パケ買いの心理とトレンド:消費者がデザインに惹かれる理由

東京都中央区銀座にある資生堂ギャラリーで「オドル ココロ」展が2024年8月4日まで開催しているそうです。

https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/6707/より引用

200点以上の商品と70点の広告が展示され、明治から現代までのパッケージデザインや広告デザインの歴史を通じて、資生堂のクリエイティブな取り組みを紹介しているそうです。


最近は「パケ買い」という言葉を耳にします。

「限定のパッケージだからつい買っちゃった」
「おもしろいデザインだったから家族や友達に見せたくて購入を決めた」
といった経験を持つ方も多いのではないでしょうか?


特にコスメ業界では、「パケ買いコスメ」という言葉があるほど、パッケージデザインが購入の決め手となることがあると言われています。

実際に、EMMEが行った調査によると、約半数(50%)の美容関心ユーザーが「パケ買い」を経験しており、また、パッケージがきっかけで初めてその商品を知ったことがある人が7割を超えることがわかったそうです。


今回は、コスメのパッケージデザインが消費者心理に与える影響や効果、デザインのポイントについてまとめてみたいと考えます。


パケ買いとは何か

パケ買いとは、商品の中身よりもパッケージデザインに魅力を感じて購入する行動を指します。
たとえば、お菓子のパッケージがかわいくて手に取ったり、化粧品のデザインが美しくて購入を決めたりする経験は、多くの人にとって身近なものだと言えそうです。
パッケージデザインは単なる包装ではなく、商品の魅力を引き出し、価値を高める役割を持っていると言われています。
市場があらゆる製品で溢れる現代において、消費者の目を引くデザインは非常に重要だと考えられ、また、視覚的な魅力が購買意欲を左右することが多いと考えます。


パケ買いが起こりやすい商品ジャンル

パケ買いが特に起こりやすいジャンルとしては、以下の3つが挙げられます。

食品・飲料

お菓子やアルコール飲料など、嗜好品は特にパケ買いが多いジャンルです。
頻繁に購入する機会があり、商品単価が低いため、見た目に惹かれて購入することが多いです。

化粧品

コスメはパケ買いの代表格です。
デザインが美しいと、それだけで購買意欲が高まります。
メイクをするときのモチベーションを上げるという要素もあるようです。

雑貨

日常的に使用する雑貨類も、見た目が重要な要素です。
おしゃれで可愛らしいデザインは、インテリアとしても映えるため、つい手に取ってしまうことが多いジャンルです。


パッケージデザインの影響と効果

パッケージデザインは、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。

視覚的な魅力

パッケージデザインは、消費者の目を引き、商品に対する初見の印象を形成します。
視覚的な要素は、色彩、形状、イラストなど、多岐にわたります。
これらが組み合わさることで、消費者に「欲しい」と思わせる力を持つと言われています。

ブランドの認知度向上

一貫したデザインは、ブランドのアイデンティティを確立し、消費者に記憶されやすくなります。
例えば、有名なロゴや独特の色使いは、商品を見ただけでブランドを思い起こさせる効果があると言われています。

情報提供

パッケージは、商品の特徴やメリットを伝える重要な役割も果たします。
消費者が商品を選ぶ際、パッケージに記載された情報を参考にすることが多いです。
例えば、成分、使用方法、保存方法などが明確に記載されていると、消費者は安心して購入できますし、また、ブランドの信頼感が高まると言われています。


最近のパッケージデザインの傾向

パッケージデザインのトレンドは常に進化しており、消費者の嗜好や市場の変化に応じて変わっていくと考えられます。
特にコスメ業界では、視覚的な魅力やブランドの個性が重要視されるようです。

ミニマリズム

シンプルで洗練されたデザインは、視覚的に心地よく、消費者に清潔感や高級感を与えると言われています。
余分な装飾を排除し、必要最低限の情報のみを提供することで、製品そのものの品質やブランド価値を強調します。

サステナビリティ

環境に配慮したデザインは、現代の消費者にとって重要な要素です。
リサイクル可能な素材や再利用可能なパッケージを採用することで、エコ意識の高い消費者にアピールできると言えそうです。

レトロ・ヴィンテージ

懐かしさを感じさせるレトロやヴィンテージデザインは、多くの消費者に親近感を与えると言われています。
過去のデザイン要素を取り入れながら、現代風にアレンジしたデザインは、ストーリー性を持たせやすく、ブランドの歴史や伝統を強調するのにも適しています。

手描きイラストやカリグラフィー

手描きのイラストやカリグラフィーを取り入れたデザインは、温かみと人間味を感じさせます。
これにより、消費者は商品の製作者とのつながりを感じ、より親しみやすい印象を受けると言えそうです。

キャラクターコラボ

好きなキャラクターとコラボしていれば、真っ先に目に留まるということが「パケ買い」への態度変容に繋がっていると言われています。
例えば、ディズニーやサンリオなどの人気キャラクターとコラボしたコスメは、消費者に強くアピールし、購買意欲を刺激します。
特に若年層の消費者に人気が高く、SNSでの拡散効果も期待できると考えられます。

ジェンダーレスデザイン

ジェンダーレスデザインは、性別に関係なく使いやすいデザインを目指すアプローチです。
従来の性別に基づく色や形の固定概念を取り払い、誰もが手に取りやすいシンプルかつユニバーサルなデザインは、ブランドの多様性と包容力を示す重要な要素となっているそうです。

