街を歩いていると、「母の日」のポスターがあちこちに貼られているのに気が付きました。母の日は5月の第2日曜日だそうで、2024年は5月12日になります。
私自身、毎年母の日に忘れずに感謝を伝えていたかというと、そうでもなかったタイプです。ですが、やはり母の日は、普段はなかなか伝えられない感謝の気持ちを伝える絶好の機会だと思います。
この時期、広告業界では、多くの母の日キャンペーンが展開されます。
印象に残るキャンペーンを作るには、商品をアピールするだけではなく、大切なのは、贈り物を選ぶ子どもたちと、受け取る母親たち、両方の気持ちに響くメッセージを作り出すことが大切だと感じます。
それには、ターゲットオーディエンスを深く理解することが欠かせません。
母の日のキャンペーンは、ただ商品を売るだけではなく家族の絆を深め、感謝の気持ちを伝える手伝いをすることでもあると言えるのではないでしょうか。
今回は、母の日の広告やキャンペーンを通じて、心を動かし記憶に残る広告について考えてみたいと思います。
ターゲットオーディエンスの洞察
母の日のプレゼントを選ぶ顧客層は幅広く、誰がプレゼントを選び、誰がそれを受け取るのかを理解することが大切です。
- ターゲットの年齢層を理解する
子どもたちの年齢層は幅広く、小学生から大人までさまざまです。
年齢層によって、興味や関心、購買力は大きく異なります。
10代は新しいトレンドに敏感であり、30代は品質やストーリーに価値を見出す傾向があります。
- 感情的なつながりを重視
母親へのプレゼントは、特別な意味を持っています。
感謝の気持ち、愛情、思い出といった感情的な価値を伝える手段です。
これらの感情に訴えかけるメッセージが重要になります。
- 多様なチャネルを通じたアプローチ
異なる年齢層のターゲットにアプローチするには、オンラインメディア、ソーシャルメディア、地域のイベントなど、様々なチャネルを利用することが効果的です。
ストーリーテリングを活用する
物語は人々の感情に深く響きます。
特に母の日における広告では、親子の絆や思い出を描くことで、感動を呼び起こす力があります。
広告で短い物語を展開することにより、視聴者は自らの経験と重ね合わせ、メッセージにより深く共感するようになります。
キャラクターが物語の中で体験する喜びや感謝の瞬間は、視聴者にも同じ感情を呼び起こします。
これらのキャラクターが親しみやすく、リアルであればあるほど、メッセージの伝達は効果的になります。
感覚を刺激するツール
広告が視覚だけでなく、聴覚や嗅覚など他の感覚にも訴えかけるとき、その体験はより記憶に残りやすくなります。
音楽はその強力なツールの一つで、心地よいメロディは広告の雰囲気を高め、感情的な共鳴を促します。
体験型の広告やイベントでは、視覚以外の感覚を刺激することが可能です。
例えば、香りは特に記憶に関連する感覚であり、特定の香りが母の日の記憶を呼び覚ますこともあります。
これらのアプローチは、記憶に深く刻む助けとなります。
どのアプローチが最も適しているかは、キャンペーンの目的やターゲットオーディエンスによって異なります。
母の日キャンペーン広告の成功事例
実際の企業のキャンペーン事例を紹介します。
・花キューピット:母の日キャンペーン「今年は僕から」
花キューピットは2024年の母の日キャンペーンに俳優の松下洸平を起用しました。
このキャンペーンは6年目で、毎年行われるキャラクター予想のSNSキャンペーンも人気を集めています。
投稿開始から解禁時までで、約2万件の予想がSNS上で寄せられました。
情報解禁後の反響も高く、多くの人が花キューピットを通じて母の日の花を注文したいという反応が見られました。
3月5日からはテレビCMがWebで先行公開され、CMの楽曲には松下洸平が作詞作曲した「たんぽぽ」が使用されています。
https://www.advertimes.com/20240313/article451883/より引用
・ロッテ「ガーナ」:「母の日ガーナ」で 『SPY×FAMILY』を起用
ロッテの「母の日ガーナ」キャンペーンでは、アニメ『SPY×FAMILY』とのコラボレーションを実施し、過去最高の実施率を記録しました。
このキャンペーンは母親と子供たちからの共感を得ることを目指し、コロナ禍を経て、子供と母親が一緒に楽しむコンセプトから、再び感謝の伝達にフォーカスを戻しました。
キャンペーンでは、母親の感情やインサイトを言語化し、異なる視点を提供する5種類のコピーを使用しました。
『SPY×FAMILY』は家族の絆をテーマにしており、このキャンペーンのコンセプトとの親和性が高いと評価されました。この結果、母親世代はメッセージに、子供世代はキャラクターに魅力を感じ、SNS上でもコピーへの共感を示す投稿が多数見られました。
・株式会社レバレッジ:フィットネスブランドVAL「ポスター広告」
株式会社レバレッジが運営するフィットネスブランド「VALX(バルクス)」は、母の日に社員の地元、香川県観音寺市にあるJR観音寺駅に感謝のメッセージを込めたポスター広告を掲示しました。
このキャンペーンは、大学進学で上京した社員が、母親から受けた支援への感謝を表現するものです。
広告には、日常では伝えにくい深い感謝の気持ちが綴られており、2023年5月10日から16日までの間、地元のコミュニティに展示され、SNSの投稿にも大きな反響がありました。この取り組みは、ブランドイメージの向上や企業のポジティブな認知度向上に寄与しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000024045.htmlより引用
キャンペーン事例の分析と適用
効果的な母の日キャンペーンを計画する際には、成功した事例を分析し、その要素を自社の戦略に適用することが有効です。
- 事例の選定
過去に成功を収めた母の日キャンペーンをピックアップします。
これらの事例は、ターゲットオーディエンスの共感を得て、印象に残るキャンペーン内容が特徴です。
- 戦略の分析
各キャンペーンが成功した理由を深掘りします。
ターゲットオーディエンスへのアプローチ方法、使用されたメディアチャネル、広告のデザイン、メッセージの伝達方法など、成功の要因を詳細に分析します。
- 適用ポイントの特定
分析から得られた知見を自社のキャンペーンにどのように適用できるかを検討します。
例えば、あるキャンペーンがストーリーテリングを効果的に使用していた場合、自社の広告にも同様のアプローチを取り入れることが考えられます。
- カスタマイズ
事例の成功要素を自社のブランドや商品、ターゲットオーディエンスに合わせてカスタマイズします。
全く同じ戦略を複製するのではなく、自社の独自性を活かした適応が重要です。
- 実装と評価
分析と適用を経た戦略を実際のキャンペーンに取り入れ、実施します。
その結果に基づき、キャンペーンの効果を評価し、今後の改善点を特定します。
今回は、母の日の広告やキャンペーンを通じて、心を動かし記憶に残る広告について考えてみました。
企業は創造的な広告と心に響くデザインを用いて、母への感謝を形にするきっかけをつくり出すことができます。
プレゼントを通じて日頃の感謝を伝えることで、贈り物をする子どもたちと、受け取る母親たち、両者の記憶に深く刻まれます。
母の日のキャンペーンは販売促進の効果だけではなく、企業やブランドの暖かなイメージを長く記憶に残せる方法だと感じました。