はじめて制作会社に依頼するときには、いくつかの制作会社を探して、気になったところに見積もりを取り判断することが多くあると思いますが、実際のところ、制作費用の相場、決め方等、どのようにしているのかはっきりしていない部分があります。
また、見積もり内容についても費目も違ったり、会社毎に金額も様々で、判断基準があいまいで、結局のところどうなっているのかわからないケースがよくあると思います。
今回は相場感や、どのような費目があげられるのかをお伝えします。
不透明な制作費用
クリエイティブの業界での費目は不透明さがどうしても残るものだと思います。
印刷物等、現物として形に残るものであれば判断しやすいと思いますが、ポスターやカタログのデザイン制作やWebの構成、デザイン費用等は形として画面上でのビジュアルでしか無いため、どれくらいの費用がかかるのかいまいちピンとこないと思います。
グラフィックデザインにしても、Webデザインにしても、まだ見た目に現れているのでまだわかりやすい例かもしれません。
より不透明な作業、工数になると、印刷物の場合は入稿データ作成費用や、Webであればコーディング費用等になってきます。
デザインからさらにデータの加工が必要となるため、このような費用も算出が必要になってくるのですが、依頼側でその作業が把握できていれば問題ありませんが、できていない場合は、なぜ費用がかかるのかが理解できないと思います。
そのためには、事前にしっかりなぜ費用がかかるのかをお伝えしておくことが必要です。
このような説明等をするのが手間だったり、不要だと感じている制作会社もあり、費目にも「作業一式」としてしか表記されていなかったりします。
また、さらに不透明な費目はまだあります。企画制作費用というような内容で見積もりにあがってくることがあると思うのですが、制作ディレクターのポジションで発生する費用になることが多いかと思います。
企画構成や進行管理を行う名目になるのですが、打合せの回数や、案件の期間の長さによっても変動してくることが多い項目です。
実際、一番工数が掛かって大変なポジションでもあるのですが、依頼側へは、デザインに掛かる前の構成案や、考え方の説明、また制作を進めていくうえでの裏側での取りまとめ等になるため、作業工数がおもてに出る部分が少なく、理解しにくい面が結構あります。
制作会社の料金表
このような形の無いものへの費用については、どのように決められているのかですが、「株式会社 宣伝会議」から二年に一度発行されている「広告料金制作基準表」では、自社で料金表を作成している会社はおよそ45%、その45%の中で活用している割合は25%になります。
さらに、料金表を作成している25%の会社で料金表通りの割合は、さらに25%になっています。
このような結果から、制作会社には料金表がほとんど存在しないものとしているのが現状になります。
イメージバナーでも、おおよその費用感はありますが、明確な料金表はありません。
費用の誤解を受けやすい?
また、費用の誤解を受けやすいかどうかの点については、77%があると答えています。
上記でお伝えしたように、広告、Web等、デザイン制作において、理解しにくい部分もありますし、また修正費用や、二次使用料、さらに特急料金や深夜対応0等、不透明な項目もあるため、誤解を受けやすいと思います。
実際の費目内容については、会社毎にグロスにしていたり、細分化されていたりとバラつきがありますし、費目名も会社の体制や、作業内容、対応方法によって変わってきます。
お伝えした広告制作料金基準表の中でも費目について記載がありますが、一般的に用いられていると想定される項目をあげてみるとこんな感じです。
グラフィックデザインに関する費目形態
- 全体企画骨子(必要コンテンツの内容精査、抽出、要件定義等)、資料作成作業
- ページ内構成設計作業(ページネーション、コンテンツ整理等)
- 調査業務作業(同業・業種、競合確認、対応策等)
- 全体制作管理(内容精査、組込調整、デバック作業、訂正変更等の対応、その他制作進行業務)
- サムネール作成作業
- ラフデザイン作成作業
- デザイン作成作業
- デザイン修正作業
- カンプ費用
- ダミー作成費用
- 入稿データ作成作業
- データ修正作業
- リサイズ、調整作業
- 画像処理作業
- トレース作業
- テキストデータ入力作業
Webサイトデザインに関する費目形態
- 全体企画骨子(必要コンテンツの内容精査、抽出、要件定義等)、資料作成作業
