夕方のスーパーに行くと、値引きされている商品が目につきます。
それを買いに行ったわけじゃないのに、ついつい手に取ってしまい、
気が付けば買ってしまっていたことが何度もあります。
この無意識に「損をしたくない」と思って行動してしまうことを説明するのが「プロスペクト理論」です。
この理論は広告制作やマーケティングで広く活用されており、小規模ビジネスにも活用することができそうです。
そこで今回は、この「プロスペクト理論」について、考えてみたいと思います。
プロスペクト理論の基本原則
まずプロスペクト理論の基本原則を整理してみましょう。
プロスペクト理論の基礎を形成しているのは、以下の3つの原則とされています。
- 損失回避
人は得るものよりも失うものに対して過敏に反応するため、
同じ金額の損失と利益を比較した場合、損失の方が強い不快感を引き起こすとされています。
この「損失回避」の原則は、消費者がリスクを回避する傾向があることを意味し、例えば、保証サービスや返金保証が付いた商品の方が、消費者にとって魅力的に映るのは、この原則に基づいているからなのです。 - 参照点
プロスペクト理論では、意思決定は、ある「参照点」に対して相対的に行われると考えます。
つまり、同じ利益でも、現在の状況や期待によってその価値は変わるので、人は現状を基準として、それからの利得や損失を評価するのです。
この理論をマーケティングに応用する場合、消費者の現在の満足度や期待を把握し、それを超える価値を提供することが重要になります。 - 価値関数
価値関数とは「人が感じる満足度が、実際の利益や損失の大きさとは異なる速度で変化する」ことを表しています。
具体的に言うと、人は少しの損失は非常に大きく感じられるが、損失の額が大きくなっても、感じ方はそこまで大きく変わらず、
逆に、小さな割引や特典でも、消費者の満足感は大きく向上するということになります。
例えば、300円のコーヒーが50円引きになっただけでも、私たちは大きな満足を感じる傾向があります。小さな利益がもたらす満足度と、比較的大きな利益を得た時の満足度は、比例の大きさに正比例しません。
これらの原則を理解して、広告制作やWebデザインに適用すれば、消費者の意思決定プロセスに効果的に影響を与えることが可能になります。
広告制作における応用例
プロスペクト理論が実際の広告キャンペーンやデザインに適用される事例を、いくつか紹介しましょう。
- 限定オファーを強調する
「損失回避」の原則に基づき、限定オファーやタイムセールを強調する広告は、消費者に「今買わなければ損をする」という感覚を抱かせ、購買意欲を促します。
例えば、「今日限りの特別割引」という文言は、消費者に行動を促す強い動機付けとなるのです。 - 「もしも」のシナリオを提示する
参照点の原則を利用して、消費者が現在持っているものと、持っていないものとの間にある「ギャップ」を強調します。
例えば広告で、「もしもこのサービスを使っていたら、こんなに便利な生活が手に入る」といったシナリオを提示することで、消費者は自分が持っていないものへの渇望を強く感じるようになるでしょう。 - 小さな特典を付加する
消費者が感じる満足度は、価値関数に基づいて、提供される利益の絶対量よりも、相対的な感覚によって大きく左右されるため、購入時に小さな特典や割引を提供することで、消費者の満足度を大幅に高めることができるのです。
例えば、次回使える少額のクーポンをプレゼントすることで、顧客のリピート率を上げることが期待できます。
こういった応用例は、プロスペクト理論の原則を実際の広告戦略に適用する際の参考になります。
プロスペクト理論を活用する際のポイント
プロスペクト理論を自社の広告やウェブサイト制作に応用する際のポイントとして、一般的に以下のようなことが挙げられています。
- 「損失」よりも「得」を強調する
消費者が損失を避けたいという心理を利用して、製品やサービスが提供する「得」を強調するのです。
例えば、製品の特長を紹介する際に、「〜を使わないと失う大切なもの」という観点からアプローチすると、消費者の関心を引きやすくなります。 - 参照点を設定する
消費者の現在の状態や期待値を上手く設定することで、製品やサービスの価値を相対的に高めることができます。
例えば、競合他社の製品と比較して自社製品の優位性を明確に示すことで、消費者の参照点を操作し、自社製品の価値を高めることが可能です。 - 小さなインセンティブを提供する
価値関数の原理に基づいて、消費者に小さなインセンティブを提供することで、大きな満足感を生み出し、購入意欲を促すことができます。
例えば、購入後のレビュー投稿で次回購入時に使用できる割引クーポンを提供すれば、顧客の関与度を高め、再購入へとつなげることができるでしょう。
これらのポイントを実践すれば、消費者の意思決定プロセスに積極的に関与し、消費者の行動を望む方向に導くことが可能になると考えられています。
今回は「プロスペクト理論」についてご紹介しましたが、
誠実な姿勢で、効果的に自社の広告・マーケティング戦略に取り入れることが大切だと感じました。
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