「東洋インキが「artience」に社名変更 |新企業ロゴデザインが意味すること」という記事を読みました。
企業のロゴは単に美的要素ではなく、一目で企業のアイデンティティと価値を伝える力を持っている有力なビジネスツールです。
ロゴデザインは一見、簡単にできそうに思えるかもしれません。しかし、効果的な企業ロゴをデザインするのはもちろん簡単なことではなく、複雑なプロセスや、戦略的な思考と創造性が必要なのです。
今回は、デザイナーが企業ロゴを作る過程を、簡単にまとめてみました。
企業ロゴを作る前に準備すること
ロゴのデザインを始める前に、自分たちのブランドアイデンティティを深く理解し、目指すべき方向性を明確にしておくことが大切です。
ブランドアイデンティティの理解
- 価値とミッション
ロゴデザインが伝えるべき核心的なメッセージを明らかにするために、自分たちのビジネスやブランドが何を代表しているのか、そしてそれを達成するために何をすべきか、を明確にします。
- ビジョン
長期的な視点で、ブランドがどんな影響を与えたいのか、どうありたいのかを定義し、ロゴが示すべき方向性を明らかにします。
ターゲットオーディエンスの分析
- 理解と共感
企業ロゴは、ターゲットオーディエンスに共感し、魅力的に映るようデザインされる必要があります。
ブランドの主要なターゲットオーディエンスは誰か、彼らのニーズや関心事は何かを理解することが重要です。
- 市場のポジショニング
ロゴは、独自性を視覚的に強調する役割があるので、
競合他社との違いを把握し、ブランドがどのように独自のポジションを確立できるかを考えなければなりません。
この準備段階を踏むことで、ロゴデザインの方向性がより鮮明になり、デザインプロセスがスムーズに進む土台が築かれるのです。
ロゴデザインプロセスのステップ
一般的な、ロゴデザインの具体的ステップをご紹介しましょう。
ステップ1:リサーチ
ロゴデザインは、徹底的なリサーチから始めます。
ブランドが活動する市場、競合他社、ターゲットオーディエンスに関する情報を収集するのはもちろん、
インスピレーションを得るために、業界のトレンドや過去の成功事例も調査します。
ステップ2:ブレインストーミングとアイデア出し
リサーチの結果をもとに、ブレインストーミングセッション(アイデアを自由に発散させるクリエイティブな会議)を実施します。
ここで、可能な限り多くのアイデアを出し、ロゴのコンセプトを形成します。とにかく全てのアイデアを列挙して、評価は後回しです。
ステップ3:デザインの草案作成
選ばれたアイデアをもとに、初期のスケッチやデジタル草案を作成します。
このステップは、様々なデザインの方向性を試し、ブランドのメッセージを最も効果的に伝えるデザインを見つけ出すのが目標です。
ステップ4:リファインメント(改良)
フィードバックを取り入れながら、デザインを完成させていく段階です。
色、フォント、形状などの要素を調整し、最終デザインに近づけます。
この段階で、デザインの細部まで検討し、ブランドのアイデンティティに合致するように、改良を進めるのです。
ステップ5:最終デザインの完成と承認
リファインメントを経て、ロゴの最終デザインが完成すれば、関係者全員の承認を得てデザインを固め、必要に応じてさらに微調整をします。
ステップ6:ブランドガイドラインの作成
ロゴが一貫した方法で使用され、ブランドの一体感が保たれるように、ロゴの使用方法、カラーパレット、フォントスタイルなどを定めた、使用ガイドラインを含む、ブランドガイドラインを作成します。
デザインプロセスの各ステップを丁寧に実行することで、ブランドのアイデンティティを強化し、ターゲットオーディエンスに響くロゴを作成することができます。
ロゴデザインのコツ
ロゴをデザインする際に、押さえておくと良いポイントをご紹介しましょう。
- シンプルさを保つ
明瞭性: シンプルなロゴは覚えやすく、一目で識別できます。複雑なデザインは避け、メッセージをシンプルに保つことが重要です。
適応性: シンプルなロゴは、さまざまなメディアやサイズに対応しやすく、ブランドの一貫性を保つのに役立ちます。
- 記憶に残るデザイン
独自性: ロゴは他と区別できるものでなければなりません。独自のデザイン要素を取り入れることで、記憶に残りやすくなります。
関連性: ロゴはターゲットオーディエンスと共鳴するようにデザインする必要があります。ブランドのアイデンティティとターゲット市場の期待とを結びつけることが重要です。
- 時代を超越したデザイン
流行に左右されない: 流行は変わりますが、良いロゴは時代を超えて持続します。トレンドに流されすぎず、長期的な視点でデザインを考えましょう。
柔軟性: 時とともに微調整が必要になるかもしれませんが、根本的なデザインは長く使えるものであるべきです。
- 色とフォントの選択
色の心理学: 色は感情や行動に影響を与えるため、ブランドのメッセージに合った色を選ぶことは重要です。ブランドの性格を反映させる色を選びましょう。
フォントの可読性: ロゴのテキスト部分は、読みやすく、ブランドの性格に合ったフォントを選ぶ必要があります。フォントは、ブランドのトーンと一致していることが重要です。
成功したロゴデザインと失敗したロゴデザイン
ロゴのデザインをする上で、実際の事例を見ることは非常に大切です。
ここでは、特に印象的で教訓を含むロゴデザインの事例をいくつか紹介します。
Appleのロゴ
Wikipediaより引用
- デザインの概要
Appleのロゴは、シンプルながらも瞬時に識別可能なリンゴの形をしており、一部がかじられていることでユニークな特徴を持っています。 - 成功の理由
このロゴは、技術と革新の象徴として、シンプルさと親しみやすさを兼ね備えています。また、どのサイズで見ても識別可能で、さまざまなメディアに適応しやすいデザインです。 - 学べるポイント
シンプルで時代を超えたデザインは、ブランドの持続的な成長とともに、その認識を強化し続けることができます。
2010年のギャップロゴの再デザイン
BBCより引用
- デザインの変更
2010年、ギャップはロゴを現代的に再デザインしようと試みましたが、その新しいロゴは顧客からの大きな反発を受けました。 - 反発の理由
新ロゴは、ブランドの伝統や遺産から乖離していると感じられ、多くの人々に受け入れられませんでした。 - 学べる教訓
ブランドアイデンティティと顧客の期待から大きく逸脱するデザイン変更はリスクが伴います。顧客の感情とブランドの歴史を尊重することの重要性の分かりやすい例でしょう。
Wikipediaより引用
これらの事例から、ロゴデザインが単にビジュアルの問題ではなく、ブランドの全体像と深く関連しているということが分かります。
ロゴデザインをするときは、ブランドと顧客との関係を慎重に扱うことが必要です。。
今回は、ロゴデザインの考え方と作成のステップについて、簡単ですがまとめてみました。
こちらのサイト(BUSINESS INSIDER|変わり過ぎ? 大手ブランド、最も大胆なロゴ変更 16)では、様々な企業のロゴデザインの変遷を見ることができて興味深いので、よければのぞいてみてください。