- ページ内導線設計作業(リンク構造、コンテンツ整理等)
- 調査業務作業(キーワード抽出、同業・近接業種、ウェブサイト競合確認、対応策等)
- ページ内容構成(レイアウト図面、情報配置等)、ウェブデータの仕様策定、調整作業
- 全体制作管理(内容精査、組込調整、デバック作業、訂正変更等の対応、その他制作進行業務)
- 各ページテンプレート部分(共通項目:ヘッダー、フッター、ボタン配置等)の基礎コーディング設計、作成作業
- PC版・デザイン制作作業
- スマホ版・デザイン制作作業
- デザイン制作進行管理、状況進行作業、確認等
- バナー制作作業
- 画像制作作業
- データ修正作業
- リサイズ、調整作業
- PC版・HTML+CSS+JS制作コーディング作業
- スマホ版・HTML+CSS+JS制作コーディング作業
- HTML+CSS+JS制作コーディング進行管理、状況進行作業
- Javascript作成作業
- お問合せフォームプログラム作成構築作業一式(入力画面、確認画面、完了画面、問合せメール等)
- 更新システムプログラム設計(ヒアリング、項目抽出、管理画面構成等)
- 初期設定作業一式
- テンプレートファイル制作作業
- カスタマイズ制作 ・ 設定(プラグイン実装)作業
- 更新業務に関する対応作業(更新レクチャー、更新操作マニュアル:簡易形式)等
- データアップロード作業
Webサイト構築に関する費目形態
- Google Analytics設定業務作業(導入、コンバージョン設定、フィルタ設定、アカウント設定等)
- Google Analytics埋込コーディング作業一式
- サーチコンソール設定作業(導入、simemap.xml送信、Google Analytics連携等)
- サーチコンソール埋込コーディング作業一式
- Googleマイビジネス開設作業対応一式
- サーバー設定、FTP確認、動作チェック、アップロード、領域設定等
- データベース移設費⽤作業
- サーバ設定に関するデバッグ作業
- 投稿データ移設作業
- Google Analytics設定業務作業(導入、コンバージョン設定、フィルタ設定、アカウント設定等)
- Google Analytics埋込コーディング作業
- サーチコンソール設定作業(導入、simemap.xml送信、Google Analytics連携等)
- サーチコンソール埋込コーディング作業
- Googleマイビジネス開設作業対応
- サーバー設定、FTP確認、動作チェック、アップロード、領域設定等
- サーバ設定に関するデバッグ作業
- ドメイン取得対応作業
- サーバ契約対応作業
- SSL取得対応作業
- 保守、メンテナンス作業
原稿に関する費目形態
- キャッチフレーズ作成作業
- ボディコピー制作作業
- キャプション項目作成作業
- 原稿制作作業
- 取材対応
- リライト作業
- 翻訳対応作業
撮影に関する費目形態
- 撮影作業
- 事前準備、ロケハン対応、調整作業(撮影項目)
- 現像作業一式(撮影データ変換、色補正等調整)
- 撮影機材使用料
- 撮影カットディレクション(カット提案、現場対応等)
- 現場簡易撮影スタジオセッティング作業
映像編集に関する費目形態
- タイトル制作作業
- CG制作作業
- 編集作業
- 音声、効果音、音楽費用
- 録音作業、スタジオ録音費用
その他に関する費目形態
- リピート費用
- 転用費用
- キャンセル費用
- 特急対応費用
- 深夜対応費用
- 出力費用
- 出張作業費用
- 交通費等雑費費用
- データ管理費用
- データ素材費用
- デジタルディレクション費用
費用の明確化
おおよその費目は上記の形式になってくるかと思いますが、お客さまに合わせて、簡略化したり、より細分化して提出されると思います。
イメージバナーでもご要望に合わせて算出の記載方法は変えていますが、できるだけ誤解の無いように提出させていただき、またひとつひとつの項目に対して、どのような作業が発生するのかを、お打ち合わせ時にお伝えする等、できるだけご理解をいただくように勤めています。
工数が発生しているのか、していないのか
また、その他に関する費目形態については、状況や対応内容によりますが、基本的にはサービスで対応させていただくことが多いかと思います。
このような費用について、請求している制作会社が多いと思いますが、私自身がこのような費用を求められたときに正当な理由が無いと、必要な内容だと感じないからです。
