最新技術で進化する自動販売機:マーケティングの新たな可能性

シンガポールのIoT企業IJOOZ社が製造する生搾りオレンジジュース自販機は、自動販売機内でオレンジを丸ごと4個使った無添加・無糖のジュース自動販売機です。

350円という手頃な価格で手軽に美味しいオレンジジュースが味わえるとSNSやメディアで話題になりました。
日本では2023年4月から展開し、現在全国で約500台が稼働中ですが、6月から北九州エリアでも稼働するそうです。

世界34ヵ国に展開するこの自動販売機は、AIOT技術によりオレンジ廃棄量を10%削減し、環境にも配慮しており、手軽で健康的な選択肢として消費者から高く評価されています。

https://www.ijooz.com/より引用


最近は食品やグッズの自動販売機もよく見かけるようになりました。
自動販売機はIT技術と共に進化しており、マーケティングにも利用されているようです。
今回は、自動販売機の進化と活用方法について学んでみたいと思います。


日本における自動販売機の歴史と目的

日本における自動販売機は、1960年代の東京オリンピックを契機に急速に増加したそうです。
時代ごとの目的や背景をまとめてみました。


1960年代~1970年代:飲料販売の普及

主な目的:清涼飲料水の販売

背景:高度経済成長による生活水準の向上、レジャーの多様化

代表的な商品:炭酸飲料、缶コーヒー、缶ビール


1980年代:多様化するニーズへの対応

主な目的:飲料に加え、軽食やタバコの販売

背景:女性の社会進出、ライフスタイルの変化

代表的な商品:ホットスナック、アイスクリーム、紙パック飲料、缶チューハイ、タバコ


1990年代~2000年代:利便性と個性の追求

主な目的:便利で個性的な商品・サービスの提供

背景:情報通信技術の発展、多様化する消費者ニーズ

代表的な商品:ペットボトル飲料、温かい飲み物、健康志向飲料、ご当地商品、キャラクター商品


2010年代~現在:新たな可能性の探求

主な目的:新たな価値の創造

背景:高齢化社会、食の安全・安心意識の高まり、地域活性化

代表的な商品:冷凍食品、医薬品、化粧品、生鮮食品、地域特産品


デザインや機能の進化

1970年代に冷蔵・温蔵機能が導入され、1980年代には紙幣対応が追加されました。
近年では、AIやIoT技術を取り入れた自動販売機が登場し、在庫管理や消費者データのリアルタイム分析が可能となっており、デジタルサイネージを利用した広告表示も可能になり、ターゲット層に合わせたプロモーションが行えるようになってきています。

最新技術を活用した自動販売機

IoT自動販売機

IoT技術を取り入れた自動販売機は、在庫管理や消費者データの収集をリアルタイムで行い、運営の効率化を実現します。
商品が売り切れる前に自動で補充を依頼したり、消費者の購入履歴を分析して人気商品を把握する機能があるそうで、これにより、ターゲットマーケティングが可能となり、売上向上に貢献しているそうです。

デジタルサイネージ付き自動販売機

デジタルサイネージを活用した自動販売機は動的な広告表示が可能です。
ターゲット層に合わせた広告を表示することで、購入意欲を高めることができると考えられます。
顧客の属性に応じた広告を表示し、その場で購買意欲を喚起します。
さらに、広告効果の測定がリアルタイムで行えるため、効果的な広告運用が可能です。


自動販売機の活用方法

自動販売機を活用するメリットは多くあるようです。事例をいくつか紹介します。

商品のプロモーション

『AIICOサイネージ』:サンプル配布
ベクトルデジタルとアドインテが共同開発したサイネージ型IoT自動販売機『AIICO(アイコ)』は、最新のIT技術を駆使して、新しいマーケティング手法を提供しています。
サンプル配布を自動化することで人件費を削減しながら、話題性を高め、消費者のデータを取得してアフターコミュニケーションを強化しています。
サンプルは、QRコードを使ったアンケート、公式LINEの登録、設置先アプリ等を使って受け取ることができます。
全国の主要都市に拡大しており、全国に約1,000台設置しているそうです。

https://news.allabout.co.jp/articles/o/81392/ https://aiico-pr.com/より引用


インバウンド需要に対応

免税対応自動販売機:「ビームス ジャパン じはんき」
国内初の免税対応自動販売機「ビームス ジャパン じはんき」が東京ソラマチに設置されました。
この自販機は、顔認証とパスポートで消費税免税の手続きをセルフで行うことで無人での免税販売を実現しており、また、日本人も消費税込みの価格で利用可能です。
この技術は、株式会社ブイシンクが開発したIoT自販機「スマートマート」が採用されています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000105503.html より引用


