大阪・関西万博のユニフォームに見るユニフォームデザインの変遷

2025年に行われる、大阪・関西万博のボランティアのユニフォームが話題になっています。

https://www.expo2025.or.jp/news/news-20240422-03/より引用

2025年の大阪・関西万博で活動するボランティアのユニフォームが発表されました。
ボランティアは、博覧会協会が会場内で1万人、大阪府と大阪市が主要駅や空港で1万人を募集しています。
ユニフォームは会場内用と会場外用の2種類で、それぞれネービーとグレー、ネービーとイエローが基調となっています。
デザインは、大阪府出身のファッションデザイナー、コシノジュンコさんの意見を反映しています。
ユニフォームには、Tシャツ、ベスト、帽子、ポーチが含まれ、SDGsの達成に向けた取り組みを象徴するネービーが用いられています。
ユニフォームは、万博開催中は貸し出しとなり、終了後はボランティアにプレゼントされます。
また、ボランティア応募者は目標を上回り、2万2279人に達しました。応募は今月末まで続けられます。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240422/2000083834.htmlより引用・要約

個人的には1970年の大阪万博で活躍したレトロなユニフォームに惹かれるのですが、2025年の大阪万博のユニフォームも近代的で、着る人を選ばないデザインに好感が持てます。



今回はユニフォームの歴史を振り返り、時代とともに変化してきたデザインについて学びたいと思います。


ユニフォームの歴史

1. 起源と初期のユニフォーム

日本におけるユニフォームの起源は、聖徳太子の時代にまで遡るそうで、当時は冠位十二階という制度があり、黒・白・黄・赤・青・紫などの鮮やかな色を身にまとうことで身分を区別していました。
この制度は、身分制度を視覚的に表現するためのものであり、ユニフォームの初期形態と言えます。


2. 武家社会とユニフォーム

武家社会(武家が独自の権力と組織をもって行った政治的支配のことで、12世紀末の鎌倉幕府の樹立から1867年(慶応3年)の江戸幕府の終末までの約700年間)では、身分や職種によって着用する衣服が異なっており、例えば町火消しのような職業では、統一された衣服が使用され、町の人々と区別されていたのだそうです。
この時期のユニフォームは、機能性と識別性を重視したものでした。


3. 明治時代からの変化

明治以降、学校での制服が導入されるようになり、1871年にはユニフォームが洋装スタイルに変わったこともありさらに普及が進みました。
学校の制服は、教育機関における規律と統一感を象徴するものとして重要な役割を果たしました。


4. 戦後と高度経済成長期

戦時中は、皆が同じ格好をすることが重要視されましたが、戦後の高度経済成長期に入ると、ユニフォームも変化し始めました。
1960年代には、ピーコック革命と呼ばれるファッションの変革があり、メンズファッションにも鮮やかな色が取り入れられました。この時期から、ユニフォームもデザイン性が重視されるようになったのだそうです。
※ピーコック革命・・・1967年(昭和42年)アメリカの化学メーカーデュポン社が、自社製品であるカラフルな合成繊維の更なる拡販を狙い、著名な心理学者アーネスト・ディヒターを担ぎ出して行った一大プロモーションのこと。 (https://showaplayback.com/playback/150より引用)


5. バブル期から現在まで

バブル期には、デザイナーズブランドやハイブランドの影響を受けて、ユニフォームも華やかでデザイン性の高いものが多く取り入れられました。
現在では、より機能性を重視した素材や環境に配慮したデザインが増え、ユニフォームのトレンドも多様化していると言われています。


ユニフォームの文化が根付いた理由

1. 道徳教育とユニフォーム

日本では、見た目の整った服装が心の安定につながると考えられており、学校や会社でのユニフォームは、従来の道徳教育の一環として、身だしなみを整えることが重視されています。
「服装の乱れは心の乱れ」という言葉が示すように、ユニフォームは心の安定を保つための一つの手段とされています。


