近年、新たな広告や販促手法として「リテールメディア」に関心が高まっています。
リテールメディアは、小売業が運営する新しいメディア媒体のことで、Amazonやウォルマートなどの海外の小売業では、この手法を活用して大きな広告収入を得ているそうですし、アメリカではリテールメディアが広告市場全体の約2割を占めるとも言われています。
こうした成功事例が日本のリテール業界からも注目を集めており、日本の企業でもリテールメディアの導入が進んでいるそうです。
今回は、今話題のリテールメディアについて学んでみたいと思います。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売業者が自らの顧客データを活用し、自社のメディア(Webサイト、アプリケーション、店舗内デジタルサイネージなど)を通じて広告を配信する仕組みを指します。
この手法は、より適切なターゲティングが可能であることに加え、広告代理店を通さないためコストを抑えることができる点が特長ですし、小売業が広告収入による新たな収益経路を得ることもできると言われています。
リテールメディアの基本的な構成要素
- ファーストパーティーデータ(1st Party Data)の活用
小売業者が自社の顧客データ(購入履歴、閲覧履歴など)を分析し、ターゲティング広告を配信します。- 注釈: 「ファーストパーティーデータ」とは、小売業者が自社の販売活動で得た顧客データのこと
- 注釈: 「ファーストパーティーデータ」とは、小売業者が自社の販売活動で得た顧客データのこと
- 自社メディアの利用
小売業者のWebサイトやアプリケーション、店舗内デジタルサイネージを活用して広告を配信します。
これにより、広告代理店を介さずにコストを抑えながら効果的なマーケティングが可能です。 - ターゲティングの精度
顧客の購買パターンや嗜好に基づいた広告配信が可能です。
例えば、特定の商品を頻繁に購入する顧客に対して、関連商品のクーポンを配布するなど、個々の顧客に合わせたアプローチができます。
オンラインとオフラインの
リテールメディアの違い
- オンラインリテールメディア
Webサイトやアプリケーション上での広告配信ですし、顧客のオンライン行動データを活用して、より精緻なターゲティングが可能だと言われています。 - オフラインリテールメディア
店舗内デジタルサイネージや紙媒体での広告配信です。店舗内での購買行動をリアルタイムで捉え、その場での購買促進を図ることができます。
リテールメディアが注目される背景
消費者行動の変化
インターネットやスマートフォンの普及により、オンラインショッピングが一般的となり、消費者は自宅や外出先から簡単に商品を購入できるようになりました。
経済産業省の調査によると、2021年の国内EC市場(BtoC)は20兆6,950億円に達し、2013年の倍近い規模となっているそうです。
このような環境変化により、リテール企業はオンラインとオフラインの両方で効果的に顧客にアプローチする必要があると考えます。
参考資料:経済産業省 令和3年度 電子商取引に関する市場調査 2022/8/12
デジタル化の進展
デジタル技術の進展は、リテールメディアの普及を後押ししていますし、ビッグデータ解析やAI(人工知能)技術の進化により、膨大な顧客データを効率的に分析し、個別のニーズに合わせた広告配信が可能となりました。
例えば、顧客の過去の購買履歴を分析することで、次に購入する可能性の高い商品を予測し、その商品に関する広告を配信することができると言われています。
プライバシー保護の強化
プライバシー保護の強化も、リテールメディアが注目される一因です。
従来の広告手法では、「サードパーティCookie(3rd Party Cookie)」(第三者のサイトから収集された顧客データ)を利用してターゲティング広告が行われていました。
しかし、プライバシー保護の観点から、この手法は見直されつつあります。
Google Chromeは2024年後半を目途にサードパーティCookieのサポートを終了すると発表しており、このような状況下では、自社の販売活動で得たファーストパーティーデータ(自社の顧客データ)を活用することがますます重要となると言われています。
市場動向
リテールメディアの市場規模は年々増加しており、株式会社CARTA HOLDINGSの調査によれば、リテールメディアの広告市場は2023年に245億円、2026年には805億円に達する見込みと言われています。
参考: https://cartaholdings.co.jp/news/20231225_1/
リテールメディアのメリット
広告主にとってのメリット
- ターゲティングの精度向上:
リテールメディアは、小売業者が保有する1st Party Dataを活用するため、顧客の購買履歴や行動パターンに基づいた精度の高いターゲティングが可能です。
これにより、広告主は特定の顧客層に対して、より効果的な広告を配信できると考えます。 - 費用対効果の向上
従来の広告手法に比べて、リテールメディアは広告代理店を介さないため、コストを抑えることができます。
また、ターゲティングの精度が高まることで、広告の無駄打ちが減り、費用対効果が向上するそうです。 - ブランドエンゲージメントの強化
顧客との接点を増やすことで、ブランドへのエンゲージメント(関与度)を強化できます。
例えば、店頭でのデジタルサイネージやアプリ内の広告を通じて、顧客に新商品の情報やプロモーションをタイムリーに届けることができます。
リテール企業にとってのメリット
- 収益の多様化
リテールメディアを活用することで、新たな収益源を確保できます。
例えば、店舗内やWebサイト上の広告枠を外部の広告主に販売することで、追加の収益を得ることができます。 - 顧客エンゲージメントの向上
自社の顧客データを活用して、パーソナライズされた広告やコンテンツを提供することで、顧客との関係を強化できます。
これにより、顧客の継続的な支持が得られ、リピート購入を促進することができると考えます。 - マーケティング戦略の強化
顧客データを活用することで、より精緻なマーケティング戦略を立てることができます。
例えば、過去の購買履歴をもとに、季節ごとのおすすめ商品を提案するなど、顧客の購買行動に合わせたマーケティングが可能だと言われています。
リテールメディアの活用事例
日本でもリテールメディアの活用が進んでいます。いくつか事例を紹介します。
イオン
イオンリテールは、公式アプリ「イオンお買物アプリ」を中心にリテールメディアを展開し、顧客ロイヤルティと売上を向上させています。
アプリを通じてクーポン配信やキャンペーンを実施し、顧客データと店舗の購買データを連携して分析することで、パーソナライズされたマーケティングを実現しているそうです。
ファミリーマート
コンビニ大手のファミリーマートは、店舗に42〜65インチの大型スクリーンを3連結したデジタルサイネージ「FamilyMartVision」を設置し、広告映像を配信する“店舗のメディア化”を進めています。
店舗での実購買データと照合することでオフラインでの広告効果を可視化しており、2024年3月には合計10,000店への設置を達成したそうです。
リテールメディアを継続的に活用していくには、個人情報を安全に扱い、信頼を守ることや、お店に合った広告を適切なタイミングで表示するなど、ユーザーに安心して利用してもらえる環境を作ることが大切だと考えます。
ユーザー、広告主、小売店が互いに理解し合い信頼を築いていくことで、リテールメディアを効果的に活用することが可能と考えます。
参考記事
https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202306/what-is-retailmedia/