年賀状離れが加速?デジタル×紙の“ハイブリッド挨拶”が生む新たな価値

2025年の「お年玉付き年賀はがき」の当選番号が発表されました。
毎年この時期、年賀状を受け取る・受け取らないで新年の挨拶を実感しやすい一方、「年賀状離れ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回は、年賀状に関するアンケート調査を参考に、年賀状離れの実態と、その背景にあるデジタル時代のコミュニケーション変化をマーケティングの視点から考察してみたいと思います。


年賀状離れの現状

フタバ株式会社が、2024年9月18日〜9月25日の期間、20〜80代以上の男女200名を対象にインターネットで行ったアンケート調査によると、今年、年賀状を出す予定がある方は約53%、出さない方が約42%、未定が約6%という結果で、昨年の結果と比べると大きな変化はなく、「出す派」と「出さない派」が半々ほど存在している状況のようです。

「出す」人の主な理由

  • 長年の習慣で続けている
  • 写真(家族や子供)を送って近況を伝えたい
  • 年賀状だけが唯一のコミュニケーション手段となっている相手がいる

「出さない」人の主な理由

  • LINEやSNSで済む
  • 切手代やはがき代が負担
  • 年末の忙しい時期に手間をかけられない
  • 周りでも出す人が減っている

また、「未定」の人は、はがき代の値上がりや“年賀状じまい”をする人の増加などを受け、出そうかやめようか迷っているという状況だったそうです。


デジタル時代における新年の挨拶方法

年賀状を出さない人に対して、「年始の挨拶はどのように行っていますか?」と尋ねた結果、最も多かったのが「LINE」(約半数)のようで、メールやSNSも多く活用されており、コストゼロ・手軽さを重視する層が増えていることがわかります。

一方で、「直接会う」人も一定数存在し、LINEやメールと併用しているという声が多くあり、電話やビデオ通話といった“声”や“表情”を伝えられるコミュニケーションも、年賀状の代替手段として活発化しているようです。

また、「そもそも年始の挨拶をしない」という方も少数ながら存在し、年賀状離れとあわせて挨拶文化そのものが薄れつつある側面もうかがえます。


年賀状じまいと年賀状文化の行方

調査によると、昨年も今年も年賀状を出していない(出さない)人の中でも、「年賀状じまいをした」と宣言している人はわずか28%程度。
多くの人は「特に宣言はしないが、自然とフェードアウトしている」か、「もらえば出すかもしれない」と曖昧に続けている印象です。

これは、年賀状を完全に廃止するほどでもないが、わざわざ出すほどの強いモチベーションもない――という層が大多数を占めていることを意味します。
「紙の年賀状文化」への情緒や名残りはまだ一定数存在するものの、コミュニケーション手段の多様化により、年賀状が絶対的な手段でなくなったことは確かなのではないでしょうか。


マーケティング視点で捉える「年賀状離れ」

セグメンテーションの変化
年賀状離れの背景には、デジタルコミュニケーションへの移行だけではなく、ライフスタイルの多様化が大きく影響していると思われ、都市部と地方、若年層とシニア世代、企業勤めとフリーランス・在宅勤務など、属性によって新年の挨拶の習慣や必要性は大きく変わってきます。
年賀状を出す・出さないの理由だけでなく、どのように挨拶するかという方法そのものが、年代や職業などの属性別に変化していると思われます。


コミュニケーションチャネルの多様化
企業や個人が「新年の挨拶」を行う際のチャネルは、近年爆発的に増えています。SNSやビデオ通話、AIを活用したチャットボットサービスなど、デジタル接点が無数にある時代になりました。
たとえば、公式SNSアカウントで年賀のご挨拶を投稿、メルマガや公式LINEでクーポン配布、オンラインイベントで年始の特別企画など、紙以外のコミュニケーション手段が浸透したことで、企業側が従来の年賀状だけにこだわる必要は薄れつつあると思われます。


マルチチャネル戦略の重要性
年賀状離れは「紙媒体の終焉」ではなく、「紙とデジタルの使い分け」が大切になることを示唆しています。
親族や昔からの取引先など、大切な相手には紙の年賀状で気持ちを丁寧に伝える、公式SNSやオンライン上ではより多くのターゲットに向けて新年のご挨拶やキャンペーンを告知するなど、相手の好みや利便性に合わせて最適なチャネルを選択することが、これからのマーケティングには欠かせないと考えます。


パーソナルタッチの価値向上
年賀状の出す・出さないが話題になる今だからこそ、手書きのメッセージや写真付き年賀状など、特別な温かみのあるやり方に価値が見いだされるケースもあります。

  • 数が減った分、“特別感”が増す
  • 普段なかなか会えない方や年配の方には、丁寧な手書きの年賀状で差別化
  • SNSでは伝わりにくい「感謝の気持ち」を伝える手段として活用

企業においても、DMやノベルティを同封した紙の年賀状をあえて少数に絞り、VIP顧客向けにパーソナルメッセージを添えるといった戦略が、ブランドロイヤルティ向上につながる可能性があります。


まだまだ侮れない「年賀状」マーケティング

年賀状の発行枚数は年々減少傾向にあると言われていますが、今年のアンケートでも出す人は5割以上、昨年は6割を超えているとの結果が出ています。
つまり、一定の数のユーザーや顧客層は、まだ紙の年賀状を大切にしているということです。

デジタル化が進む現代において、むしろ送り手の「思いやり」や「熱量」が伝わりやすいメディアの一つとも言えると思います。
新年の挨拶そのものに意義を見いだす企業や個人であれば、メールやSNSだけでなく、紙の年賀状も選択肢に入れることが、他との差別化に繋がる可能性があります。


「年賀状離れ」と聞くと「紙の挨拶が消えてしまうのでは」と不安の声もありますが、実際は新しいコミュニケーション手段との“共存”が大きな流れのようです。
何より重要なのは、相手を想う気持ちをどのように伝え、より豊かな関係を築いていくかだと思いますし、デジタルと紙媒体のベストミックスを図ることが大切だと感じています。


参考記事
・https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000132.000067791.html