没入感で顧客を魅了する:イマーシブ体験の成功事例

「没入感」や「没入型」、「イマーシブ」という言葉をよく聞くようになりました。
日本最恐のお化け屋敷として知られる富士急ハイランドの「戦慄迷宮」も、より圧倒的なイマーシブ体験をコンセプトに、2024年7月20日からリニューアルオープンすると話題になっています。

https://www.fujiq.jp/special/senritsu/より引用

参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001604.000001110.html


最近は、参加者が物語の登場人物となるエンターテイメント型の没入感を提供する企画が人気となっているようです。
今回は、さまざまな事例から没入感を高める体験について考察してみたいと思います。


没入感とは

没入感とは、ユーザーが特定の環境や体験に完全に引き込まれる感覚を指します。
広告やデザインの分野でも、没入感は消費者の注意を引き、深い感情的なつながりを生むための重要な要素となります。
例えば、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオのような施設では、訪問者が現実を忘れ、その世界に没入できるような設計がされています。


なぜ今没入感が流行っているのか

デジタル技術の進化

近年、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術革新が進み、現実と仮想のシームレスな融合が可能となりました。


消費者の期待の変化

現代の消費者は、単なる商品の購入ではなく、物語性やテーマ性を持つ体験を求めています
ブランド体験の価値が高まり、没入感を重視したデザインが消費者の心をつかむ手段として注目されています。


コロナ禍の影響

コロナ禍により、リアルな体験が制限されたことで、デジタル体験の重要性が増したことも要因となっています。
オンラインイベントやバーチャルショッピングなど、デジタルでの没入感を提供する取り組みが増加しています。


没入感を活用した事例

没入感を効果的に活用している具体的な成功事例を紹介します。

アサヒビール:没入型コンセプトショップ

アサヒビールのコンセプトショップが、オープン1カ月で目標の3割以上の来場者を達成したと話題になっています。
6月1日から「Spotify」とタイアップした写真撮影コーナーや、ビールの泡にアーティストロゴを描く期間限定泡アートを展開しました。
親子向けの「父に感謝を伝えよう企画」を行い、特別なグラスでビールを提供するなど、新しい客層を開拓し、親子の絆を深める場を提供する企画も開催されています。

https://www.asahibeer.co.jp/superdry/immersive-experience-bar/より引用

株式会社BAKE:しろいし洋菓子店

株式会社BAKE(ベイク)は、新ブランド架空のパティスリー「しろいし洋菓子店」をオープンし、オンラインで独自の世界観とアートなお菓子による没入体験を提供しています。
架空の舞台「マンション・インディゴ」とその住人たちのストーリーを通じて、消費者はお菓子を楽しむだけでなく、物語に引き込まれる体験ができます。
オンラインを基軸としたOMO(オンラインとオフラインの融合)ブランドとして展開することで、新たな顧客層を開拓しています。
定期的な更新で消費者のリピーターを増やし、効果的なマーケティングを実現しています。

https://shiroishi-yougashiten.com/より引用

泊まれる演劇

泊まれる演劇「イマーシブシアター」は、演劇と宿泊の融合により、参加者が劇の世界に浸る体験を提供しています。
従来の観劇とは異なり、ホテル全体が舞台となり、参加者が物語の一部となることで、深い没入感を得ることができます。
従来の演劇ファンだけでなく、新しいエンターテインメントを求める層を引きつけ、リピーターが続出し、過去の公演では連日満室となっており、SNSでも多くの絶賛の声が溢れました。

https://www.tomareruengeki.com/より引用

株式会社kakeru:友達がやってるカフェ

株式会社kakeruが東京・原宿にオープンした「友達がやってるカフェ/バー」は、友達感覚の接客で新しい顧客体験を提供する店として2023年4月に東京・原宿にオープンしました。
お客様は「来てくれたんだ!」などと迎えられ、友達のバイト先に遊びに行く感覚を楽しめます。
ユニークな名称のドリンクや、役者やモデルによる接客がSNSで話題となりました。
特にZ世代に人気で「SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2023(体験部門)」などのトレンドランキングにランクインしました。

https://www.fashionsnap.com/article/2023-04-27/tomodachigayatteru-cafe/より引用

没入感を提供することによるメリット

没入感のある体験は、顧客に深い影響を与え、ブランドの価値を高めます。

1. 記憶に残る体験

強い没入感の体験は、顧客の記憶に深く刻まれます
特別な体験は長く覚えてもらえるため、リピートや口コミを促進します。

2. 感情的なつながり

没入感のある体験は、顧客に強い感情的なつながりを生み出します。
ブランドや製品に対する愛着が強まり、ブランドのファンになってもらえます。

3. 興味を引き続ける

インタラクティブな要素や選択肢を含む没入感のある体験は、顧客の興味を引き続けます
体験全体の満足度が高まり、また参加したいと思わせます。

4. 差別化と独自性

没入感のある体験は、競合との差別化を図る強力なツールです。
ユニークな体験がブランドの独自性を強化し、他にはない魅力を提供します。

5. ソーシャルメディアでの拡散

特別な体験は、顧客がソーシャルメディアでシェアしたくなります。
これにより自然な口コミ効果が生まれ、新しい顧客を引き寄せます。

これらのメリットにより、没入感を提供する体験は顧客の心をつかみ、ブランドの価値を高める手段となります。


今後は、ARやVRの技術が進化し、没入感を提供する体験の可能性は広がるでしょう。
没入感を活用したアピールは、企業の規模に関わらず、アイデア次第でさまざまなシーンで取り入れることができるのではないかと思いました。