近年、SNSを中心に「セルフ写真館」が大きな盛り上がりを見せているようで、Z世代をはじめ若い世代を中心に人気が急拡大しており、街中やショッピングモールで見かけることもあります。
今回は、セルフ写真館はどのような背景で誕生し、なぜこれほどまでに注目されているのか、フォトスタジオ業界のトレンドを踏まえながら、セルフ写真館の魅力とマーケターの視点から見るビジネスチャンスや課題について考えてみます。

セルフ写真館とは?
セルフ写真館とは、スタジオ内に高性能カメラや照明機材がセッティングされており、利用者がシャッターを自由に操作して写真を撮影できるサービスのことです。
これまでフォトスタジオといえば、「プロのカメラマンが撮影する」というイメージが強く、結婚式や七五三、成人式など“ハレの日”に利用されるケースがメインでした。
しかし、セルフ写真館では、撮影時にカメラマンやスタッフが細かく指示をすることはなく、友人や家族、恋人同士など気心の知れたメンバーで“気軽に”“自由に”撮影を楽しめるのが最大の特徴で、背景や衣装をカスタマイズできるスタジオも多く、「自分たちのペースで撮影できる」「自撮りよりも高クオリティな写真を量産できる」といったメリットがユーザーの心をつかんでいるそうです。
セルフ写真館が注目される背景
SNS文化の浸透
InstagramやTikTok、X(Twitter)などのSNSを活用する中で、「いかに映える写真や動画を撮るか」が日常のエンターテインメントになっています。
セルフ写真館は短時間で高品質な写真を大量に撮れるため、SNS上で写真をシェアするユーザーにとっては魅力的なスポットであると考えます。
日常使いへと広がるフォトスタジオの活用
以前は「七五三」「成人式」「結婚写真」など人生の節目での利用が中心でしたが、セルフ写真館によって「ちょっとしたお祝い」や「日常の思い出作り」にもフォトスタジオが活用されるようになっており、Z世代は日常の些細な瞬間でも写真に残し、SNSで共有し合う文化が根付いています。
従来型スタジオの特別感はそのままに、カジュアルに通える写真館が支持を得ていると考えられます。
体験型エンターテインメントへのニーズ
買い物や食事だけでなく、「体験そのもの」を楽しむ消費が増えているのもポイントで、セルフ写真館は友達や家族とワイワイ盛り上がりながら写真を撮る体験が価値となり、誕生日や記念日などに“イベント化”されやすいという強みがあります。
市場データから見るセルフ写真館の可能性
フォトスタジオ市場全体は、コロナ禍による結婚式や卒業式の自粛・縮小などで一時的に打撃を受けました。
しかし、2023年には5類移行による行動制限緩和やSNS需要の拡大によって、市場規模は前年比113%の1,715億円(日本フォトイメージング協会推計)まで回復し、2019年の約95%水準に近づいているとされています。
こうした復調の要因のひとつとして挙げられるのが、「セルフ写真館を含めた新たなトレンド創出による、若年層やファミリー層への訴求拡大」です。
SNSを活用して写真を拡散する“しくみ”が市場に活気をもたらし、写真館を“もっとカジュアルに利用する文化”が広まりつつあるのです。
セルフ写真館がもたらすビジネスチャンス
顧客データの活用
セルフ写真館を訪れる顧客の多くはZ世代やSNSリテラシーの高い層だと考えられ、彼らがどんなシチュエーションでセルフ写真館を使い、どんな写真を撮り、どのSNSで共有するのか、その行動データやヒアリング情報をうまく収集すれば、今後のマーケティング施策に生かすことができるかもしれません。
- 顧客アンケートで「利用のきっかけ」「SNS利用状況」などを取得
- SNSハッシュタグ分析で投稿数の推移や人気の撮影ジャンルを把握
コラボレーション施策
セルフ写真館は「写真を撮るだけ」にとどまらず、コスメブランドやアパレルブランドとのコラボ企画、季節イベントとのタイアップなど、さまざまな展開が考えられます。
- ファッションブランド:撮影時に使用できるアクセサリーや衣装の提供
- コスメブランド:メイクアップ体験 + 撮影プランの同時提供
- 地域のイベント連動:夏祭りやクリスマス、ハロウィンに合わせた背景・デコレーション企画
オンライン×オフライン連動
セルフ写真館の撮影体験をオンラインでも拡散できるよう、SNSとの連動を強化することで認知度拡大が期待でき、ユーザーが投稿した写真を二次利用できる施策や、ハッシュタグキャンペーン、フォトコンテストなどを開催し、体験を広くシェアしてもらう仕組みを作ると効果的だと言われています。
リピート&ファン化戦略
「一度利用して終わり」ではなく、リピーターを増やす戦略も重要です。
- メンバーシッププログラム:来店回数に応じて特典やクーポンを付与
- スタジオ内の演出アップデート:季節ごとやトレンドに合わせて背景や小物を変更
- データ管理・予約管理のDX化:顧客満足度を高め、次回利用のハードルを下げる
セルフ写真館が直面する課題と対策
設備投資コスト
一眼レフカメラや高品質の照明機材、背景、インテリアなど初期投資が大きくなりがちなので、マーケティング視点では「投資対効果」を検証し、顧客単価やリピート率を見ながら、どのグレードの機材や演出を取り入れるかを計画的に判断する必要があると考えます。
マーケティングリソースの不足
SNS運用や顧客データ活用には専門知識が必要ですが、フォトスタジオには撮影技術に特化した人材が多いものです。
外部のマーケターやコンサルタントと連携しながら施策を展開する、あるいは既存スタッフにSNS運用スキルを習得してもらう研修を実施するなどの対策が求められると思われます。
独自性の確立
セルフ写真館が増加するほど、競合が激しくなるため、撮影背景のデザインやカメラ設備、空間演出など、“ここにしかない”体験を提供することが差別化のポイントになります。
さらに、従来からフォトスタジオに求められる「丁寧な接客」や「高品質な写真の仕上がり」にもこだわることで、ユーザーとの信頼関係を築きやすくなると考えます。

写真は、いつの時代でも人々にとって特別な思い出を残すメディアであることに変わりはありません。
セルフ写真館はそうしたニーズに“気軽さ”と“楽しさ”をプラスし、新しい顧客層をフォトスタジオへ呼び込む役割を担っていると考え、これからも技術とSNSの進化により、フォトスタジオ業界全体が生み出す価値や体験の幅はさらに広がっていくと思われます。
参考記事
・https://totoco-net.com/blog/photo/007/
・https://news.yahoo.co.jp/pickup/6527785