正月の風物詩として多くの人が注目した「箱根駅伝」。
選手たちは長距離を走るだけでなく、大学ごとのチーム戦略や緻密なトレーニング、そして仲間と襷(たすき)を繋ぐドラマが魅力的です。
一見、企業のマーケティング活動とは無関係に思えますが、実はこの駅伝の戦い方にはビジネスにも活かせるヒントが多数あると思っています。
特に“長期戦略”という視点では、箱根駅伝から学ぶことが多いのです。
箱根駅伝は1区間あたり20km前後の長距離を、全10区間で走り抜きます。
つまり、短期間で成果を出す100m走などと異なり、長期的な視点と継続的なトレーニングが勝敗を左右するのです。
これは、マーケティングにおいても同様で、短期キャンペーンだけではなく、長期的なブランド認知や信頼構築、リピーター獲得を狙う計画が欠かせないと考えます。
短距離ではなく長距離を走るからこそ見える
「継続性」の重要性
ここでは箱根駅伝の特徴を例に、“長距離走”と“マーケティング”の共通点を探っていきます。
ポイント1:駅伝の“区間配置”は
マーケティング施策における“リソース配分”と同じ
箱根駅伝では、各大学の監督が選手の力・得意分野・コース特性を見極めながら区間配置を決定します。
たとえば、山登りに強い選手を5区(往路最後の山登り)に配置したり、エースを他大学のエースとぶつけるような戦略を取ったりするわけです。
マーケティングにおいては、この区間配置が“リソース配分”にあたります。
限られた予算や人材、時間をいかに有効に振り分け、最適な施策を組み合わせるか。
自社の強み(商品力・サービス品質・認知度など)や競合環境を踏まえ、どの顧客層にどうアプローチするのかが勝負どころだと言われています。
具体例:
- 広告出稿:テレビCM、SNS広告、イベントなど、最適なメディアを選択し予算配分する
- 人材配置:エース級の営業担当を新規開拓に集中させるのか、それとも既存顧客深耕に回すのか
- プロモーション施策:セール、キャンペーン、タイアップ企画など、時期やターゲットに合わせて選択
ポイント2:ペルソナ設定やターゲティングは
区間の特徴と選手の走力を照らし合わせる作業
駅伝では、各区間の距離・高低差・気象条件などの特徴を把握し、それに合わせて最適な選手を選びます。
たとえば、平坦が得意な選手を“アップダウンが少ない区間”に配置したり、スタミナに自信のある選手を“距離が長めの区間”に配置したりするそうです。
この考え方は、マーケティングのペルソナ設定やターゲティングに通じます。
自社の商品・サービスが「どんな人に向いているのか」「どんな課題を解決するのか」を正確に捉え、それに合わせてアプローチを変えることで効果が高まると考えます。
具体例:
- ペルソナ作成:30代男性ビジネスマン、家族層、学生などそれぞれの課題や趣味趣向を具体化
- 訴求メッセージの切り分け:同じ商品でも、ファミリー層には安心・安全、ビジネスマンには効率・時短を強調
- チャネルの選択:SNS、オウンドメディア、メルマガ、実店舗などターゲットとの接点を最適化
ポイント3:継続的な練習が功を奏するように
データ分析とPDCAサイクルを回す重要性
箱根駅伝で好成績を残すチームは、日々の練習データや選手のコンディションを細かく分析し、改善を続けています。
走り方のフォームチェックから疲労度管理、合宿での強化プランなどをPDCAサイクルで回し続け、チーム全体の底上げを図るそうです。
マーケティングでも、施策を実行して終わりではなく、その効果を分析し、改善策を検討して次の施策につなげることが不可欠です。
継続的なレビューと改善を繰り返すことで、売上・認知・ブランド力を高める長期的な戦略が構築できます。
具体例:
- データ分析:SNSの反応率、Webサイトのアクセス解析、広告のCVR(コンバージョン率)などを定期的にチェック
- PDCAサイクル:計画(Plan) → 実行(Do) → 評価(Check) → 改善(Act) の流れを施策ごとにまわす
- 長期視点での最適化:単発キャンペーンで終わらず、継続的にデータを蓄積してノウハウ化し、次期施策に反映
箱根駅伝は一日にして成るものではなく、各チームが一年以上の時間をかけて準備し、細かな調整を重ねることで本番に挑みます。
マーケティングも同様に、長期的な計画・戦略・改善の積み重ねこそが大きな成果を生み出す鍵と言えます。
短期的な売上や話題作りも重要ですが、それだけに頼らず、ブランド力の向上やリピーターの育成など、より長い視点での施策をデザインすることが大切です。
そうすることで、競合他社との差別化や継続的なファン獲得につながり、企業の成長を支える確固たる基盤が築けると考えます。
箱根駅伝での“長距離走”から学べるマーケティングのポイントを整理すると、“区間配置に見るリソース配分”、“ペルソナ設定・ターゲティングの重要性”、そして“データ分析とPDCAサイクルによる継続的な改善”の3つが挙げられます。これらを踏まえ、自社の施策を見直してみると、新たな発見や改善点が見つかるかもしれません。