ノスタルジアと消費者心理:過去の記憶が現代のマーケティングに与える影響

富士フイルムの使い捨てカメラ「写ルンです」を覚えていますか?
「エモい」写真が撮れるとのことで、デジタルカメラやスマートフォンが主流となった現在でも、若い人を中心に根強い人気を誇っているのだそうです。

https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/films/utsurundesu-simpleaceより引用

最近、ノスタルジアがマーケティングにおいて再び注目を集めています。
ノスタルジアとは、過去の思い出や経験に対する懐かしさの感情で、消費者の心理にも深く影響を与えると考えられています。
先程の「写ルンです」も、フィルムカメラのノスタルジアを活かし、若い世代にも新たな魅力として受け入れられているのだと考えます。


今回は、ノスタルジアが消費者心理に与える影響と、ノスタルジアを活用したマーケティングについてまとめます。


ノスタルジアとは何か

ノスタルジアは、過去の経験や記憶を懐かしむ感情を指します。
この言葉は、ギリシャ語の「nostos(帰郷)」と「algos(苦痛)」に由来し、元々はホームシックの意味で使われていました。
現代では、主にポジティブな感情として理解され、過去の幸福な思い出に対して感じることが多いと言われています。
心理学的には、ノスタルジアは自己肯定感を高め、ストレスを軽減する効果があるとされています。


 

ノスタルジアの種類

パーソナルノスタルジア

個人の体験に基づくもので、特定の出来事や場所、物に関連します。
例として、子供の頃に食べたお菓子や、家族で過ごした夏休みの思い出などが挙げられます。


コレクティブノスタルジア

社会や文化全体に共有される思い出に基づくもので、特定の時代や文化的現象に関連します。
例えば、昭和時代のテレビ番組や音楽、オリンピックなどが該当します。


 

ノスタルジアを活用した広告事例

森永製菓:111周年記念キャンペーン
森永製菓は、111周年記念のキャンペーンをして、長年愛され続けたミルクキャラメルを、同じく111周年を迎えた岩波書店やトンボ鉛筆とのコラボレーションにより、消費者に過去の記憶を呼び起こさせました。
昔のパッケージデザインを復刻したことで、世代を超えて愛されるブランドイメージを強化しています。

https://www.morinaga.co.jp/caramel/111th/より引用

参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000383.000019896.html


フェリシモ:ヨシフクホノカの作品展
株式会社フェリシモは、若手作家ヨシフクホノカの作品展を神戸ポートタワー展望「Gallery 360[ギャラリー サンロクマル]」で開催しています。
彼女の作品は、ノスタルジアを喚起するレトロポップなタッチで、Z世代に絶大な支持を受けています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003456.000012759.htmlより引用

メルカリ「ウチの実家」
メルカリが開催した「ウチの実家」は、平成レトロアイテム2,000点以上で構成された没入型施設で、5日間で約1,800人が来場しました。
来場者は懐かしさを感じ、実家にある不要品に価値があることに気づくきっかけとなりました。
イベントは全国に眠る不要品「かくれ資産」の価値を啓発し、最大80分待ちの行列ができるほどの人気を博し、SNSでも「エモい」体験として多くの反響がありました。


バーガーキング:復刻ロゴ
バーガーキングは、かつて使用していたレトロなロゴを復刻することで、消費者のノスタルジックな感情を刺激しました。
この戦略により、かつての顧客層だけでなく、新しい世代にもブランドの価値を再認識させました。
レトロなデザインは、安心感や信頼感を与えるだけでなく、新鮮さも兼ね備えており、消費者にとって魅力的な選択肢となりました。

https://www.ryutsuu.biz/strategy/n032548.htmlより引用

 

マーケティングへの応用

ノスタルジアのトリガーを探る
ブランドの歴史や伝統的な製品、デザインを強調することが重要です。
例えば昔ながらのパッケージや広告を復刻することで、消費者の記憶に訴えかけることができます。
また、製品自体にノスタルジックな要素を取り入れることも効果的です。


広告制作への応用
ノスタルジアを活用した広告制作では、昔の写真や映像を使用し、過去の良き時代を思い出させることが有効です。
例えば、昭和時代の家庭風景や、昔ながらの遊びのシーンを取り入れることで、消費者に懐かしさを感じさせます。
また、レトロなデザインや音楽を使用することで、より強い感情的なつながりを築くことができます。


心理的効果
ノスタルジアは、安心感や幸福感をもたらす心理的効果があり、ブランドへの愛着や信頼感を高める作用があると言われています。
消費者が過去の良い思い出を思い出すことで、そのブランドや製品に対する評価が高まります。



 

ノスタルジアの効果を最大化するためのポイント

  • ストーリーテリング
    ストーリーテリングは、消費者との感情的なつながりを深めるための強力なツールで、ブランドの歴史やユーザーの体験談を取り入れることで、消費者に共感を呼び起こし、強い絆を築くことができます。
    例として長年愛されている製品の開発秘話や、顧客からの感動的なエピソードを共有することで、ブランドの価値を高めることができます。
  • ビジュアルと音楽の効果
    昔懐かしいビジュアルや音楽を使用することで、消費者の感情を刺激します。
    例えば、昭和の雰囲気を感じさせるデザインや、懐かしいCMソングを用いることで、消費者の感情に訴えかけることが可能です。
    またレトロなフォントやカラーを使用することで、視覚的にもノスタルジックな雰囲気を演出することができます。

 

ノスタルジアマーケティングの具体的手法

レトロ商品の再発売

過去に人気だった商品を再発売することで、昔の顧客に懐かしさを感じさせると同時に、新しい世代には新鮮さを提供します。
限定版の復刻商品や、過去のデザインを再現した商品を販売することで、幅広い消費者層にアピールすることができます。


コラボレーション戦略

歴史あるブランド同士のコラボレーションは、消費者のノスタルジックな感情を引き出すための効果的な手法で、例えば、同じ時代を象徴するブランドと共同で商品を開発し、過去のデザインや要素を取り入れることで、消費者に新しい価値を提供することが可能です。


デジタルコンテンツの活用

ノスタルジアを感じさせるデジタルコンテンツの制作も重要で、例えば昔のテレビCMや広告をSNSで再公開することで、消費者の記憶を呼び起こし、ブランドへの興味を喚起することができます。
また、ノスタルジックなテーマを用いたインタラクティブなコンテンツやゲームも、消費者の関心を引き付けることができます。


顧客参加型キャンペーン

消費者自身がノスタルジアを感じる瞬間を共有できるキャンペーンを企画することも有効で、例として昔の写真や思い出のエピソードをSNSで投稿してもらうキャンペーンを実施することで、消費者とのエンゲージメントを高めることができます。


ノスタルジアを効果的に取り入れた広告やデザインは、消費者に強い共感を生み出すことで、感情的なつながりを強めることができると考えます。

自分たちが忘れてしまっている意外なものを、ターゲット世代が「懐かしい!」と感じることもあるかもしれません。
マーケティングに限ったことではなく、世代を超えた対話がビジネスのヒントになることも多いと感じます。


参考記事
https://kakakumag.com/camera/?id=19326
https://find-model.jp/insta-lab/nostalgia-marketing/