

価値仮説シート

【コンセプトの方向性を決める】
ユーザーの欲求や課題、商品やサービスの強みを一言でまとめるフレームワークで、「まずはざっくりコンセプトの方向性を整理したい!」というときに最適です。

  • ユーザー像:主婦、地元の学生、在宅ワーカーなど
  • 欲求:どんな願望や理想があるか
  • 課題:どんな不満や困りごとがあるか
  • 特徴:自社が提供できる機能やサービスの強み
  • メリット:お客さまが得られる価値

例)オンライン英会話サービス

項目内容
ユーザー像英語を話せるようになりたい社会人
欲求自分のペースで英会話を上達させたい
課題教室に通うのが面倒、時間が合わない
特徴24時間、ネイティブ講師とマンツーマン
メリット好きな時間に効率よく英語を練習できる

ローカル店舗や個人事業でも、こうした項目をひとつずつ埋めるだけで「何を、誰に売るのか?」が明確になり、次のステップに進みやすくなります。


エレベーターピッチ

【差別化・優位性を端的に伝える】
「15~30秒」で事業の魅力を要約するテンプレートです。

「私たちは、(誰に) (どのような価値を) 提供します。
 これは(どのように実現するのか) で、
 (競合と比べての優位性)は〇〇です。」

例)オンライン英会話サービス

「私たちは、英語を話せるようになりたい社会人に、
 自分のペースで英会話を上達させる価値を提供します。
 これは24時間いつでもネイティブ講師とマンツーマンでレッスンが受けられるサービスで、
 教室に通う手間がないうえ、短期間で効率よく成果が出せます。」

飲食店であれば、「素材選びのこだわり」「無添加への取り組み」「地元農家との連携」といった差別化ポイントを短いフレーズでまとめられます。


コンセプトツリー

【本質的な価値を可視化する】
複数のアイデアや施策を要素分解して、「最終的にどんな体験価値を提供するのか」を整理するツールで、メニュー開発や新サービス案をまとめるとき「やりたいことはたくさんあるけれど、何から手をつける?」という場合に役立ちます。

作り方の流れ

  • 最上位に「本質的体験価値(UXコンセプト)」を定義
  • それを実現するために必要な「体験・タッチポイント」を列挙
  • さらにそれぞれの実現方法や機能を整理
  • 優先順位や関連性をツリー状に可視化

例)オンライン英会話サービス(イメージ)

  • 本質的体験価値:
    「自宅で気軽に英語を身につけられる」
  • タッチポイントの体験:
    「レベル診断テスト」「予約システム」「レッスン録画・振り返り」
  • 実現する機能:
    「AIによるレベル判定」「24時間予約受付」「講師のフィードバックレポート」
  • 満足要因:
    「自分に合ったレッスンが受けられる」「忙しいときでも学習できる」「具体的な改善点がわかる」

店舗ビジネスでも「集客→接客→購入→リピート」の流れをツリー状にまとめると、顧客体験を俯瞰できます。


FABE分析

【商品・サービスの特長・優位性・便益・証拠を整理】

  • F:Feature(特徴)
  • A:Advantage(優位性)
  • B:Benefit(顧客便益)
  • E:Evidence(証拠)

広告やセールストークを考える際に、自社の強みをわかりやすく洗い出すのに最適です。

項目具体例
Feature24時間レッスン可能/無添加・オーガニック食材/地元〇〇産の原材料
Advantage他店にない鮮度、競合と比べた手軽さ、希少な原料
Benefitおいしさと安心、安全な食生活、時間や場所を選ばず利用可能など
EvidenceSNS上の高評価・クチコミ、リピート率、具体的なデータや専門家のコメント

ここでの“E(証拠)”は、小規模ビジネスでも比較的集めやすいお客様の声や口コミ評価などが当てはまり、SNSのハッシュタグやGoogleマップの星評価なども十分な証拠になります。


NABCフレームワーク

【価値提案を4要素で整理】

  • N:Need(ニーズ)
  • A:Approach(アプローチ)
  • B:Benefit(ベネフィット)
  • C:Competition(競合)

小規模ビジネスにおいても「顧客ニーズ」「自社のアプローチ」「提供価値」「他社との差別化」を、ひとつの流れで見直せます。

オンライン英会話サービス例

項目内容
N(ニーズ)英語を話したいが通学する時間がない社会人
A(アプローチ)24時間オンラインレッスン、マンツーマン対応
B(便益)忙しくてもいつでも学べる、短期でも上達しやすい
C(競合)他のオンライン英会話スクールや通学型スクール。ただし利便性とコスト面で優位性がある

店舗ビジネスなら「地元顧客の健康志向を満たす無添加メニュー」「通勤客が立ち寄りやすい朝活プラン」などを、競合と比べてどう差別化するかをまとめられます。


フレームワーク活用時の4つの注意点

  • 目的に合ったフレームワークを選ぶ
    コンセプトの方向性を決めるなら「価値仮説シート」、即座にアピールするなら「エレベーターピッチ」、比較・分析を重視するなら「FABE」「NABC」など、目的にあったフレームワークを活用することが重要です。
  • ガイドラインとして柔軟に使う
    フレームワークどおりに埋めるのが目的ではなく、自社の強みを再確認するツールとして活用 します。
  • チームやスタッフと共有する
    1人で悩まず、スタッフや家族、信頼できる人と意見を出し合うと、より多面的なアイデアが生まれやすいと考えます。
  • 検証と微調整を繰り返す
    実際にお客さまの声を聞いてみて、効果が出なければフレームワークをもとに再度修正します。

コンセプト設計は、小規模ビジネスや地域密着型の事業ほど重要度が高いといえるため、最初に明確なコンセプトが定まっていれば、予算の少ない広告でも上手にターゲットに刺さり、口コミやリピーターを生み出しやすくなります。

  • まずは「価値仮説シート」で全体像をざっくり整理
  • 「エレベーターピッチ」を使って自社の魅力を短くまとめる
  • 必要に応じて「コンセプトツリー」「FABE分析」「NABCフレームワーク」で深堀り・検証

これらを組み合わせることで、無駄な打ち手を減らし、実効性の高いマーケティングができるようになると考えられます。


参考記事
・https://giginc.co.jp/blog/giglab/concept-design-framework