日本酒のラベルデザインから学ぶ:購買意欲を高めるデザイン

父の日は、毎年6月の第3日曜日で、
今年(2024年)の父の日は6月18日(日)になります。


父の日のギフトとして、日本酒を選ぶ方も多いのではないでしょうか?

日本酒のラベルデザインはギフト選びの際の重要なポイントになっていて、インバウンド需要の高まりから、海外からの観光客がお土産として日本酒を購入するケースも増えているそうです。

観光客にとってのラベルデザインは、「日本の文化」を体現するものであり、お土産選びの決め手となる重要な要素になるでしょう。


父の日が近づいていることもありますので、今回は、日本酒のラベルデザインを事例に、ラベルデザインがどのような効果をもたらすのかを考えてみます。



ラベルデザインの効果

ラベルデザインは、消費者の購買意欲やブランドイメージに大きな影響を与える重要な要素で、ラベルデザインがもたらす効果として、下記のようなものが挙げられています。

購買意欲の向上

美しいデザインやユニークさで目を引くラベルは、「手に取ってみたい」と思わせる効果があります。


ブランドイメージの強化

ラベルデザインはブランドイメージの形成にも寄与し、統一感のあるデザインや、高品質を感じさせるラベルは、ブランドの信頼性を高め、消費者のロイヤリティを向上させます。


顧客満足度の向上

デザイン性の高いラベルは顧客満足度を向上させ、特にギフトにした場合、贈り物の価値を高め、受け取った人に喜びと驚きを与えるでしょう。


効果的なラベルデザインの要素

ラベルデザインの重要なポイントをまとめてみます。

  • 色の選択
    色は消費者の感情に直接影響を与える非常に重要な要素です。例えば、伝統的な金や銀を用いて、高級感や格式を演出するのも効果的でしょう。
  • フォントの選択
    フォントの選び方で、ブランドの個性やメッセージを反映することができます。例えば、手書き風のフォントを使用すれば、手作り感や親しみやすさを伝えられ、
    逆に、シンプルでモダンなフォントは、洗練された印象を与えて、高品質なイメージを強調できます。
  • イラストや画像
    ラベルに使用するイラストや画像は、商品の特徴やストーリーを伝えるための重要な要素であり、季節ごとの風景や日本文化を象徴するイメージを取り入れることで、消費者に、見た目に楽しくブランドの物語性を強調することも可能です。
  • 素材の選択
    ラベルの素材もデザインの一部として捉えることが重要です。和紙や布などの特別な素材を使用して他の商品と差別化し、特別感を演出したり、
    エコフレンドリーな素材を選んで、環境意識の高い消費者にアピールすることもできます。

ターゲット層に合わせたデザインの工夫

効果的なラベルデザインを作成するには、ターゲット層に合わせたデザインの工夫が必要です。例えば、若年層をターゲットにする場合は、トレンディでカラフルなデザインが有効だと言われる一方で、高齢層をターゲットにする場合は、伝統的で落ち着いたデザインが好まれる傾向にあります。


また、ターゲット層の嗜好やライフスタイルを理解して、そのニーズに応じたデザインを提供することが重要であり、それには、市場調査や消費者インタビューを通じて、ターゲット層の意見を反映させることが大切です。


文化的要素やストーリーテリングの活用

ラベルデザインに文化的要素やストーリーテリングを取り入れることで、消費者に深い印象を与えることができます。

  • 文化的要素
    地域の特産品や伝統行事・歴史的背景をラベルに反映させることで、地域性や独自性を強調でき、例えば、デザインに取り入れた地域の祭りや名所は、観光客へのアピールポイントになります。
  • ストーリーテリング
    商品の背景や製造過程の物語をラベルに盛り込むことで、消費者に感情的なつながりを提供することが可能です。例えば、蔵元の歴史や職人の技術を伝えるデザインは、商品(日本酒)への信頼感を高める効果があると言われています。

コラボレーションの活用

ラベルデザインにおいては、デザイナーやアーティスト、他のブランドとコラボレーションすることも効果的な方法です。

デザイナーやアーティストとのコラボレーション

デザイナーやアーティストと協力することで、ラベルデザインに芸術性と話題性を加味することができます。例えば、現代アーティストの作品をラベルに取り入れることで、視覚的な魅力が高まり、消費者の興味を引くことができるでしょう。
著名なアーティストとのコラボレーションは、メディアやSNSで話題になり、ブランドの認知度向上にも寄与します。


異業種ブランドとのコラボレーション

ファッションブランドやアニメキャラクターなど、異業種とのコラボレーションは新たな顧客層を開拓するための効果的な方法だと言われます。例えば、ラベルに人気のアニメキャラクターを採用することで、アニメファン層にアピールし、これまで日本酒に興味のなかった層にもリーチすることができるといった具合に、異業種ブランドとのコラボレーションは、互いの強みを活かし、新しい市場を開拓する良い機会となり得るのです。


