私がコミュニケーションツールとして利用している「Chatwork」というアプリがあるのですが、この度アップデートが行われ、使える絵文字が大幅に増えるそうです。
引用:https://go.chatwork.com/ja/lp/update2024/
現代のデジタルコミュニケーションにおいて、絵文字は欠かせない存在となっていると感じます。
SNSやメッセージアプリでの日常的なやりとりから、ブランドマーケティングまで、絵文字は幅広く活用されています。
今回は、絵文字の歴史を振り返りつつ、広告宣伝における効果的な活用方法について解説します。
絵文字の歴史
誕生と初期の発展
絵文字のデザインの歴史は、1990年代末の日本に遡ります。
1999年、NTTドコモの携帯電話向けインターネット接続サービス「iモード」の一環として、絵文字が誕生しました。
当時の携帯電話は画面サイズが小さく、通信量も限られていたため、視覚的なコミュニケーションを可能にする手段として絵文字が開発されました。
初期の絵文字は、栗田穣崇氏の監修のもと、12×12ドットのグリッドに描かれたシンプルなデザインが特徴でした。
この簡素さが、限られた画面スペースでも明確に意味を伝えられる要因となりました。
引用:https://www.govonline.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201808/201808_12_jp.html
国内普及から世界へ
絵文字は日本国内で瞬く間に人気を博し、2000年代初頭には日本全体に広まりました。しかし、この時点では日本独自の文化現象にとどまっていました。
転機が訪れたのは2009年です。この年、絵文字がUnicodeに組み込まれ、国際的に標準化されました。
これにより、異なる携帯電話やコンピューターシステム間で絵文字を使用することが可能になりました。
2012年には、主要なスマートフォンで絵文字が使用可能になり、世界中に急速に普及しました。絵文字は単なる文字コードの一部から、グローバルなコミュニケーションツールへと進化を遂げたのです。
文化的価値の認識
絵文字の文化的価値が再確認されたのは2016年のことです。この年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に初期の絵文字が収蔵されました。
これは、絵文字がデジタル時代の重要な文化遺産として認識されたことを意味します。
引用:https://www.sankei.com/article/20170217-ZGQESP3RUFLAFAOSZ7EGT5E55M/photo/CMBP2RKYYZI3PLUOKJBR57D2SM/
絵文字デザインの基本要素
絵文字のデザインには、いくつかの重要な要素があります。
これらの要素を理解することで、広告での効果的な活用につながるそうです。
一貫性と互換性
異なるプラットフォーム間で一貫性を保つことが重要です。
例えば、顔の表情を表す絵文字では、目、眉毛、口などの形状が交換可能である必要があります。
視覚的識別性
絵文字は一目で識別できる必要があります。
同時に、多義性を持たせることで、様々な文化やコミュニティでの使用を可能にしています。
シンプルさと表現力
限られたスペースで感情や情報を効果的に伝えるため、シンプルなデザインでありながら豊かな表現力を持つことが求められます。
文化的多様性
異なる人種、性別、文化を反映する必要があります。
最近では、LGBTQコミュニティへの配慮も含まれ、多様な表現が求められています。
文化による絵文字デザインの違い
絵文字のデザインは文化やコミュニティによって異なることがあります。
文化的背景と解釈の違い
同じ絵文字でも、文化圏によって異なる意味を持つことがあります。
例えば、親指を立てる👍絵文字は、多くの西洋文化では肯定的な意味を持ちますが、中東の一部の国では侮辱的な意味を持つことがあります。
デザインの自由度と多様性
各ベンダーが独自にデザインできるため、同じ絵文字でもプラットフォームごとに異なる見た目になることがあります。
多様性への配慮
異なる人種、性別、文化を反映するため、絵文字のデザインは多様化しています。
例えば、肌の色が選択可能な絵文字が導入されたのもこの配慮の一環です。
意匠権の問題
絵文字のデザインには意匠権の問題が絡むことがあり、簡単に統一できない状況があります。
具体例
餃子の絵文字
世界中に存在する多様な餃子の形を考慮してデザインされました。
具体的になりすぎないように配慮され、Unicodeによって正式に採用されています。
引用:https://www.fashionsnap.com/article/2021-06-29/emoji/
サウナの絵文字
フィンランド政府が申請した「サウナ」の絵文字は、その国特有の文化を反映しています。
これは、特定の地域や文化に根ざした絵文字が国際的に認識されるようになった例です。
引用:https://gigazine.net/news/20151106-finland-emoji/
異なるプラットフォームでのデザインの違い
例えば、「笑顔」を表す絵文字は、AppleとGoogleで異なるデザインを採用しています。
これにより、同じ絵文字でも受け取る側の解釈が異なる可能性があります。
引用:https://www.emojiall.com/ja/blog/419
絵文字デザインの進化
絵文字のデザインは、時代とともに進化を続けています。主な変化のポイントは下記のように言われています。
デザインの一貫性と可読性の向上
異なるプラットフォーム間での一貫性を保ちつつ、小さなサイズでも可読性を維持するデザインへと進化しています。
社会的要因の影響
新型コロナウイルスのパンデミックにより、マスクを着けた顔や注射器の絵文字が多目的に利用されるようになりました。
このように、社会情勢に応じて絵文字の意味やデザインが更新されています。
多様性と包括性の向上
異なる人種、性別、文化を反映する絵文字が増加しています。
例えば、職業を表す絵文字で男女両方のバージョンが用意されるようになりました。
