商品開発が頭打ちになってきた、お客様へのアピール方法がマンネリ化している、こんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで鍵となるのが、顧客の潜在ニーズを捉えること。
顧客も気づいていない欲求を掘り起こすことで、自社商品の強みを活かした新たなアイデアや魅力が生まれます。
今回は、潜在ニーズと顕在ニーズの違いから、具体的なヒアリング方法についてまとめてみたいと思います。

潜在ニーズ・顕在ニーズとは?
顕在ニーズとは
顕在ニーズとは、顧客が自覚している「今、必要としているもの」や「欲しいもの」を指します。
たとえば、朝の眠気を解消したいからコーヒーを買う、疲労回復のためにサプリを飲むなど、理由と手段がはっきりしている状態で、 氷山に例えられるときは「水面上」に当たる部分で、見えやすく企業側も把握しやすい特徴があります。
潜在ニーズとは
一方の潜在ニーズは、顧客自身も自覚していない欲求や問題意識のことで、氷山の「水面下」にあたり、表には見えないからこそ掘り起こすことで新たなビジネスチャンスを得ることができます。
たとえば、コーヒーを買う理由としては「眠気を覚ましたい」が表面上の顕在ニーズですが、実際は「手頃な価格で、ちょっとした癒しを感じたい」「飲み慣れた味で仕事に集中したい」といった潜在的な心理が隠れていると言われています。
顕在ニーズとウォンツの違い
マーケティングでよく出てくる言葉として「ウォンツ(Wants)」があります。一般的に、
- ニーズ:根本的な必要性・欲求(「眠気を解消したい」など)
- ウォンツ:ニーズを満たす具体的な手段(「コーヒーが飲みたい」など)
と区別されます。
顧客が「◯◯が欲しい」と言ったとき、実はニーズではなくウォンツを語っていることが多い点に注意が必要です。
なぜ潜在ニーズを引き出す必要があるのか
中小企業が注目すべき理由
競合との差別化
同業他社の商品・サービスが増えると、価格や機能だけで差別化するのは難しいため、潜在ニーズを見つけ出し、顧客がまだ気づいていない価値を提供できれば、大手や他社との差別化ができます。
リピーター獲得
潜在ニーズを満たすと、「これ、意外と便利だった」「こんなことまで考えてくれるなんて」といった感動を与えられ、結果、リピート利用や口コミにつながりやすいと言われています。
新商品のアイデア創出
これまで気づかなかった顧客課題を発見できるため、新商品やサービスのコンセプト作りにも役立ち、限られたマーケティング予算でも、深い顧客理解によって効果的な打ち手を生み出せます。
潜在ニーズを引き出す具体的な方法
インタビュー(グループインタビュー/デプスインタビュー)
最も基本的な手法は、顧客に直接インタビューすることだと言われています。
- グループインタビュー
同じ属性や目的を持つ数名の顧客に集まってもらい、ディスカッション形式でヒアリングを行います。
参加者同士が会話する中で新たな本音やアイデアが出てきやすい反面、周囲の影響で発言が変化する可能性がある点に注意が必要です。 - デプスインタビュー
担当者と顧客が1対1でじっくり話す形式で、グループインタビューより深掘りしやすいのが特徴です。
小規模ビジネスの場合でも、顧客や既存取引先との雑談の延長でヒアリングを行うなど、規模は小さくても十分に意義があると考えます。

