リテールメディアは、昨今のマーケティング業界で急成長中の分野です。
特に海外の小売業界で注目されており、日本でもスーパーマーケットやドラッグストアなどで導入が進みつつあります。
しかし、一般にはまだ十分に知られていないこともあり、「リテールメディアとは何か?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
今回は、リテールメディアの基礎知識から、そのメリット、活用事例、そして導入するためのステップについてまとめます。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売業者(スーパー、ドラッグストア、ECサイト運営者など)が自社で提供する広告媒体のことです。
リテールメディアには、オンラインとオフラインの両方の形式があり、例えば以下のようなものが該当します。
リテールメディアの例
- オンラインメディア:ECサイト内の広告枠、専用アプリでの広告配信
- オフラインメディア:店舗内のデジタルサイネージ、ポップアップ広告、POPディスプレイなど
リテールメディアの特徴
リテールメディアの大きな特徴は、小売業者が自社で収集した1st Partyデータ(購買データ、会員情報、利用履歴など)を活用し、より正確なターゲティングが可能なことです。
これにより、広告主であるメーカーやブランドは、消費者にリーチしやすくなり、購買に直結しやすい訴求ができます。
リテールメディアを用いた広告配信は、商品購入直前の消費者の行動を刺激できるため、効果的なプロモーション手法として注目されています。
リテールメディアが注目される背景
海外での普及と日本での成長の可能性
リテールメディアは、アメリカやヨーロッパを中心に急速に普及しています。
たとえば、アメリカでは2022年のリテールメディア市場規模が6兆円を超え、日本でもこの数年で成長が期待されています。
日本では、まだ利用されている事例は限られますが、広告収益の増加や、デジタルマーケティングの重要性が高まる中で導入する企業が増えてきました。
プライバシー保護の規制強化と1st Partyデータの重要性
3rd Party Cookie(外部データを用いたターゲティング広告)の規制が進む中、リテールメディアにおける1st Partyデータの価値が高まっています。
小売業者が持つ1st Partyデータは、自社で収集したデータであり、顧客のプライバシーを尊重しながらターゲティング広告を行える点で、今後のデジタル広告の主流になると予測されています。
リテールDXの進展
リテールDX(デジタル技術を活用した小売業の業務変革)もリテールメディアが注目される背景の一つです。
IoT技術やデジタルサイネージなどが進化したことで、データ収集や分析が容易になり、リテールメディアを通じて顧客体験を向上させる土台が整っています。
リテールメディアのメリット
メーカー(広告主)にとってのメリット
- ターゲティングの精度向上:1st Partyデータを用いた広告配信により、購買行動に基づいたターゲティングが可能です。
- 広告効果の検証:顧客の購入データや来店データに基づき、広告効果を具体的に測定でき、改善を行いやすい点が魅力です。
小売・流通・EC事業者にとってのメリット
- 広告収益の増加:保有するメディアを活用することで、新たな収益源を確保できます。
- 顧客体験の向上:顧客に関連性の高い情報を提供することで、買い物体験が向上し、顧客満足度の向上につながります。
消費者にとってのメリット
- タイムリーな情報提供:自分に興味のある商品やサービスについて、適切なタイミングで情報が提供されるため、買い物がより楽しくなります。
- 購買体験の価値向上:不要な広告が減ることで、購買体験がスムーズになり、欲しい情報にすぐにアクセスできます。
リテールメディアの種類と特徴
オンラインメディア
ECサイト:商品の検索結果や関連商品リストにスポンサー広告を表示することで、自然な形で広告が目に入ります。
アプリ広告:顧客の行動履歴や購買データを利用し、最適なタイミングでプッシュ通知などによる広告配信が可能です。
オフラインメディア
デジタルサイネージ:店舗内に設置される電子広告看板で、動きや音声で商品を効果的にアピールでき、購買意欲を刺激します。
店頭POP:陳列棚に設置されるPOP広告もリテールメディアの一種で、店頭での顧客の目を引き、即時的な購買を促します。
リテールメディア活用事例
ここでは、国内外のリテールメディア活用事例をいくつか紹介します。
- Walmart(アメリカ):独自の顧客データを活用し、アプリやECサイト、デジタルサイネージでターゲティング広告を展開。広告収入は前年比40%増加しています。
- Amazon:検索結果や商品詳細ページにスポンサー広告を表示し、自然な形で消費者の興味を引くことに成功しています。
- セブン-イレブン・ジャパン:会員データを活用したアプリ内広告やデジタルサイネージによる店舗内広告で、広告効果が数倍に向上しています。
- ファミリーマート:デジタルサイネージを店舗に設置し、エリアごとに異なる広告配信を行うことで、ローカルなマーケティング効果を発揮しています。
リテールメディア導入のステップ
リテールメディアを効果的に活用するための基本的なステップを解説します。
ステップ1. ターゲットの決定
まずは、自社のECサイトや店舗に来店する顧客層を把握し、広告のターゲットを決めます。
ステップ2. 媒体の選定
リテールが提供するECサイトやアプリ、店頭POPなど、最も効果的な媒体を選定します。
ステップ3. オンラインプロモーションの実施
オンライン広告の配信を行い、専用アプリやECサイトで商品を宣伝します。
ステップ4. 店頭プロモーションの実施
店頭プロモーションとして、デジタルサイネージやPOP広告などを展開し、オンラインとオフラインを連動させて購買を促進します。
ステップ5. PDCAサイクルの実行
広告効果を分析し、改善点を特定してPDCAサイクルを回すことで、広告の効果をさらに高めていきます。
リテールメディアは、メーカー、広告主、小売業者、消費者にとってそれぞれメリットのある「三方良し」の広告手法です。
リテールメディアを活用することで、店舗とオンラインの両方で一貫した購買体験を提供できるため、現代のマーケティング戦略において大変重要な要素となっています。
特に、3rd Party Cookieの規制強化に伴い、1st Partyデータの価値が高まる中、リテールメディアの活用は今後さらに広がっていくと期待されます。
リテールメディアの導入を検討することで、顧客との関係性を深め、売上向上につなげることができると考えています。
参考記事
・https://kaizenplatform.com/contents/retail-media