2025年4月13日から10月13まで、大阪市内の人工島「夢洲」にて大阪・関西万博が開催されます。
公開されている公式の資料によると、閉会に近い時期(終盤)が最も混雑するとの予測が示されており、どこの万博でも閉会間近が一番混雑すると言われているそうなのですが、なぜ締め切りが近づくほど来場者が殺到するのでしょうか?
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実はこの「最終盤の混雑」という現象は万博に限らず、大型の展覧会やフェスなどでもよく見られていて、そこには「時間をかけて徐々に積み上がる“話題化の効果”」が大きく関係していると言われています。
そこで今回は、「閉会前の万博が混雑する理由」に迫るとともに、口コミやSNSでの拡散がどのようにピークを生み出し、マーケティング施策にどのように活用できるのかを深掘りしてみたいと思います。
なぜ閉会前の万博が混むのか?
3つの理由
駆け込み需要の心理
大型イベントの終盤が混雑しやすい理由のひとつに「駆け込み需要」が挙げられます。
万博や展覧会など、開催期間が限られているイベントでは、「もうすぐ終わってしまう」「行かないと損だ」という心理が働き、締め切りが近づくと一気に来場者が増加しがちで、特に数年に一度という希少性のある万博では、この傾向が顕著にあらわれます。
SNS・メディアでの話題拡散
近年では、SNSやメディアによる口コミ・情報拡散のスピードが飛躍的に高まっており、イベントが始まった直後はまだ口コミが十分に広まっていないケースもありますが、日を追うごとに下記のような情報がSNSを中心に拡散されていきます。
- 「○○パビリオンの体験が面白い」
- 「限定グッズが手に入る」
- 「整理券を確保するなら朝イチがオススメ」
こうした“話題の蓄積”がイベント終了に近づくほどにピークとなり、「今行かないと乗り遅れる」と考える人が増えるため、閉会前に混雑が高まると言われています。
運営体制・コンテンツの成熟
万博のように長期で行われるイベントの場合、開始直後は運営面での試行錯誤が続きがちですが、会期が進むにつれて運営ノウハウが蓄積され、トラブルシューティングや導線整理が進むことで、来場者がより快適に楽しめる環境が整います。
さらに、
- 新たなイベントやパビリオンの追加
- 期間中盤から後半にかけて行われる特別企画
などが投入されると「今が一番充実している」という印象が広まり、来場意欲を高める要因になります。
「話題化による効果の蓄積」を
マーケティング視点で捉える
バンドワゴン効果
多くの人々が支持しているものに自分も乗っかりたいと考える心理的作用を「バンドワゴン効果」と呼びます。
SNSやニュースで万博の盛り上がりが取り上げられるほど、まだ行っていない人も「自分も行くべきだ」と感じるようになり、閉会前のピークがさらに増幅していくと言われています。
FOMO(Fear Of Missing Out)
「FOMO」は「自分だけ取り残されるのでは」という不安感を指す言葉で、SNS全盛の現代では特に重要な概念です。
友人やインフルエンサーが万博の写真や動画をSNSに投稿しているのを見ると、
- 「行かないと話題に乗り遅れる」
- 「みんなが盛り上がっているのに自分だけ知らないのは恥ずかしい」
と感じる人が増え、結果的に終盤の来場者増加を後押しします。
情報の蓄積とブランディング効果
会期の進行とともに口コミが蓄積されると、万博そのもののブランド価値が高まります。
特定のパビリオンがメディアで話題になったり、SNS上で“行列必至”とバズったりすると、「とにかく一度は行っておきたい」と思う人が増え、こうした一連のポジティブな情報が累積していくことが、閉会間近のピークを生む重要な要因といえます。
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小規模ビジネスにも活かせるポイント
早期段階での話題づくりの仕込み
「話題化による効果の蓄積」を最大化するには、イベント開始前や開始直後から積極的に情報発信を仕掛けることが重要です。
具体的には、
- 有力インフルエンサーを招いたプレイベントや試遊会
- SNSキャンペーンでフォロワーに限定グッズを提供
- 開幕直後のメディア露出を集中的に行う
といった施策を通じ、早い段階からイベントへの期待感を高めると、会期後半になるほど口コミが爆発的に広がりやすくなります。
会期中盤~後半に向けた追加コンテンツの導入
長期開催のイベントでは中盤以降の“中だるみ”を防ぎ、後半に向けて再度の盛り上がりを創出するために、新たなコンテンツの追加が効果的です。
- 期間限定のイベントやテーマパビリオンの開設
- 追加ステージやコラボ企画、スペシャルゲストの登壇
- スタンプラリーやデジタルを活用した回遊型企画
こうした仕掛けをタイミング良く投入することで、初期に一度訪れた人にも「もう一度行ってみよう」と思わせることができます。
来場者の体験をスムーズにする工夫
混雑ピークは大きなチャンスである一方、来場者がストレスを抱えやすいタイミングでもあります。
待ち時間の長さや施設の混乱は悪い口コミの原因になりかねません。そこで、
- 整理券や事前予約システムなどの整備
- 館内誘導やスタッフ体制の強化
- リアルタイムでの混雑状況情報の提供
など、来場者がスムーズに楽しめる環境づくりを徹底することが、良い口コミを拡散させるうえで欠かせません。
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万博の閉会前に混雑がピークに達しやすいのは、駆け込み需要や希少性の心理だけでなく、話題が段階的に積み上がることで最終的に大きく膨れ上がるというマーケティング上の現象が背景にあります。
SNSや口コミの力が強まった現代において、この“話題化の波”をいかに早期から仕込み、適切に育てていくかがプロモーション戦略の鍵となると思います。
参考資料
万博来場者日来場者数と機関分担率の推移
https://www.expo2025.or.jp › 240612_01_siryo4