技術的進化とベンダー間の違いの縮小
技術の進化により、異なるプラットフォーム間でのデザインの違いが徐々に改善されています。
広告での絵文字活用のポイント
絵文字を広告に活用する際は、以下のポイントに注意することで、より効果的な広告展開が可能になります。
ターゲット層の共感を得る
ターゲット層がどのような絵文字を好むかを理解し、それに基づいて選択することが重要です。
若年層向けの広告であれば、最新のトレンドに沿った絵文字を使用するなど、ターゲットに合わせた選択が効果的です。
ブランドのコアバリューを表現する
絵文字を使ってブランドのコアバリューやメッセージを明確に伝えることができます。
例えば、環境に配慮したブランドであれば、🌿や🌎などの絵文字を効果的に使用することで、ブランドイメージを強化できます。
メッセージの明確化
絵文字が持つ意味を理解し、それがメッセージの伝達を助けるかどうかを考慮します。
例えば、「セール中!🔥」という使い方は、「熱い」セールを視覚的に表現し、メッセージを強調します。
過度な使用を避ける
絵文字の濫用は逆効果になることがあります。
1つの文章に2〜3個程度の絵文字を使用するのが一般的なガイドラインです。
適度に使用することで、メッセージを強調しつつ、プロフェッショナルな印象を保つことができます。
文化的背景を考慮する
国際的な広告展開を行う場合は特に、絵文字の文化的な解釈の違いに注意が必要です。
前述の👍絵文字の例のように、一つの絵文字が異なる文化圏で全く異なる意味を持つ可能性があります。
A/Bテストの実施
絵文字を使用した広告と使用していない広告のA/Bテストを行うことで、自社のターゲット層に対する絵文字の効果を測定できます。
これにより、より効果的な絵文字の使用方法を見出すことができます。
SEO対策としての活用
適切に使用された絵文字は、ウェブサイトやSNS投稿のクリック率(CTR)を向上させる可能性があります。
ただし、過度な使用はスパムと見なされる可能性があるため、注意が必要です。
広告での絵文字活用の実例
絵文字を効果的に活用した広告キャンペーンの具体例について紹介します。
リポビタンDの Twitter キャンペーン
リポビタンDは、Twitterを活用した斬新なキャンペーンを展開しました。
引用:https://x.com/Lipod_taisho/status/969029463383072768
絵文字の創造的使用: 「ファイト」を表現する💪絵文字と「一発」を表す1️⃣絵文字を組み合わせて、「ファイト一発」というリポビタンDの有名なキャッチフレーズを表現しました。
ハッシュタグの活用: #リポビタンD というハッシュタグと共に、これらの絵文字を使用することで、ブランドの認知度向上を図りました。
ユーザー参加型: キャンペーンでは、ユーザーがこれらの絵文字とハッシュタグを使ってツイートすることを促し、抽選で賞品が当たるという仕組みを導入しました。
ブランドメッセージの強化: 「ファイト一発」というキャッチフレーズを絵文字で表現することで、ブランドの核心的なメッセージを視覚的に印象づけることに成功しました。
このキャンペーンの成功は、絵文字がブランドメッセージを簡潔かつ効果的に伝達する力を持つことを示しています。
また、ユーザー参加型のキャンペーンと組み合わせることで、ブランドとユーザーとの間に強い結びつきを作り出すことができたと言われています。
IKEAのオリジナル絵文字アプリ
IKEAは、ブランドの世界観を絵文字を通じて表現しました。
オリジナル絵文字の開発: IKEAは「IKEA Emoticons」という名前のオリジナル絵文字キーボードアプリをリリースしました。このアプリはiOSとAndroid向けに無料で提供されています。
家庭内コミュニケーションの改善: このアプリの主な目的は、家庭内のコミュニケーションを円滑にすることです。100個以上のアイコンを通じて、家具や家事に関連する要求、不満、疑問を簡単に伝えることができるように設計されています。
ブランドの世界観の拡張: IKEAの製品や、IKEAが提案するライフスタイルに関連した絵文字を提供することで、日常生活の中にブランドの存在感を自然な形で組み込んでいます。
問題解決型アプローチ: 特に夫婦間のコミュニケーション改善を目指しており、家庭内での誤解や行き違いを減らすことを目的としています。
ブランド認知度の向上: ユーザーが日常的にIKEAの絵文字を使用することで、継続的にブランドに触れる機会を創出しています。
このアプローチは、単なる広告キャンペーンを超えて、ブランドを日常生活に溶け込ませるという革新的な戦略を示しています。
IKEAは、実用的なツールを提供することで、ユーザーとの長期的な関係構築に成功しています。
絵文字は、その誕生から現在に至るまで、デジタルコミュニケーションの重要な要素として進化を続けています。
広告宣伝においても、絵文字の効果的な活用は、メッセージの明確化やブランドイメージの強化に貢献すると考えます。
ただし、絵文字の使用には文化的な配慮や適切な頻度の管理が必要です。
ターゲット層を理解し、ブランドの価値観に合致した絵文字を選択することで、より効果的な広告展開が可能になると感じます。
参考記事
・https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201808/201808_12_jp.html
・https://www.fashionsnap.com/article/2021-06-29/emoji/
・https://hotozero.com/knowledge/chuo_u_emoji/
・https://repro.io/contents/7-ways-use-emojis-social-media-marketing/
・https://www.huffingtonpost.jp/engadget-japan/ikea_b_6666580.html
・https://www.emojiall.com/ja/blog/419