偶然を設計するセレンディピティ・マーケティングとは?

スターバックスのフラペチーノは、元々は一店舗のバリスタが試作品として作ったドリンクだったそうです。
それが偶然にも来店したお客様の目に留まり、SNSで話題になったことで、今では夏の定番メニューとして世界中で愛されているそうです。

このように、予期せぬ発見や出会いが新たなビジネスチャンスを生むことを「セレンディピティ」と呼びます。
古い童話『セレンディップの三人の王子』が語源となったこの言葉は、今、マーケティングの新しいアプローチとして注目を集めているそうです。

今回は「セレンディピティ・マーケティング」についてまとめます。


セレンディピティ・マーケティングが
注目されている理由

従来のマーケティングの限界

デジタル広告やSNSの普及により、企業は正確なターゲティングが可能になりました。
しかし、あまりに精緻な広告は「レコメンド疲れ」を引き起こし、むしろユーザーの興味を失わせることもあると言われています。
また、ユーザーの広告回避傾向が強まり、従来の手法だけでは効果が出にくくなっています。


「偶然の出会い」が生む価値

一方で、思いがけない発見には特別な魅力があります。
お気に入りの本屋で偶然見つけた一冊、友人のSNSで知った新商品、街歩き中に出会った素敵なカフェなど、こうした予期せぬ出会いは、より深い印象と好感を生みやすいと言われています。


セレンディピティを設計するには?

オンライン施策

  • SNSコミュニティの活用
    普段は接点のない層との偶然の出会いを促すため、ハッシュタグやテーマ設定を工夫。
    ユーザー同士の自然な交流から新たな発見が生まれる環境を整えます。
  • コンテンツの回遊性向上
    サイト内で関連コンテンツを自然に提示し、ユーザーの興味を広げていく導線を設計。
    押しつけがましくない「発見」を演出します。

オフライン施策

  • 実店舗での仕掛け
    商品陳列や店内BGM、香りなど、五感に訴えかける要素を意図的に配置。思わず立ち止まりたくなる「偶然の出会い」をデザインします。
  • イベントやポップアップストア
    期間限定の体験を通じて、普段とは異なる文脈でブランドや商品と出会う機会を創出します。

事例:ヤフー×電通デジタルの取り組み

デジタル時代の新しいマーケティング手法として、ヤフーと電通デジタルが展開する「セレンディピティ・マーケティング」が注目を集めています。
テレビ離れやデジタル広告への慣れによって、従来の手法だけでは潜在顧客へのリーチが難しくなっている課題に対し、ニュースメディアの特性を活かした新しいアプローチを提案しています。

具体的には、Yahoo!ニュースの閲覧データを活用し、明確な購買意欲はないものの「なんとなく気になる」という潜在層の興味を捉えた広告配信を実現。
また、Yahoo! JAPANトップページの「ニューストピックス」にプロモーション枠を設けることで、通常の広告を見過ごしがちなユーザーとの自然な接点を創出しています。

このアプローチにより、広告配信のコスト効率が向上しただけでなく、新規顧客の開拓や長期的なブランド認知の向上につながっているとのことです。
過度なターゲティングではなく、ユーザーの「あいまいな関心」を大切にした取り組みは、セレンディピティ・マーケティングの本質を表す好例といえると思います。


実践のポイント

まずは小さく始める

セレンディピティ・マーケティングは、一見すると「偶然任せ」に思えるかもしれません。
しかし実際は、細かな仮説検証の積み重ねが重要だと言われています。

  1. 特定の顧客層や商品カテゴリーに絞ってテスト
  2. 効果測定の指標を明確に設定
  3. 成功・失敗の要因を分析し、次のアクションへ

組織文化づくりも大切に

予期せぬ発見を活かすには、組織の受容性も重要です。
失敗を恐れず、新しいアイデアを積極的に試せる環境づくりを心がけましょう。


情報過多の現代だからこそ、「思いがけない発見」の価値は高まっています。
セレンディピティ・マーケティングは、ブランドと顧客の新しい関係性を築く可能性を秘めていると感じます。


参考記事
・https://www.dentsudigital.co.jp/knowledge-charge/articles/2023/2023-1031-yahoo