エスノグラフィー(行動観察調査)
エスノグラフィー(行動観察調査)とは、顧客の日常生活や商品使用シーンを観察して潜在ニーズを探る手法で、「店舗における商品の陳列をどのように見ているか」「仕事中にどんなタイミングで休憩を取っているか」などを実際に観察し、顧客が言葉にしないニーズを見つけられます。
小規模ビジネスでは「顧客の店舗利用時にさりげなく行動を見守る」「イベントやセミナーの参加者の反応を細かく観察する」といった形で、簡易的なエスノグラフィーを実践できます。
ラダリングによる深掘り
ラダリングは、「なぜそう思うのか?」を繰り返し尋ねることで、顧客の深層心理を探る技法です。
- 「コーヒーを飲みたい」と思ったきっかけは? →「眠気を覚ましたいから」
- 「眠気を覚ます方法はコーヒー以外もあるのでは?」 →「安くて、すぐに買えるものが良い」
- 「なぜ安くてすぐにがいいのか?」 →「仕事を早く再開したいし、出費を抑えたい」
と、段階的に顧客の本音を引き出していきます。
小規模・低コストで取り組むヒント
- アンケートフォームを活用
GoogleフォームやSNSの投票機能など、無料ツールを使ってまずは顧客の声を集める。 - 顧客への電話や訪問時に一言ヒアリング
既存顧客とのやり取りの最後に、「何か不便を感じている点はありませんか?」と質問を加えて潜在ニーズを探る。 - SNS上の投稿を分析
ハッシュタグ検索などで、自社商品や類似商品について顧客はどんな感想を書いているかをチェック。「こんなのがあればいいのに」「これがちょっと不便」などの声を見逃さない。
こうした小さな取り組みでも、積み重ねることで大きな情報量が得られると考えます。
潜在ニーズを引き出す質問例
インタビューや日常会話の中で使える具体的な質問をいくつかご紹介します。
キーワードは「なぜ?」をオープンクエスチョンで繰り返すことです。
- 顕在ニーズを確認
「今どんなことでお困りですか?」
「どんな商品・サービスがあれば良いと思いますか?」 - ウォンツの背景を探る
「なぜ、その手段を選ばれたのですか?」
「他の手段と比べて何が良いと思ったのですか?」 - 深掘り(ラダリング)
「そのメリットは具体的にどんな点ですか?」
「どうしてそのメリットが重要なのですか?」 - 理想の状態を想像してもらう
「もし理想的なサービスがあるとしたら、どんな状態だと思いますか?」
「それが実現すると、仕事・生活はどう変わりそうですか?」
小さく始める実践事例
事例1:地元のカフェが導入した「テイクアウト専用注文システム」
課題:駅前にある小さなカフェが、忙しい通勤客にもっと活用してもらうには?
アクション:常連客に「朝、コーヒーを買いづらいときはありますか?」「どんなときに便利だと感じますか?」とヒアリング。すると、「並んで注文すると遅刻しそうで買えない」という声が多かった。
結果:「スマホからの事前注文と決済」で、朝のピークでも待ち時間を短縮可能に。結果、テイクアウト需要が急増し、客単価も上がった。

事例2:地域特産品のネット通販を強化した食品メーカー
課題:観光客が激減し、店舗売上が落ち込んでいた。
アクション:SNSで顧客にアンケートを実施したところ、「家にいてもご当地グルメを楽しみたい」「外出を控える中で、ちょっとした贅沢をしたい」という潜在ニーズを発見。
結果:「ご当地お取り寄せセット」を新発売。SNSでの写真映えも意識し、オンライン限定特典をつけることで売上回復に成功した。

小規模ビジネスの強みは、大企業にはない機動力や地域密着の深い関係性だと考え、顧客とコミュニケーションを取りやすいからこそ、直接話を聞いたり行動を観察したりするハードルが低いのは大きなアドバンテージと言えます。
潜在ニーズと顕在ニーズの違いを理解し、低コストでできる小規模リサーチ(インタビュー・SNS・アンケートなど)を実践し、「なぜ?」を繰り返すラダリングで深層心理を探り、得られた情報をもとに新しい商品開発やサービス改善につなげる──こうしたプロセスを回すことで、顧客自身も驚くような「本当の課題」や「意外なニーズ」が見つかります。
大がかりな調査が難しくても、小さく始めて着実にニーズを拾い上げることが、中小企業にとっての大きなチャンスとなると考えています。
参考記事
https://corp.neo-m.jp/column/marketing-research_071/