地域や文化とのコラボレーション

地域の特産品や文化をテーマにしたコラボレーションラベルを作成することで、地域や地元の特産品としての魅力を高めることができると考えられており、地域の名産品や祭りをテーマにしたデザインは、観光客にとって魅力的なお土産となり、地域経済の活性化にも貢献します。

また、地域のストーリーをラベルに盛り込めば、消費者に深い印象を与える効果もあるでしょう。


​​限定ラベルの活用

限定ラベルは、消費者の購買意欲を刺激し、商品に特別感を与えるのに有効な手段です。

シーズナルデザイン

  • 季節ごとの限定ラベル
    それぞれの季節に合わせたラベルは、季節感を演出し、四季折々の楽しみを提供できます。
    例えば、春には桜、夏には海や花火のデザインを取り入れることで、消費者に視覚的な新鮮さを感じてもらえるでしょう。

    さらに、季節ごとの限定ラベルは、定期的に新しいデザインを楽しみにするリピーターを増やす効果も期待できます。

  • イベント限定ラベル
    父の日、母の日、クリスマスなどの特別なイベントに合わせて制作したラベルデザインは、「今しか買えない」という限定感を消費者に与え、特別な贈り物としての価値を高めてギフト需要を取り込むことができるでしょう。
    例えば、父の日には「ありがとう」のメッセージを込めたデザインを取り入れることで、感謝の気持ちを表現する商品として消費者にアピールできます。

数量限定

  • 限定生産のラベル
    一定数量のみ生産される限定ラベルを導入すれば、希少価値を強調して早めの購入を促せます。
    例えば、「数量限定1000本」といった具体的な数を明示して限定品としての特別感を強調することで、消費者に「今すぐ買わなければ手に入らない」と思わせることが可能です。

    さらに、限定生産のラベルは、プレミアム感を演出し、コレクターズアイテムとしての価値を高める効果もあります。

成功事例とキャンペーンの提案

ラベルデザインの成功事例をいくつか紹介します。

・初亀醸造株式会社:ちびまる子ちゃんとのコラボ日本酒「父ヒロシ」
株式会社Nexusは、静岡最古の酒蔵、初亀醸造株式会社と『ちびまる子ちゃん』のコラボ日本酒「父ヒロシ」2024年度版を、2024年5月に発売します。

今年で4回目の「父ヒロシシリーズ」は、父の日のギフト用に2種類の日本酒を提供しており、父の日ギフト市場とアニメファン層をターゲットにすることで、限定性と高品質を強調して特別感を創出。『ちびまる子ちゃん』とのコラボレーションにより、親しみやすさとユニークさで幅広い層にアピールしています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000050160.htmlより引用


・石川県酒造組合連合会:「つなぐ石川の酒」
石川県酒造組合連合会は、能登半島地震で被害を受けた蔵元を支援するため、2024年3月に、統一デザインの復興ラベル「つなぐ石川の酒」を使用した日本酒を発売しました。

ラベルは、石川県の形を一片の繋がる折り紙で表現して復興への祈りと蔵元の絆を象徴し、参加した18の蔵元の18銘柄で統一使用して、それぞれの酒蔵で販売しています。

利益の一部は能登の蔵元と石川県に寄付され、デザインの力で復興支援に貢献することを目指しており、
地域の絆を強調し、感情的共鳴を呼び起こすことで消費者の購買意欲を高めています。

https://www.advertimes.com/20240319/article452625/より引用


・佐々木酒造:高島屋限定「花聚楽」
京都の佐々木酒造は、「ダブルツリーbyヒルトン大阪城」の壁画でも話題となっている壁画絵師、木村英輝氏とコラボした高島屋限定の日本酒を発売しました。

ラベルには、木村氏がデザインした高島屋の象徴「薔薇」が描かれ、高級感と限定性を強調して希少価値を高めており、
アート要素を取り入れたラベルデザインと、京都の地下水と厳選された山田錦を使用することで、地域の伝統と品質をアピールしています。

https://www.takashimaya.co.jp/shopping/product.html?p_cd=0001459161&sub_cd=001より引用


明利酒類株式会社:「大吟醸 雪夜月」
明利酒類株式会社は、ホロライブ所属のVTuber雪花ラミィと共同開発した日本酒「大吟醸 雪夜月」を、2024年4月に発売しました。

これは、雪花ラミィが日本酒の魅力を広めるために始めた「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」の一環であり、毎年ロンドンで行われる世界最大規模のワイン・清酒品評会「IWC2022」と「IWC2023」ではメダルを受賞しています。

VTuberファンと日本酒愛好者をターゲットにし、ラベルデザインで視覚的にも訴求力があり、雪花ラミィの「ゼロから日本酒を造る」ストーリーが共感を呼ぶことで、幅広い層にアピールした事例です。


ラベルデザインは、時期やトレンドに合わせて迅速に対応できることが大きなメリットだと考えます。
自社や商品の魅力を効果的に伝えるツールとして、有効に活用していくお手伝いができればと思っています。