福祉とデザイン:ステークホルダーへのアプローチ

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株式会社ヘラルボニー


持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、多様性と包括性を重視する企業が増加しています。
この動きは、福祉事業の在り方にも変化をもたらしていると感じます。
福祉事業に携わる企業や団体にとってデザインは、そのサービスや使命を、さまざまなステークホルダーに向けて、理解しやすい情報として提供するものである必要があります。
視覚的な要素は、利用者の理解を助けるだけでなく、感情的なつながりを生み出し、サービスへの興味や信頼を高めます。


今回は、デザインがどのように社会的課題に対応し、利用者のニーズに応えることができるのかを考えてみたいと思います。


​​多様なステークホルダーへのアプローチ

福祉事業に関わる様々なステークホルダーに適したデザインアプローチを取ることは、情報の正確な伝達と強いエンゲージメントの構築に不可欠です。

事業主向け

事業主にとってのデザインは、企業のビジョンと使命を明確に伝える手段ですから、視覚的にも一貫性がありつつ、企業の個性を際立たせることが求められます。

採用担当者向け

採用活動では、デザインが企業文化を形象化し、応募者に対して魅力的な職場であることを示すことができます。
明るく開放的なデザインは、応募者に安心感を与え、企業に対する好印象を強化するでしょう。

地域の関係者向け

地域との連携を深めるデザインは、情報へのアクセシビリティと共感を促し、
地域イベントのプロモーションなどで使われる、親しみやすく、読み取りやすいデザインは、地域住民の参加を促します。


感情を動かすデザイン

デザインは情報を伝えるだけでなく、人々の感情に直接訴えかける力を持っています。

エモーショナルデザインの重要性

使う色や形、写真の選び方一つで、見る人の心に安心感や希望をもたらすことも可能です。
例えば、暖かい色合いと柔らかな形状は、安全で包み込むような雰囲気を作り出し、利用者にポジティブな影響を与えます。

デザインによるストーリーテリング

福祉事業において、デザインは単なる情報伝達以上の役割を果たします。
利用者の成功体験や困難を乗り越えた物語を形にすることで、他の人々にも希望や動機付けを提供し、これらの物語が、より多くの人々の参加を促すきっかけになることもあります。

参加を促すデザイン

デジタルメディアの進化により、インタラクティブデザインがますます重要になっています。
ウェブサイトやアプリ内にインタラクティブな要素を取り入れることで、利用者が情報をより動的に体験し、サービスへの理解と関与を深めることが可能ですから、特に教育的なコンテンツやオンラインのワークショップで有効です。


デザインを活用した福祉事業の例

・福祉サービス事業所:YELLOW(イエロー)公式サイト
就労移行支援、就労継続支援などの事業を行う福祉サービス事業所YELLOW(イエロー)は、地域に根ざした就労支援だけではなく、障がい者アートの分野でも注目されており、
公式サイトは、さまざまなステークホルダーへ事業内容や提供できるサービス内容を最小限のコンテンツでわかりやすく伝え、さまざまな情報発信をする広報ツールとしても活用することを目的としています。


この公式サイトは、Webデザインの祭典「STUDIO DESIGN AWARD 2023」のグランプリを受賞しました。
サイトのデザインはターゲットに合わせた導線や情報設計の緻密さや、障がいを持つ当事者の創造性によって生み出されたことで高く評価されています。

https://yellows.buzz/より引用

参考記事:https://designaward2023.studio.design/award


・株式会社ニューモア:「想造楽工(そうぞうがっこう)」
株式会社ニューモアが運営する「想造楽工(そうぞうがっこう)」は、障がい福祉とデザインを融合させたプロジェクトです。
障がいを持つ人々の創造性を支援し、彼らが生み出すアートやデザイン作品を通じて新たな価値を創出し、正当な報酬を保証して、彼らの作品が広く社会に受け入れられることを目指しており、
社会の多様性を受け入れ、障がいを持つ人々の能力と可能性を広く社会に示し、参加者の自己表現の場を提供するとともに、公共の認識と理解を深めることに貢献しています。

https://sozogakko.com/より引用

参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000065066.html


福祉事業におけるデザインの導入の注意点

福祉事業に関わるデザインアプローチの際の注意点を紹介しましょう。

  • 包括性を重視する
    デザインはすべてのステークホルダーを考慮に入れて行う必要があります。これには、障がいの有無、年齢、性別、文化的背景など、ユーザーの多様性を反映させることが含まれるので、誰もがアクセスしやすいデザインにすることが大切です。
  • ユーザー中心のアプローチを採用する
    デザインを進めるにあたっては、ユーザーとの対話を大切にして、ニーズを正確に把握しなければなりません。ユーザーからのフィードバックをデザインの各段階に取り入れることで、受け入れられる解決策を見つけることができます。
  • アクセシビリティを最優先にする
    すべての人が情報に簡単にアクセスできるようにするためには、デザインの初期段階からアクセシビリティを考慮することが重要です。色の選択、文字サイズ、音声サポートなど、多様なアクセス方法を考慮しましょう。
  • 環境に配慮したデザインを心がける
    素材の選択や製造プロセスにおいて環境への影響を考慮し、持続可能な選択を行うことが大切です。

これらのポイントに留意することで、福祉事業におけるデザインが、すべてのステークホルダーにとってアクセスしやすいものになります


デザインの経済的価値と文化的価値

福祉事業におけるデザインの取り組みは、単に見た目を良くする以上の重要な役割を果たしており、
デザインが、経済的な価値(メリット)と文化的な価値(影響)の両面を推進する力を持っていることが分かります。

経済的価値

良いデザインは、福祉事業サービスの利用を促進し、それによって新たな市場の開拓も実現できます。
障がいを持つ人々だけでなく、高齢者や一時的な障がいを持つ人々にも利益をもたらして、より広い顧客層にアプローチすることが可能になり、
この包括的アプローチは、企業のブランド価値を高め、長期的な顧客ロイヤルティの構築に寄与することになります。

文化的価値

デザインは、社会の包摂性を高める手段としても機能します。
障がいを理解し、受け入れる文化を育てることは、コミュニティ全体の連帯感を強化し、多様性を価値あるものとして認識する助けになります。
デザインがもたらす文化的影響は、社会全体の意識を変え、より公平なアクセスの実現に貢献できるのです。


今回は、デザインがどのように社会的課題に対応し、利用者のニーズに応えることができるのかを掘り下げてみました。
良いデザインは、私たちが直面する多くの社会的、文化的問題に対して、実践的で新しい視点での解決策を提供する可能性があると考えます。