2024年10月、総合エンジニアリング企業として長い歴史を持つ「日立造船」が「カナデビア」へと社名を変更しました。
長年親しまれてきた企業名を変えるというニュースは多くの人の関心を集めています。
今回は、この“社名変更”という大きな転換点について、マーケティングの視点から見たメリットやリスク、実際にどのような施策が必要なのかについてまとめます。
日立造船→カナデビア:社名変更の背景
日立造船の歴史と新たなチャレンジ
日立造船は、もともと造船事業を中心に展開してきた企業ですが、近年では機械やエネルギー、プラントなど、さまざまな領域へと事業を拡大してきました。
長年にわたって「日立」の名を冠してきた同社ですが、造船業からのシフトや環境企業への転換に伴い、社名を変更したとのことです。
新社名「カナデビア」は、日本語の「奏でる」とラテン語で「道」を意味する「Via」を組み合わせたもので、「人類と自然の調和を奏でることにより新しい道を切り開く」という意味が込められているそうです。
今後の未来に向けて”技術の力で、人類と自然調和に挑む企業グループ”として新たな歴史を築いていくため、81年ぶりの商号変更を行ったそうです。
なぜ企業は社名変更をするのか?
企業が社名を変える理由にはさまざまなケースがあります。
以下によくあるパターンを挙げます。
- 事業領域の拡大や転換
創業時から比べて事業内容が大幅に変化し、既存の社名ではビジネスの本質を十分に表せなくなるケース。 - M&Aや組織再編
買収・合併や統合を機に新しいブランドを立ち上げ、共通イメージを構築するために名称を変えるケース。 - グローバル展開の推進
海外市場へ進出するにあたり、発音やスペルが分かりづらい、ネガティブな印象を与えるなどの理由で名称を再考するケース。 - ブランドの再構築
長年の歴史で培ったイメージを一新し、新たな方向性を強調するために社名変更が行われるケース。
社名変更がマーケティングにもたらすインパクト
メリット
- ブランドの再定義・再構築
新しい社名やビジョンを掲げることで、既存顧客だけでなく新たな層にもリブランディングをアピールしやすくなります。 - 新規顧客へのアピール
既存のイメージから離れてメッセージを打ち出せるため、新市場へ参入する際のきっかけとなり得ます。 - 社内の士気向上
大きな変革のタイミングとして社員全員に新スタートを印象づけられ、組織の一体感を高める効果が期待できます。
デメリット・リスク
- 認知度の一時的な低下
これまで積み上げてきた知名度や信用力がリセットされ、短期的には混乱やイメージ低下が起きるリスクがあります。 - コストと手間の増大
名刺・看板・Webサイト・SNSアカウントなど、変更に伴うコストやリソースがかかります。 - 社内外の混乱
十分な周知を行わなければ、社員や取引先・顧客が戸惑う場合があります。
成功する社名変更のポイント
名称変更をスムーズに進め、効果的にブランディングを行うには次のようなポイントを押さえることが大切です。
- ビジョン・コンセプトの明確化
新社名が「どんな意図を持ち、何を目指しているのか」を社内外に伝えるストーリーが必要。 - ステークホルダーへの丁寧な周知
従業員、取引先、顧客、メディアなどに向けて段階的に情報共有を行い、納得と理解を得る工夫を。 - 段階的なブランディング戦略
いきなり全て変えるのではなく、ロゴ・コーポレートカラー・Webサイトなどを計画的にリニューアルし、混乱を最小限に抑える。 - 継続的なマーケティング施策
名称変更後も、キャンペーンやSNS運用、プレスリリースなどで新ブランドを広く認知してもらう取り組みが必要。
失敗事例から学ぶリスク管理
名称変更を上手く進めるには、過去の失敗事例からも学ぶことが大切です。
- 顧客が離れる
新社名が顧客に受け入れられず、愛着や信頼が大きく損なわれる可能性があります。 - 社内浸透が不十分
「なぜ変えるのか」を社員自身が理解しないと、社内外への一貫したブランディング発信が崩れてしまいます。 - SEOや検索トラフィックの減少
新名称へ移行する際のリダイレクト設定や検索エンジンへの対策を怠ると、アクセス数が落ちるリスクが高まります。
Webマーケティング視点で押さえておきたいこと
SEO対策
- 301リダイレクトを設定し、旧URLから新URLへスムーズに移行する。
- 検索エンジンへサイトマップを送信し、新社名のクローリングを促す。
※301リダイレクト・・・
httpヘッダーに含まれるステータスコードの1つで、URLが恒久的に変更される際に利用する転送処理のこと
オウンドメディアやSNSの整備
- ロゴやデザインを段階的に更新し、ユーザーが混乱しないよう配慮する。
- 記事内で旧社名を併記するなど、読者に対して分かりやすい導線を用意する。
PR・広告活動
- 新社名の特設ページを作り、名称変更の背景や理念を詳しく説明する。
- SNSや広告キャンペーンを活用し、広く周知を図る。
名称変更は企業にとって転換点であり、ブランディングを再構築する貴重な機会でもあります。
今回の日立造船の例が示すように、長年培ってきたイメージから新たなステージへと向かうには、明確な目的と戦略、そして丁寧なコミュニケーションが不可欠だと考えます。
参考記事
・https://www.advertimes.com/20241002/article476127/
・https://www.kanadevia.com/