2. 仲間意識の形成

ユニフォームは、共通の目的を持つ仲間意識を高める役割を果たします。
全員が同じユニフォームを着ることで団結力が生まれ、組織力の向上につながると言われており、学校生活や職場において、ユニフォームは一体感を醸成する重要なアイテムだと言えます。


3. 日本人の国民性

日本人は、共通の服装によって得られる安心感や合理性を重視する傾向があり、ユニフォームは、おくゆかしさや共通の規範を大切にする日本人の国民性と深く結びついていると言われています。


魅力的な ユニフォームデザインの事例

・ドトールコーヒー

ドトールコーヒーが2012年4月にリニューアルしたユニフォームのデザインは、日本のスタイリストの第一人者である大久保篤志氏が担当しました。
ユニフォームのコンセプトは、パリのカフェの「ギャルソンスタイル」です。
伝統的なフォーマル感と清潔感を兼ね備えたデザインで、グレーのベスト、同色ストライプのシャツ、タブリエ(エプロン)の組み合わせとなっています。
使用されている生地はストレッチ性があり、シワや型崩れしにくい素材を採用しており、吸汗性や速乾性、耐摩耗性を兼ね備え、従来の制服より軽量化されています。


・Air Japan×オンワード

オンワード商事株式会社は、ANAホールディングス株式会社の国際線新ブランド、「Air Japan(エアージャパン)」の初代制服を製作しました。
従来、航空業界では男性・女性によって制服のデザインを分けることが主流でした。
今回の新制服では、多様な人材の活躍を目的に、性別を問わず、ジャケットの袖やパンツの裾の長さの調整を可能とし、自分らしく着こなせるボーダレスなデザインが採用されました。
また、植物由来原料を原材料の一部に活用しているほか、使用する制服分のみを生産し、必要以上の在庫を持たず「衣服ロス問題」に対応します。
さらに、ジャケットやボトムスなど一部をシェアアイテムとすることで、使用する資源を最小限に抑えると同時に、客室乗務員が気分に合わせて制服をセレクトすることが可能となります。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000093537.html より引用

・タカラスタンダード×篠原ともえ

文化女子短大卒で、デザイナーとしても活躍する篠原ともえさんが創業110周年を迎えた住宅設備機器メーカー・タカラスタンダードのショールームアドバイザーの制服をデザイン。新制服は、10月1日(土)より全国約800名のアドバイザーが着用する。

10年ぶりのリニューアルとなった今回は、生活に欠かせない「水」をデザインコンセプトに、ネイビーとサックスブルーを基調としたクラシカルで上品なデザインに仕上げた。アイテムは、切り替え部分の曲線で「水の流れ」を表現したカットソーやスカートをはじめ、シャツ・ジャケット・パンツ・マタニティワンピースの全6型がラインナップ。これまでになかったパンツスタイルも新たに導入し、コーディネートの幅も広がった。

また、ジャケット、パンツ、スカート、カットソーの裏地に植物由来のポリエステル、ブラウス生地の緯糸には再生ポリエステルを使用。環境にも配慮した制服となっている。

https://www.takara-standard.co.jp/brand/anniversary/110/uniform.htmlより引用

参考記事・要約:https://soen.tokyo/fashion/news/takara221003/


ユニフォームは企業や団体の理念やイメージを体現する重要な要素であり、共通の目的や価値観を共有するための強力なツールです。
個々のアイデンティティを尊重しながら、働く人のモチベーションが上がるようなデザインが魅力的だと感じます。


参考記事:
ユニフォームの文化について解説!いつの時代から存在していたのか | 会社制服・ユニフォーム 製造、販売メーカーのカーシーカシマ
ブランドやデザイナーが手がける企業制服の魅力
店舗制服・スタッフユニフォーム~有名デザイナー編~事例で学ぶ – ユニフォーム通販「e-UNIFORM」ー お役立ち情報コラム・作業着・事務服