動的・インタラクティブなデザイン

デジタル技術の進化により、パッケージデザインにAR(拡張現実)やQRコードなどを組み込む事例が増えています。
消費者がスマートフォンでパッケージをスキャンすることで、追加情報や特典にアクセスできるなど、インタラクティブな体験を提供することができます。

カスタマイズ可能なデザイン

消費者が自分だけのオリジナルパッケージを作成できるカスタマイズサービスも人気です。
例えば、名前やメッセージを入れられるラベルなど、個々の消費者に合わせた特別な体験を提供することで、ブランドへの愛着を深める効果があると考えられます。


実際の事例紹介

コスメパッケージデザインの事例をいくつか紹介します。

資生堂:「BAUM」

「BAUM」は「樹木との共生」をテーマに掲げるスキン&マインドケアブランドです。
製品パッケージには家具の製造過程で出た木材を再利用し、植樹活動を行うことで、環境保護とサステナビリティに貢献しています。
環境に優しい素材を使いながらも、高いデザイン性と使いやすさを両立しており、優れたパッケージデザインを表彰する日本パッケージデザイン大賞2023で大賞を受賞しました。

https://www.baumjapan.com/baum/index.htmlより引用


コーセー:「FASIO(ファシオ)」

コーセーが展開するコスメブランド「FASIO(ファシオ)」は、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」とのコラボパッケージを発売しました。
特に「エアリーステイ BB ティント UV」は、ぬりかべを模したユニークなデザインでSNSで大きな話題となり、ブランド認知度を高めました。
この企画は、アニメファンやコレクター層を新たなターゲットとして取り込み、バイラルマーケティング効果を生み出しました。
また、「妖怪撃退」と「メイク崩れ撃退」という一貫したテーマが製品の魅力を強調し、限定性が購買意欲を高めています。

https://www.kose.co.jp/fasio/より引用
参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000567.000041232.html


PAUL & JOE:「CAT DAY COLLECTION」

ポール&ジョーは、2月22日の『猫の日』を記念して、ブランドアイコンのジプシーとヌネットをフィーチャーした限定デザイン「CAT DAY COLLECTION」を発売しました。
この企画は、猫好きの消費者にアピールし、季節限定の特別感を提供することで購買意欲を刺激しています。
リップスティック以外にも、コスメやルームウェア、ステーショナリーなど多様な商品ラインアップで、幅広い顧客層にアプローチをしており、SNSでの話題性やギフト需要も見込んだ企画になっています。

https://www.paul-joe-beaute.com/pages/2024-cat-day-collectionより引用


パッケージデザインのポイント

パッケージデザインを改善し、パケ買いを促進するためには、いくつかの重要なポイントがあると言えます。

ターゲットオーディエンスの理解

デザインを行う際には、ターゲットオーディエンスを明確に理解することが重要です。
どのような年齢層やライフスタイルを持つ人々が商品を購入するのかを把握し、その嗜好やニーズに合ったデザインを作成することが求められます。

ブランドの一貫性を保つ

ブランドの一貫性を保つことは、消費者に対する信頼感を高めるために重要です。
ロゴ、カラー、フォントなど、ブランドの基本要素を統一し、パッケージ全体に反映させることで、ブランドの認知度を向上させます。

他の商品との差別化

消費者の目を引くためには、ユニークで印象的なデザインが必要です。
色使いや形状、イラストなどで工夫し、競合他社との差別化を図ります。
素材や形状、キャッチコピーや商品名を工夫し、消費者の記憶に残りやすい要素を追加することが効果的です。

情報の明確な表示

パッケージには、商品の特徴や使用方法、成分情報などを明確に記載することが重要です。
消費者が商品を選ぶ際に必要な情報を簡単に見つけられるようにし、安心して購入できるように配慮します。
特に化粧品では、成分情報や使用方法が消費者の購買決定に影響を与えるため、視覚的に分かりやすく配置することが重要です。

環境に配慮した素材の使用

環境意識が高まる中で、リサイクル可能な素材や再利用可能なパッケージを採用することは、消費者に好印象を与えると言われています。
エコフレンドリーなパッケージは、ブランドの社会的責任を示し、消費者の信頼を得る手助けとなります。

利便性の向上

パッケージデザインは見た目を良くするだけでなく、利便性を高める役割も果たします。
耐久性が高く、使いやすい設計が求められます。開けやすさ、取り出しやすさ、持ち運びやすさといった点にも注意を払うことが大切です。

ジェンダーレスデザインの採用

ジェンダーレスデザインを取り入れることで、性別に関係なく使いやすいデザインを実現できます。
ユニバーサルなデザインは、多様な消費者層にアピールしやすく、ブランドの包容力を示すことができると言えそうです。

インタラクティブなデザインの導入

デジタル技術を活用し、インタラクティブなデザインを取り入れることで、消費者に新しい体験を提供できます。
例えば、QRコードやAR技術をパッケージに組み込むことで、消費者がスマートフォンを使って追加情報や特典にアクセスできるようにすることが可能です。


パッケージデザインは、コスメだけでなく、さまざまな業界や商品に応用ができると言えます。
目を引くデザインは多くの商品の中で差別化を図り、商品を知ってもらうきっかけ作りとして有効な方法だと考えます。


参考記事
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000039874.html
https://www.kenbunsya.jp/commusapu/design/7079/