情報過多を切り抜ける:シンプルなデザインの重要性

インターネットが一般的になった現代、消費者は数え切れないほどのウェブサイトの中から必要な情報を選び取る必要があります。


「シンプルイズベスト」は以前からよく聞く言葉ですが、最近、ウェブサイトやアプリ、広告、パッケージなど、多岐にわたる領域で、シンプルなデザインを目にすることが増えてきました。
シンプルなデザインは、情報を明確かつ効果的に伝えることができるという観点から、さまざまな分野の企業が、広告やウェブサイトのデザインに採用しています。


ともすれば独自性や創造性が失われてしまう可能性も否めない、シンプルなデザインが、なぜ今のトレンドになっているのでしょうか。


今回はシンプルなデザインの特徴について深堀りし、再考してみたいと思います。



シンプルなデザインが選ばれる理由

今のデザイントレンドにおいて、シンプルなデザインが広く採用されている背景には、さまざまな理由があるようです。

1. 情報過多の時代のクリアなコミュニケーション

シンプルで明瞭なデザインは、不必要な装飾を排除して核となるメッセージに焦点を当てることで、情報の伝達をよりクリアにできるので、毎日膨大な量の情報にさらされている消費者が、情報を素早く効果的に処理することが可能になります。

2. ユーザー経験の重視

デジタル製品やサービスにおいて、シンプルなデザインは、ユーザーが直感的に理解しやすく、操作が容易なため、優れたユーザー体験が得られ、結果として、ユーザーの満足度が向上し、ブランドへの愛着心を高めることができます。

3. ミニマリズムの文化的トレンド

ライフスタイルとしてのミニマリズムが注目されるようになったことも、シンプルなデザインの普及に影響を与えていると言えるでしょう。
余計なものを省き、本質的なものだけに焦点を当てるミニマリズムの哲学は、デザインにおいても評価されています。

※ミニマリズムとは、完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル]。ミニマリスムとも表記される。「最小限主義」とも。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

4. 持続可能性への配慮

企業が環境への影響を考慮するようになる中で、効率的で持続可能なデザインへの需要が高まっていますが、シンプルなデザインは、材料を削減できるため、持続可能性にも貢献します。


シンプルなデザインのメリット

シンプルなデザインは、単に見た目がすっきりしているだけでなく、消費者が商品やサービスを判断する際に大きな役割を果たします。

  • 選択のしやすさ
    シンプルなデザインは、複雑さを排除し、消費者が欲しい情報に直接たどり着けるように手助けするので、消費者は、情報を迅速に処理して、すぐに何を選ぶべきか分かります。
  • 信頼感の向上
    シンプルなデザインは、余計な装飾を施さないことで、商品やサービスの質を自らが語るようになり、企業の自信の表れとも受け取られ、消費者の信頼感を高めることになるでしょう。
  • 記憶に残る
    シンプルなデザインは覚えやすく、長く記憶に残りやすくなりますから、消費者が再び同じような商品やサービスを探す際に、思い出しやすく、リピート購入の向上に寄与します。
  • 情報をはっきりと伝えやすい
    シンプルなデザインは、大切なメッセージを、明瞭かつ集中的にはっきりと伝えやすいので、消費者が理解しやすく、企業やブランドとの信頼関係を構築することができます。

シンプルなデザインのデメリット

シンプルなデザインに多くのメリットがある一方で、十分に配慮されていない場合は、いくつかのデメリットも生じます。

  • 過度の単純化
    シンプルなデザインを追求する過程で、重要な情報や機能が削除されてしまうと、ユーザーが必要とする情報が欠けたり、使い勝手が損なわれたりする可能性があります。
  • 個性の欠如
    デザインを単純化し過ぎると、製品やブランドの個性が薄れ、他と区別がつきにくくなることがあり、市場での差別化を困難にして、ブランド認知に悪影響を及ぼしかねません。
  • ユーザーの混乱
    シンプルなデザインは通常、消費者が理解しやすいものですが、あまりにも単純すぎるとユーザーが混乱する場合があります。
    特に、ある程度の複雑性が必要な情報や機能については、シンプルさが誤解を招くことがあるので要注意です。
  • 感情的なつながりの不足
    デザインにおける感情的な要素やストーリーテリングが削除されると、ユーザーが製品やブランドと感情的につながりにくくなることがあります。

シンプルなデザインを採用する際は、これらのデメリットを考慮し、バランスのとれたアプローチを取ることが大切です。


シンプルなデザインの事例

事例1:ネピア「鼻セレブ」
風邪や花粉症のシーズンに鼻をやさしく守ってくれる保湿ティシュとして定番の「鼻セレブ」。
追従して発売された競合他社商品との差別化を図るため、商品特徴をわかりやすくした名称に変更し、ミニウサギやアザラシなど、動物の鼻にフォーカスしたシンプルながら商品の特徴をとらえたデザインへリニューアルすると一気に人気が出ました。


https://e-nepia.com/pages/index.php?page_url=hana-celeb より引用


事例2: コスメブランド「OPERA」
OPERA(オペラ)のウェブサイトは、プチプラコスメとは思えないシンプルながらも洗練されたデザインで、製品の美しさを際立たせています。色彩は抑えられ、クリアなナビゲーションでユーザーが情報をすぐに見つけられるよう工夫されています。


https://www.opera-net.jp/item/ より引用


事例3: 美容家電ブランド「SALONIA」
ブランドのコンセプトは「BEAUTY is SIMPLE」。
シンプルでミニマルなデザインとカラー展開、余計な機能をそぎ落とすことで性別、年代にかかわらず使いやすくすることを目指したドライヤーやヘアアイロンを展開しています。

https://salonia.jp/limited/autumn2023/ より引用


・無印良品
無印良品はシンプルなデザインの家具や生活用品で知られており、
機能性と美しさを兼ね備え、無駄を省いたデザインが特徴で、そのアプローチは消費者からの高い評価を得て、国際的な成功を収めています。

https://www.muji.com/jp/ja/store より引用


シンプルなデザインを取り入れるポイント

シンプルなデザインは、伝えたいことをはっきりさせ、余計なものをそぎ落とすことから始めます。
シンプルなデザインを上手に取り入れるポイントと言われるのは、下記のようなことです。

1.  伝えたいメッセージをクリアにする

デザインのシンプル化は、まず何を伝えたいかをはっきりさせることから始まるので、自社のコアメッセージを特定し、デザインの中心に置く必要があります。

2. 余計なものは省く

シンプルなデザインを目指すには、余計な装飾や情報を省くことが大切です。
メッセージを伝えるという目的に直接関係しない要素は、消費者を混乱させるだけでなく、メッセージが伝わりにくくなる可能性があるため、
デザインプロセスでは、「本当に必要かどうか」を常に考慮することが求められます。

3. 使いやすさを考える

デザインのシンプル化は、最終的にユーザーが製品やサービスを理解しやすく、使いやすく感じることが目標なので、
デザインプロセスでは、ユーザーの視点を第一に考えることが不可欠です。


あたりまえの事ばかりにも思えますが、制作過程において、基本的なユーザーファーストの視点を見失わないよう、常に心がけることが重要だと言えるでしょう。


今回はシンプルなデザインの特徴について深堀りし、再考してみました。
シンプルなデザインは流行に左右されにくく、さまざまな広告ツールへ展開しやすいという利点があり、長期的な視点から見ても、シンプルなデザインのメリットは多いと感じました。