ビジネスを行ううえで、常に「課題解決」が求められています。解決する方法は、多種多様で一言では言い切れないほど、業種やサービス、商品等によって異なり、またひとそれぞれです。デザインを作成するのと同じで、100人いれば100通りの考え方があって、全く同じ答えになることはありません。
クリエイティブの業界で課題を解決するためには、どのような考え方で解決に導いていくのかをお話ししてみたいと思います。
クリエイティブが課題解決を考える範囲
前回でもお話ししたように、現代の社会では情報がありすぎて、まず求める消費者に情報を的確に、きめ細かく届けることが、難しい世の中になっています。
目について、手に取って、興味を持ってもらうための課題が山ほどあり、ひとつひとつ丁寧に考えていく必要があります。
またクリエイティブの業界にも、社会に対する課題解決もあるので、幅広く柔軟に方向性や仮説を立てながらアイデアを形にして取り組まなければなりません。
課題解決のプラスとマイナス
また課題解決として、社会に対して本当に困っているマイナスから考えることもあれば、より豊かに充実した生活をするよりプラスに解決していくことに分かれてきます。
最初にこの判断は理解できるところですが、クリエイティブな発想からすると、ここから違う視点で捉えて考えることも必要です。
その場合、すぐに売上、利益に結びつくような施策を考えるほうが前に進めやすいのですが、必ずしもそうではなく、持続することでしっかり売上や利益を生む構造を組み立てなければなりません。
スタートラインのこの時点で、依頼側と制作側に合意ができていないと、後々ハグルマがくるってしまいます。
お互いの考え方に溝が生まれていると感じたら、埋めることができるのか、もしくは違う方向性を見いだしたほうが良いのか、徹底的に詰めていく必要があります。
課題解決は過去に遡って考えることも必要
また課題を解決していくうえで、過去の失敗や終わったことも含めて、くみ取っていくことも重要な場合がでてきます。
当時の状況が今の状況になった場合どうなるのか、また視点や切り口を変えることで全く違うものに変わるのではないか、というような視点で考えていくことも大事です。
失敗したことで原因もつかみ取れているところもあるので、進め方を有利に考える視点も生まれ、道筋が生まれて復活できたときには、より効果を望むことができ、持続可能なクリエイティブに変わることができます。
こういったこともクリエイティブの課題解決につながっていくことですので、特に俯瞰してみることができる制作会社、特にディレクターと言われるようなポジションには重要になってきます。
課題解決の大小
クリエイティブの業界に限らず、課題解決は大きなものから小さなものまで多種多様だと思います。
大きなものだと、例えば道路の標識や、商業施設のアイコン等、誰にでもすぐにわかるように、より理解と認知ができるようにするにはどうしたらいいのかという日本全体に関わることになってきます。
小さなものだと、冊子等の誌面をより見やすく、わかりやすくするために構成を変えたらいいのか、文字を大きくしたらいいのか、イラストをつかって展開したほうがいいのか等になります。
気持ちを揺さぶる課題解決
あと課題を解決するには、消費者への感情、気持ちをゆさぶって印象を強める必要もあるかと思っています。
単に意味の無いゆさぶるだけのクリエイティブだと、暴力的になったり、疑問を唱える内容になったり、マイナスの方向にいってしまいがちです。
よくCMや雑誌等で行き過ぎた表現でNGになってしまうような場合です。
一昔前では通用していたことも、いまではとてもさじ加減が難しくなり、言葉ひとつひとつにまで慎重に進めていかなければならない事もたくさんでてきます。
慎重に進めながらも、より効果的で気持ちを揺さぶるギリギリのラインを見いだすことが、クリエイティブな発送に求められている時代だと思いますので、それぞれの制作会社の発想をいかにくみ取って形にできるかがポイントになってくると思います。
アイデアの広げ方
もうインパクトを訴求するだけの時代では無くなりつつあり、何度もお伝えしてしまっている、できる限り持続可能な方向性を常に考えておくことが必要だと感じています。
この持続するクリエイティブをどのように考えておくかという点では、アイデアや考え方の広さが重要だと思っていて、広さが無いともちろん選択肢や候補が少ないので発想の範囲が限れててしまいます。
そのためにもアイデアや考え方を広げる必要があるのですが、広げるためには、できる限り吸収できるものを吸い取りまくることが解決してくれると考えていて、例えば企画提案や、デザイン制作をいざ進めるにしても、いちから作成するには時間もかかるし、工数が増えて手間もかかります。
イメージバナーの広げ方
そのために、サンプルや参考例ができるだけ多いほうがいいと思っていて、私の場合はある程度揃ってもあきらめず、永遠と探して集め続けます。
おそらく、誰よりもこの点は実行していて、自分が納得する限界まで探し尽くして納得がいってから、企画を組み立てますし、デザインも取りかかります。
そうしないと、不安で仕方ないのと、他社と差別化や一歩超えたクリエイティブができないと思うからです。
無駄になってしまっている作業もあるかもしれませんが、情報を蓄えることで、自分だけではなく、お客さまへもチームへも説明できる幅が広がって納得していただけるので、このようなプロセスはじっくり時間をとって進めています。
課題を解決するうえでの差別化
課題の解決方法として、できるだけオリジナルで他社と差別化を図っていくことが必要ですが、コツとしてはできるだけ異質というか、異なる内容、サービス、発想をつなぎ合わせることもクリエイティブの業界で発想を見いだすための方法だと思っています。
生活の中で単純に考えると、食事とお風呂は別々です。
この発想を例えばリゾートホテルのプールに置き換えると、プールの中で食事、またはドリンクを飲んで楽しんでいたりします。
ほかでは、仕事と寝ることは全く別物ですが、寝ながら仕事ができるデスクが販売されていたりします。
このような全く別々のものを組み合わせてひとつの形にする発想も課題解決につながりますので、クリエイティブの業界は特に、頭をできるだけ柔らかくする発想がともなわないと仕事につながらないと思いますし、依頼者側もそこを一番望んでいます。
議論できる環境の大切さ
お伝えしているように情報を多く蓄えることはとても重要ですが、そこだけに集中して特化していても発想は中途半端な固いものになりがちです。
そのうえで、消費者へ届けたい情報を、しっかり受け止めてもらう気持ちになるために、ハッとして新しい気づきが生まれたり、気持ちがちょっと高ぶったり、感情が揺れ動いたり、データ化できないことへのアプローチが必要になります。
当事者の立場にたって、役者のように気持ちがどこまでもっていけるか、情報過多の時代にどこまで表現できるのかを考えていくとが大事です。
こういったことに興味を持ってもらう企業や店舗がたくさん増えて、しっかり議論できる環境が、クリエイティブ業界の課題解決のひとつになるのだと思います。
一緒に歩んでいける制作会社
クリエイティブ業界の発想は目立つことが多い分、矢面に立たされることも多く、その都度クライアントとどうするか話をしないといけなくなる場合があります。
特に制作側の発信でクリエイティブ業務を組み立てた場合、すぐに中止しないといけなくなるケースや、考え直して別のアプローチで進めることもでてきます。
特に政治的なメッセージや差別的な意図がくみ取れてしまうものについては特に注意が必要になります。
ケースバイケースですが、それでも軸をぶらさずに推し進めることも必要な場合があり、そこは総合的な判断で、一番着地点としてどこがベストかを俯瞰して捉えられる目を養い、一緒に考えていくことができる制作会社のパートナーと組めることが理想なのだと思います。