イトーヨーカ堂が原宿にオープンした「TOYLO MART(トイロマート)」というエンタメ特化型店舗が話題になっており、“子ども心を持ち続ける大人”をターゲットに、キャラクター雑貨を豊富に取り揃えていて、この“子ども心を持ち続ける大人”を「キダルト」と呼ぶそうです。
少子化やECの台頭で、リアル店舗に足を運ぶ子どもが減少する一方、同社は「子どもが遊べる場づくり」によってファミリー層を取り込み、さらに「キダルト層」を意識した新業態を展開しているようで、この戦略が功を奏し、売上や客数が大きく伸びている点に今回は注目しました。
この「キダルト」の定義や消費傾向に焦点を当て、玩具市場の動向やヒット事例を紐解いてみようと思います。

キダルトとは
「キダルト(kidult)」は、子ども(kid)と大人(adult)を組み合わせた造語で、子どもの頃にハマっていた遊びや玩具に大人になっても興味を持ち続け、積極的に楽しむ人たちを指します。
主な年齢層は30代〜40代が中心ですが、SNSの発展もあって幅広い世代へ拡大しており、たとえばゲームやフィギュアを収集したり、キャラクターやリバイバル商品を“大人買い”するなど、趣味を深く掘り下げる姿勢と経済力が特徴です。
キダルトが注目される理由として、以下の3つが挙げられます。
- 経済力を生かした購買意欲
- SNSを通じた情報発信力・コミュニティ形成
- 多様な趣味と“懐かしさ”の掛け合わせ
玩具市場拡大の背景とキダルトの存在
少子化が進む中、日本の玩具市場規模は2023年度に初めて1兆円を超え、4年連続で成長しているとの事(一般社団法人日本玩具協会調べ)。
この結果を紐解いてみると、子どもの数が減ってもなお市場が伸びている大きな要因が、キダルト層を狙った商品開発です。
カードゲームやハイテク系トレンドトイ、ぬいぐるみのように、大人が楽しむ余地のある商品が特に伸びを牽引している傾向があり、こうした流れは玩具業界だけに限らず、お菓子や飲料、雑貨などでも同様に、「子どもの頃に親しんだ商品が大人向け仕様で復刻・リバイバルされる」ケースが増えているようです。
キダルト向けヒット商品例から学ぶ
マーケティングのヒント
ここからは、キダルト向けヒット商品をいくつか挙げ、その人気の背景と小規模ビジネスにも応用できるポイントを探ります。
シルバニアファミリー:公式アンバサダーでファンを巻き込む
かわいい動物たちと世界観でファンを魅了し続けるロングセラー商品で、公式アンバサダーによるSNS発信やファン投票で商品化する企画を展開し、「#シル活」でジオラマや手作り衣装など多彩なファン作品が拡散しています。

https://www.sylvanianfamilies.com/ja-jp/より引用
tomica PREMIUM:コレクション性を最大化
子どものおもちゃとして定番の「トミカ」を、大人向けに緻密なデザイン・塗装で再現した商品で「懐かしい」名車や限定カラーがファンの収集意欲を刺激し、公式動画での開封レビューやファン同士のコンプリート報告が盛り上がっています。

https://www.takaratomy.co.jp/products/tomica/tomicabrand/premium/より引用
フォトジェニックリカ:コミュニティを盛り上げる
「リカちゃん人形」を大人向けにアップデートし、可動式ボディやトレンド感あるデザインを採用していて、SNSでは「#リカ活」投稿が盛り上がり、公式ワークショップやファン撮影会なども開催。ファン同士や企業公式がコミュニティを作り、ファンを巻き込む施策が注目されています。

https://licca.takaratomy.co.jp/photogeniclicca/より引用
BEYBLADE X:カスタマイズ性でリピーターを生む
現代版ベーゴマ「ベイブレード」をさらに高速化し、カスタム要素を強化した商品で、公式大会に年齢制限がなく、30〜40代の大人も熱中しており、自分だけの最強コマを作る楽しみが深いファンコミュニティを形成しています。
Tamagotchi Uni:リバイバルと最新技術の融合
90年代に一世を風靡した「たまごっち」がWi-Fi機能搭載で復活し、昔遊んでいた世代が“懐かしくて新しい”商品を手に取り、親子で楽しむ姿も見られ、ネットを介して世界中の「たまごっち」と交流できる点が話題となり人気を拡大しています。

https://tamagotchi-official.com/jp/series/uni/より引用
小規模ビジネスが
キダルトマーケティングを活かすには
キダルトの存在感は玩具市場を中心に高まっていますが、その「大人の遊び心」「ノスタルジー」「SNS拡散力」は小規模ビジネスでも大いに活用可能だと考えます。
- 懐かしさと最新トレンドの掛け合わせ
ロゴやパッケージを期間限定で復刻し、SNSでバズらせる企画を打ち出すなど、レトロ要素の演出により写真映えも期待できます。 - コミュニティ&アンバサダー施策
ファン主導のSNSハッシュタグ企画やイベントを開催。上位ファンにアンバサダーを依頼し、商品開発や情報発信で連携します。 - コレクションやカスタマイズの要素を盛り込む
商品を複数セットで購入したくなる仕掛けや、組み合わせを楽しめるデザインで“自分だけ”を実現できるようにします。 - ノスタルジーに訴求するストーリーづくり
ブランド創業ストーリーや地域の歴史との掛け合わせ、昔からの常連客の思い出などをSNSで発信して共感を得ます。

“子ども心を持ち続ける大人=キダルト”を意識した仕掛けが、ビジネス拡大のヒントになるかもしれません。
かつての思い出や懐かしさを刺激する商品・サービスが、SNSを通じて話題を呼び、コミュニティを活性化させ、結果的にリピート購入や周囲への口コミ拡散につながる可能性は十分あります。
小規模ビジネスでも、ノスタルジーを上手に取り入れる発想や、ファンを楽しませるコミュニティ施策を実践することで、顧客との結びつきを強化できると考えます。
参考記事
・https://cm-marketinglab.mynavi.jp/column/cm-kidadult-case/
・https://www.advertimes.com/20250305/article491325/