日本のデジタル庁Webサイトに学ぶ、効果的なデザインとアクセシビリティのポイント

遅ればせながら、日本のデジタル庁のWebサイトを拝見しました。
エンジニアの知識共有サービス「Qiita」に投稿されたブログが大きな反響を呼び、Twitter(現:X)のトレンドに入るほどの話題となっていたそうです。



今回は、デジタル庁Webサイトの優れた点や、参考にできるポイントを探ります。


デジタル庁Webサイトの基本コンセプト

デジタル庁のWebサイトは、一見するとごくシンプルなデザインに見えます。
しかし、その背後には綿密に計算された設計思想が存在します。

(本当にシンプル・・・!)


シンプルさの追求

白い背景に黒い文字を基調とし、必要最小限の情報を明確に伝えることを重視しています。

ユーザー中心設計

情報へのアクセスのしやすさを最優先に考えられています。

アクセシビリティへの配慮

色弱者を含む、あらゆるユーザーが快適に利用できるよう設計されています。


このアプローチは、情報過多になりがちな企業サイトにとって、大いに参考になる点と言えると思います。


デザインの特徴と実践的なポイント

色彩選択の工夫

デジタル庁サイトでは、単純な黒(#000)ではなく、わずかに明度を上げた黒を使用しています。
これにより、色弱の方にも読みやすい表示を実現しています。

実践ポイント

  • 純黒ではなく、わずかに明度を上げた黒(例:#333)を使用する
  • コントラスト比を確認し、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)の基準を満たすようにする

※WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、ウェブコンテンツのアクセシビリティ(誰でも使いやすいウェブサイトの実現)を確保するためのガイドラインです。これらのガイドラインは、特に障害を持つ人々がウェブサイトにアクセスしやすくするために設けられています。

WCAGは、国際的な標準であり、主に4つの原則に基づいています。

  1. 知覚可能(Perceivable)
    • コンテンツがユーザーに知覚可能でなければなりません。たとえば、テキストの代替として画像に説明文(altテキスト)を追加することや、音声の代わりにキャプションを提供することが含まれます。
  2. 操作可能(Operable)
    • ユーザーがコンテンツやインターフェースを操作できるようにする必要があります。たとえば、すべての機能をキーボードのみで操作できるようにすることや、ページが自動でスクロールしないようにすることが含まれます。
  3. 理解可能(Understandable)
    • コンテンツやユーザーインターフェースが理解可能であるべきです。たとえば、明確で一貫したナビゲーションを提供したり、わかりやすい言語を使用したりすることが必要です。
  4. 堅牢(Robust)
    • コンテンツが現在および将来の技術に対して堅牢であるべきです。つまり、さまざまなユーザーエージェント(ブラウザや支援技術など)でコンテンツが適切に表示されるように設計する必要があります。

グリッドデザインの採用

12カラムのグリッドデザインを採用し、適度な余白を確保することで、ユーザーの視覚的負担を軽減しています。

実践ポイント

  • レスポンシブデザインを前提とした12カラムグリッドを採用する
  • コンテンツ間に十分な余白を設け、読みやすさを向上させる

タイポグラフィの最適化

フォントの選択や文字サイズの設定にも細心の注意が払われています。

実践ポイント

  • 読みやすいサンセリフフォントを基本とする
  • 適切な行間と文字間を設定し、長文の読みやすさを確保する

レスポンシブデザインの徹底

デジタル庁サイトは、あらゆるデバイスで最適な表示を実現しています。

実践ポイント

  • モバイルファーストの設計思想を採用する
  • ブレークポイントを適切に設定し、各デバイスで最適な表示を確保する

技術面での先進的アプローチ

デジタル庁サイトは、最新のWeb技術を積極的に採用しています。

Next.jsの活用

JavaScriptフレームワーク「Next.js」を使用し、高速なページ表示を実現しています。

※Next.jsは、ReactというJavaScriptライブラリをベースにしたフレームワークで、ウェブアプリケーションやウェブサイトを効率的に構築するために使われます。

(Next.jsの主な特徴)

  1. サーバーサイドレンダリング(SSR)
    • 通常、Reactはクライアントサイド(ブラウザ)でページをレンダリングしますが、Next.jsはサーバー側でページを事前に生成し、それをユーザーに送信することができます。これにより、ページの読み込みが速く、SEOにも優れたウェブサイトが作れます。
  2. 静的サイト生成(SSG)
    • 一部のページを事前に生成しておくことで、非常に高速なページを提供することができます。これは、ブログや製品の一覧ページなど、頻繁に変わらないコンテンツに最適です。
  3. ルーティングが簡単
    • 通常のReactアプリケーションでは、ページ間の移動(ルーティング)を設定するのが少し手間ですが、Next.jsでは、ページファイルを特定のフォルダに配置するだけで、自動的にルーティングが設定されます。
  4. APIルート
    • Next.jsでは、サーバーサイドのAPIを簡単に構築できるため、フロントエンドとバックエンドを統合したアプリケーションの開発が容易です。
  5. 画像の最適化
    • Next.jsには、画像を自動的に最適化する機能があり、ページの表示速度を向上させるのに役立ちます。

パフォーマンスを重視し、ページ読み込み速度の最適化を図るのは、自社サイトでも重要な視点だと考えます。


アクセシビリティ検証の徹底

デジタル庁は、アクセシビリティ検証結果を公開しています。
この透明性は、ユーザーからの信頼獲得に寄与しています。

実践ポイント

  • 定期的なアクセシビリティ検証を実施する
  • 検証結果を公開し、継続的な改善を行う姿勢を示す

デザインシステムの構築と公開

デジタル庁は、デザインの方針や色使いなどの要件を定めたデザインシステムを公開しています。
これにより、一貫性のあるデザインの維持と、他機関への知見共有を実現しています。

実践ポイント

  • 自社のブランドガイドラインを整備し、デザインの一貫性を確保する
  • 可能な範囲でデザインシステムを公開し、透明性を高める

ユーザーとの対話を促進するデザイン

デジタル庁サイトは、単なる情報提供の場を超え、国民との対話を促進するツールとして機能しています。

実践ポイント

  • フィードバックフォームや問い合わせ機能を分かりやすく配置する
  • SNSとの連携を強化し、双方向のコミュニケーションを促進する

まとめ

デジタル庁のWebサイトは、シンプルさと機能性を両立させた優れた例と言えます。ここで紹介した設計思想やデザイン手法は、規模を問わず多くの企業サイトに応用可能です。

  • シンプルで明確なデザイン
  • アクセシビリティへの徹底した配慮
  • 最新技術の積極的な採用
  • デザインシステムの構築と公開
  • ユーザーとの対話を促進する仕組み

これらのポイントを参考に、自社のWebサイトを見直してみてみるのもいいかもしれません。
効果的なWebデザインは、ユーザーエクスペリエンスの向上だけでなく、ブランド価値の向上にも直結すると考えます。


参考記事

  1. デジタル庁オープンソースデザインシステム
  2. ITmedia記事:デジタル庁サイトデザインの秘密
  3. Qiita:デジタル庁Webサイトの分析