自社の商品やサービスをより多くの人に知ってもらいたいけれど、大企業のように潤沢な営業予算や人員はない——そんな小規模ビジネスの経営者や広告担当者にとって、効果的な営業スタイルの確立は事業成長の大きなカギを握ると言われています。
かつては「根性」「セールストーク」で押し切る手法も一定の成果がありましたが、今の時代は「いかに顧客の課題を解決できるか」が評価のポイントになっています。
そこで重要なのが、顧客の本音や悩みをしっかりと聞き出す「ヒアリングスキル」です。
今回は、限られたリソースでも成果を出せる“ソリューション営業”の視点や、今すぐ使えるヒアリングのポイントについてまとめます。

「根性」や「セールストーク」だけでは
通用しない
かつての営業は「自社製品の特長を覚え込み、一方的に伝える」いわゆる「セールストーク中心」の手法が主流でした。
時には「根性論」のローラー作戦で成果が出た時代もありましたが、今は顧客が既に多くの製品・サービスを導入しているため、そのやり方だけでは成果につながらないと言われています。
ソリューション営業へのシフト
現代は「商品を売り込む」のではなく、「顧客の課題を解決する」ことが求められる時代で、企業の多くは「今ある製品・サービスに何らかの不満や課題」を感じており、それを解消できる解決策(ソリューション)が提供できる営業パーソンが重宝されます。
そこで重要となるのが「ヒアリングスキル」で、顧客の課題や背景をしっかり引き出す力が、商談の成否を左右するといっても過言ではありません。
「話してもらう」ために意識したい3つのポイント
顧客にスムーズに話してもらうためには、以下の3つを意識すると効果的です。
- 相手の得意な分野から質問する
いきなり高度な経営戦略や企業全体の構造を問いただすと、相手も戸惑いやすく、まずは相手の担当領域や得意分野から始め、「自分のことを理解してくれている」という安心感を持ってもらうことが重要です。 - うなずき・相づち・リピートのリアクションを徹底する
「一生懸命聞いているよ」という姿勢が伝わると、相手もより話しやすくなり、適度な相づちや、相手が言ったキーワードを繰り返すことで、「自分の話をきちんと理解してくれている」と感じてもらいやすくなります。 - 相手に興味を持ち、好意を示す
「好きになる」とまではいかなくとも、相手やその会社の取り組みに本物の興味・関心を示すことは非常に大切で、好意的な態度は言葉を超えて伝わり、より深い話を引き出す後押しとなります。

ヒアリングの流れと具体的なトーク例
ヒアリングは大まかに以下のステップで進めるとスムーズです。
お客様の基本情報を事前に調べる
まずは「年商・社員数・事業エリア・主要な競合」などを把握しておきます。
相手に「調べれば分かる情報」を質問しすぎると、「準備不足」と思われる可能性があります。
具体的な質問例:
「よく競合する他社はどこですか?」
「特に意識している企業はありますか?」
深掘り質問でニーズを徹底的に探る
4W・2H(Who、What、When、Where、How To、How Much)+Why をフル活用し、1つの話題について深く掘り下げます。
「なぜですか?」を上手に織り交ぜることで、相手自身も考えを整理しやすくなります。
例:
「その担当者を選んだのはどうしてですか?」
「その金額感で設定している理由はなぜでしょう?」
展開質問で話題をスムーズに切り替える
ある程度の情報を得たら、「ほかにはございませんか?」と区切りをつけ、次のテーマに移行します。
「〇〇さんのところでは、人材育成の面でも何か課題はありませんか?」と「否定疑問」を使えばYES/NOだけで終わらせずに話を続けることができます。
問題・ニーズの確認
顕在的ニーズ(既に相手が問題だと認識している)だけでなく、潜在的ニーズ(相手が漠然と感じているが、言語化・明確化していない課題)も引き出します。
例:
「具体的にはどのような点でお困りですか?」
「そもそものゴールは何を想定されていますか?」
背景の確認
課題が生まれた背景には、企業戦略や市場の変化、業界の動きなどが隠れています。
ここをしっかり聞くことで、より適切な提案が可能になります。
例:
「少子化の影響があるとおっしゃっていましたが、具体的にはどのように売上に影響が出ていますか?」
ゴールの確認
最終的な目標・目的をすり合わせることで、顧客が求める「成功の姿」を共有できます。
例:
「どのような状態になれば成功だと考えていますか?」
「成功の基準をどのように設定されていますか?」

プレゼン・クロージングへのつなぎ方
十分なヒアリングができたら、プレゼンやクロージングへ進む段階です。
見込みがあると感じられるポイントを押さえておきましょう。
予算の確認
価格は商談を詰めていくなかで、多くの方が気にするポイントですが、タイミングを誤ると商談自体が終わってしまうリスクがあります。
「ご予算をどの程度考えていらっしゃいますか?」だけではなく、価値を理解してもらってから価格提案を行うよう心がけましょう。
決定権者・プロセスの把握
「あなたが決定権者ですか?」とは直接聞きづらいものなので、「最終的にはどのようなプロセスで意思決定されるのですか?」など、丁寧に確認して進めることが大切です。
競合他社の動向把握
他社が同様の提案をしている場合は、比較表の作成などを手伝い、顧客が自社の優位性を理解しやすいようフォローします。
あくまで「差し支えなければ…」という姿勢で、相手を不快にさせないように情報を引き出すのがポイントです。
「ヒアリングスキル」を高める練習と継続的な強化
- ロールプレイングで反復練習
社内やチーム内で実演を繰り返し、実際の商談を想定した「問い方」「相づちの打ち方」などを訓練します。 - 上司・チーム内でのフィードバック
営業管理者・マネージャーは、定期的にヒアリング内容をチェックし、細かいアドバイスをすることでチーム全体のレベルを引き上げられます。 - 実践の場でブラッシュアップ
実際の顧客とのやり取りから得た経験を振り返り、さらにロールプレイングにフィードバックするというサイクルを回してスキルを向上させます。

ソリューション営業は「押し売り」ではなく、顧客の「課題解決」をゴールに据えるスタイルであり、しっかりとしたヒアリングで相手の潜在ニーズまで引き出し、その課題解決策を提案・実行することで、信頼関係が深まります。
ヒアリングスキルは一朝一夕で身に付くものではありませんが、練習や実践を重ねることで向上すると考えます。
参考記事
・https://www.e-sales.jp/eigyo-labo/hearing-95