その他の項目も、必要無い、または作業として発生していない費目について業界的に当然のように支払いを求めることがありますが、イメージバナーでは工数が発生しない限りはサービスすることにしています。(また軽度の工数の場合もサービスすることもよくあります)
参考費用の見つけ方
広告制作料金基準表では、冒頭に各費目が大きく3つに分類された費用がA、B、Cという形で掲載されています。
費用の幅が大きいための処置のようですが、都市部と地方によっても、制作会社の規模によっても、金額形態が異なるためのようで、感覚的におそらく
Aについてはフリーランスの価格帯のイメージで掲載しているような感じで、Bについては、一般的な中小企業で、在籍人数も数人〜数十人体制の制作会社、Cは大手広告代理店(電通や博報堂等)や、大手広告代理店、大手企業から依頼がある大規模な制作会社になると思います。
目安でしかなりませんが、基準にはなると思いますので、大きな書店やインターネット等から注文して、ひとつの参考にしてもらいながら制作会社と、交渉、取引すると進めやすくなると思います。
費用の差は1000%にも
A〜Cの金額の開きですが、項目内容によって様々ですが、開きがあるものでは、AとCは500%〜1000%以上あります。
例えばロゴマークのデザインを単発で発注した場合、Aが5万円だとするとCになった場合50万円になり、かなりの差がでてきます。
スーパーで食品や商品を購入する場合、こんなに差がでるものはほとんど無いと思います。玉子1パック198円が1,980円にもなります。
なぜこのような制作費用の差がでてくるのか謎だと思いますが、やはり一流のクリエイターが揃って、企画やデザイン、コピーや撮影等、諸々全てにおいて完成度が変わります。
ただ、実際に手を動かすクリエイターは一流の方もいれば、私たちのような中小の制作会社が下請けとして進めることもあり、BとCの差は、何か政治的なからみか、何かあったときの責任の所在を求められたときに対応できるのかどうか、また莫大な広告予算をしっかり管理して責任が取れるのかどうか、あとは人脈になると思います。
そこに必要性が無ければ、AでもBでも変わらないこともありますし、Aのフリーランスの方に依頼したほうが親密にコミニュケーションが取れて完成度や、持続的な関係性が保てて、一番効果があり、メリットが生まれることもでてきます。
マージンの割合
あともうひとつはマージンです。
大きな仕事になればなるほど増え、大きな費用になったとしても割とどんぶり勘定だったりします。
街で見かける誰もが知っている広告を多く手がけている制作会社の方のお話しを聞いたのですが、費用があって無いようなもので、感覚で決めているとのことでした。
広告制作料金基準表を見ても、Cのような価格帯は理解できるところもあれば、うなってしまう部分もあります。
私も実際に大手広告代理店とお仕事をさせてもらいましたが、会社が大きくなる理由が理解できてきます。
イメージバナーの制作費用
イメージバナーでは、現在100%直取引でお客さまとお仕事を進めさせてもらっています。
余計な費用をかけたくない思いもありますし、お客さまと親密に連携しながら、クリエイティブ業務をしっかりお客さまのもとで効果を発揮したいと考えているからです。
そのためにも費用はお客さまからの、ひとつの選択基準になると思います。
イメージバナーの費用形態は、料金表はありませんが、上記でお伝えしたAとBの中間を意識して、いつも算出しています。
正直なところ、Aのフリーランスの費用では厳しい部分があります。
理由としては、専任チーム体制で業務を細分化してクオリティと、対応できる範囲、またトラブルがあった際の対応、アフターサポートのことも含めて考えると、どうしてもフリーランスの価格帯で対応は難しいのが実情です。
ただ、Bの中小の制作会社に比べると、全体の制作費用は抑えるように調整しており、意味の無い費目をいただくことはありませんし、また営業の存在も無く、各クリエイターのハブとして機能しているので、余計な家賃や人件費がありません。
そのため、AとBの間のポジションですみ分けをおこない、ここの領域でお客さまから依頼をお受けしている状況です。
クリエイティブ業務の制作費用は、わかりにくく、目に届きにくい内容が多いため、予算を取ったり、判断がしにくかったりしますが、制作会社の見積もりから、どのような作業や工数が発生するのか、確認しながら、理解を深めてもらえると判断しやすいかと思います。