企業や商品には、長い歴史の中で一度は「リブランディング」の必要性が出てくることがあります。
しかし、「リブランディング」と聞くと、ロゴやパッケージを新しくするイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。
実際には、リブランディングとは単に見た目を変えるだけではなく、ブランドの在り方そのものを再考するプロセスです。
今回は、リブランディングの意味やその手法、具体的な成功事例についてまとめます。
リブランディングとは?
リブランディングの定義と目的
リブランディングとは、文字通り「ブランドを再構築すること」を指します。
通常、リブランディングは以下のような目的で行われます。
- 売上の低下に歯止めをかける
- ターゲット層を広げる、または変える
- ブランドが時代のトレンドや社会的な変化に合わなくなっているとき
- 経営方針や企業ビジョンに変化があったとき
一方で、リブランディングは単に「パッケージやロゴを変える」だけではありません。
ブランドの「見た目」を刷新することも大事ですが、リブランディングの本質はブランドの使命(ミッション)や価値(バリュー)そのものを見つめ直し、世の中に対するあり方を再定義することです。
リブランディングと単なるパッケージ変更との違い
「売上が下がった商品を新しいデザインのパッケージにしてみよう」といった変更は、リブランディングとは少し異なります。
このような単なる見た目の変更では、ブランドの本質には触れていません。そのため、新しいデザインが話題を呼んだとしても、売上アップが一時的なものに留まってしまうことが多いです。
リブランディングとは、商品の「外側」だけでなく、ブランドが提供する価値や顧客に約束すること、その「内側」から変えるプロセスと考えるとわかりやすいと思われます。
リブランディングの成功のためのポイント
ブランドの核(Why)と、変えても良い部分(How・What)を区別する
リブランディングの成功のためには、ブランドの核となる「変えてはいけない部分」と「変えても良い部分」を区別することが重要です。
リブランディングの成功に必要なのは、ブランドの核、つまりブランドが存在する理由(Why)を守りつつ、それを実現する方法(How)や具体的な製品・サービス(What)を時代に合わせて柔軟に変えることです。
ゴールデンサークル理論を活用してみる
ここで役立つのが、「ゴールデンサークル理論」です。
ゴールデンサークル理論は、ブランドの価値を「Why(なぜ存在するか)」「How(どのように実現するか)」「What(何を提供するか)」の三つに分けて考える理論です。
- Why(なぜ):ブランドの核である使命・目的
- How(どうやって):使命を達成するための方法
- What(何を):具体的に提供する製品やサービス
リブランディングでは、Whyを軸にHowやWhatを変化させることで、ブランドの核を失わずに、新たな時代に適応できるブランドへと成長させることができます。
リブランディングのプロセス
リブランディングのプロセスは、以下の3つのフェーズに分けるとわかりやすくなります。
フェーズ1:分析(現状分析とプロジェクトチームの構築)
リブランディングを行うにあたって最初に必要なのは、ブランドが現在どのような状況にあり、どこが問題となっているのかをしっかりと分析することです。
プロジェクトチームを編成し、社内外からの意見を集めて「現在のブランドの課題」を洗い出していきます。
フェーズ2:戦略立案(目標設定とギャップ分析)
次に、目指すブランドの未来像と現状のギャップを埋めるための戦略を立案します。
具体的には、SWOT分析や競合分析などのフレームワークを用いて、「新しいブランドのイメージ」を形作るために必要なリソースや施策を明確にします。
フェーズ3:浸透(内部と外部へのアプローチ)
最後のフェーズは、リブランディングを社内外に浸透させることです。
まずは内部(社内や取引先)に向けてブランドのビジョンや価値を共有し、社員全員が同じ方向に進むようにします。
その後、外部(顧客や一般消費者)に向けてブランドメッセージや新たなロゴなどを一貫して伝えていきます。
リブランディングの成功と失敗
成功の判断基準と測定期間
リブランディングの成功を判断するためには、一定の期間が必要です。
リブランディング直後に売上が一時的に下がることもありますが、短期的なデータだけで判断せず、長期的な視点で効果を測定することが大切です。
具体的には、以下のような指標で効果を測ることが有効です。
- 顧客満足度やロイヤリティの向上
- 新ターゲット層への認知拡大
- 社内の一致したブランド理解の度合い
ブランドパートナー(新ターゲット層)からのフィードバックの活用
ブランドパートナーとは、新しいブランドの主要なターゲットとなる顧客層のことです。
この層に対してアンケートやインタビューを行い、リブランディングによってどのような変化が生まれたかを調査することが有効です。
彼らの意見がポジティブであれば、そのリブランディングは成功といえると考えます。
失敗例に学ぶ「変えてはいけないポイント」
リブランディングの失敗事例として、アパレルブランドGapの例が挙げられます。
新しいロゴデザインが消費者に不評で、結局元のデザインに戻した事例です。
ブランドの核やアイデンティティを軽視した変更は、ブランドイメージを損なうリスクがあるため注意が必要です。
リブランディングの成功事例
マツダ
1990年代、不況期に販売不振を打開するためリブランディングに踏み切りました。
マツダは「ナンバーワンブランド」ではなく「オンリーワンブランド」を掲げ、独自のターゲットに向けたブランド価値を構築し、見事に立て直しに成功しました。
レッドブル
1980年代、清涼飲料市場に参入したレッドブルは、スポーツイベントのスポンサーシップなどを通じてエナジードリンクのイメージを刷新しました。
若者に愛されるアクティブなブランドとして独自のポジションを確立し、現在もその人気は続いています。
湖池屋
日本のお菓子メーカー「湖池屋」は、新社長就任を機に「KOIKEYA PRIDE POTATO」という新ブランドを打ち出しました。
社内の意識改革を含むリブランディングによって商品のヒットを生み出し、社内の活性化にもつながりました。
リブランディングは一度行えば完了するものではありません。ブランドは、時代や顧客の変化に合わせて少しずつチューニングを行いながら成長させていくことが重要です。
リブランディングを成功させるためには、ブランドの核(Why)を守りつつ、周囲の状況に合わせた柔軟な変更(How・What)を続けることが求められます。
リブランディングを正しく行い、ブランドが社会に与える価値や影響を継続的に高めていくことが、企業や商品が長く愛され続ける秘訣だと考えます。
参考記事
・https://prdx.co.jp/visions-prdx/rebranding/
・https://www.m-keiei.jp/musashinocolumn/rebranding/