自販機で買えるショートケーキ

「patisserie OKASHI GAKU」:ショートケーキ缶自販機
パティスリー「patisserie OKASHI GAKU」が展開する「自販機で買えるショートケーキ缶」は、美しい断面が特徴のショートケーキ缶で、透明な容器にぎっしり詰まったクリームが360度どこから見てもかわいい断面「萌え断」が楽しめるとSNS映えし、話題となりました。
閉店時間を気にせずにケーキを購入できる利便性と型崩れしにくく、持ち運びやすい点も魅力です。
見た目の美しさと利便性を兼ねたデザインで2022年度グッドデザイン賞も受賞しています。

https://okashigaku.official.ec/ より引用
参考記事:https://www.g-mark.org/gallery/winners/8245


認知拡大と理解促進

共同船舶:鯨肉無人販売店「くじらストア」
国内最大の捕鯨会社、共同船舶は24時間鯨製品が購入できる鯨肉無人販売店「くじらストア」を展開しています。
反捕鯨団体の影響で販売が難しい鯨製品を安定的に提供することを目的としており、さらに店舗内には捕鯨方法などを学べるパネル展示があり、捕鯨の認知拡大と理解促進を図っています。
環境保護の観点からも、鯨を食べることが海洋資源の保護につながることを訴求しています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000120842.html より引用
参考記事:https://www.kujira-town.jp/news/20230531_20230531/


防災

ダイドードリンコ:災害救援自販機
ダイドードリンコは災害対応に積極的に取り組んでおり、災害時には、無償で飲料を提供する「災害時支援自販機」を設置することで、地域住民の安全と健康を守るための飲料供給を確保しています。
また、地方自治体や企業と連携し、防災訓練や啓発活動を通じて地域の防災力向上をサポートしています。
さらに、IoT技術を活用した自動飲料提供システムを導入し、災害時の迅速な対応を実現し、地域社会に貢献しています。

https://www.dydo.co.jp/jihankiconsul/saigai/より引用


自動販売機の未来展望

よりパーソナライズされた商品・サービスの提供

自動販売機は、今後ますますパーソナライズされた商品やサービスの提供が進むと考えられます。
顔認識技術や購買履歴データを活用し、個々の消費者に合わせた商品の提案やプロモーションを行うことで、より効果的なマーケティングも可能になると言われています。


非対面・非接触型決済の普及

自動販売機はQRコード決済やスマホアプリを使った決済システムを導入し、消費者の安全と利便性を向上させています。

環境負荷の低減

環境への配慮も今後の重要なテーマで、省エネ設計や再生可能エネルギーの利用、リサイクル可能な素材の採用など、自動販売機の環境負荷を低減する取り組みが進んでいます。

地域活性化への貢献

自動販売機は、地域の特産品や地元企業の商品を販売することで、地域経済の活性化にも貢献しています。
観光地では、ご当地商品やお土産品を取り扱う自動販売機が設置され、観光客の利便性向上と地域振興に役立っています。

自動販売機の役割の進化

自動販売機は、単なる商品販売の機器から、地域の情報発信拠点やコミュニティの場としての役割も担うようになっています。
例えば、地域のイベント情報を表示したり、防災情報を提供する機能を備えた自動販売機もあります。


自動販売機は技術革新とともに進化し続けており、パーソナライズされたサービス、非接触型決済、環境負荷の低減、地域活性化など、さまざまな面で新たな可能性が広がっていると考えられます。

自動販売機など、身近なものの活用法を異なる視点から考えることは、マーケティング戦略やビジネスの新たな可能性を探る良い機会になると感じました。


参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000103.000121322.html