アメリカ最大級のスポーツイベント「スーパーボウル」が、今年も多くの話題をさらいました。
億単位の放映料が動くことで有名なスーパーボウルのCMは、毎年豪華なキャスティングや奇抜な演出が注目される一方、最近は「パーパス(企業の存在意義)」を打ち出すCMが増えていることでも話題で、単なる“CMの見本市”ではなく、企業の理念や社会貢献メッセージが前面に出る場となりつつあるのが、ここ数年の大きな特徴だと言われています。
今回は、2025年に放映されたいくつかのCMの傾向を振り返りながら、「そもそもパーパスとは何なのか?」をあらためて解説し、中小企業が自社のマーケティング戦略に活かすためのヒントについても考えてみます。
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そもそも「パーパス」とは?
パーパス(Purpose)とは、企業やブランドが「なぜ存在するのか?」という根本的な意義・使命を指します。
単なるビジョンやミッションとは違う?
- 「ビジョン」は将来こうなりたい、という理想像
- 「ミッション」は現時点で何をするか、という業務範囲や役割
- 「パーパス」はさらにその根底にある、“社会にどんな変化や価値をもたらしたいのか”という存在理由
わかりやすく言えば、「企業としてどう成長したいか」「どんな商品を売りたいか」ということより先に、“誰の、どんな課題を解決したいのか”をはっきりさせるのがパーパスの考え方です。
2025年スーパーボウルCMの傾向
今年のスーパーボウルCMには、もちろん従来どおりの“コミカルなエンタメ路線”や“セレブを多数起用した豪華路線”も見られました。
しかし一方で、下記のようにパーパスを強く意識したCMが目立ったのが特徴的です。
社会問題や文化的課題を前面に打ち出す
女性アスリートやマイノリティへの支援、教育格差の是正など、企業の社会的貢献を端的に示す演出が増加。
テクノロジーやサービスが
「人々の人生をどう変えるか」を描く
製品自体の機能よりも、使う人の生活やキャリア、家族関係など、ユーザーの“幸せ”や“向上”を主役に据えるストーリー。
エモーショナルな楽曲や映像体験
一体感を醸成し、“このブランドと一緒なら自分たちはよりよい未来に進める”と思わせる演出が増加。オンラインとリアル会場をつないだ仕掛けなども話題に。
こうしたCMは、直接的に商品を紹介するよりも、まず「ブランドが世の中にどう貢献したいのか」というメッセージを強調しています。これによって視聴者の感情に訴えかけ、「共感」を生むことで長期的なファンづくりを目指しているわけです。
中小企業にとっての「パーパス」活用メリット
「スーパーボウルのCMなんて、大企業向けの話でしょ?」と思われるかもしれませんが、パーパスの考え方や、その伝え方のエッセンスは、中小企業にとっても大いに役立つものです。
- 差別化につながる
大手と価格競争をしていては体力勝負になりますが、“企業の使命”や“人々の幸せへの貢献”といった部分で独自性を打ち出すことで、他社との差別化が可能となります。 - ファンを育てる(リピーターづくり)
単に「安いから」「近いから」選ばれるのではなく、「この会社を応援したい」「共感できる」という感情的な支持は、長い目で見れば強力な顧客ロイヤルティを生みます。 - 社員のモチベーション向上
パーパスを明確にするということは、社内でも“自分たちがなぜこれをやっているか”をはっきりさせることであり、従業員一人ひとりが自社の理念を腹落ちできれば、仕事のやりがいに直結しやすくなります。
中小企業が「パーパス」を打ち出す際のポイント
小さくても“社会や地域への貢献”を明確にする
大きなSDGsや世界的な課題だけでなく、地元コミュニティや身近な顧客が抱える問題に寄り添うところから考えてみるのもいいと思います。
例えば「地域の働くママを応援する」「高齢者が安心して買い物できる場をつくる」など、小さな範囲でもその企業ならではのパーパスが見えてきます。
商品・サービスと結びつけて語る
パーパスが素晴らしくても、商品やサービスと無関係だと共感が得づらいので、自社の提供価値と、どのように“課題解決”や“暮らしの向上”がつながっているのかを、わかりやすく言語化することが重要です。
ストーリーや実例で伝える
「私たちは○○のために存在しています」と文字で書いても、イメージしにくい場合があるので、実際のユーザー事例や具体的な取り組みをストーリーとして紹介すると、より説得力が増すと言われています。
社内外で一貫したメッセージを発信する
ホームページやSNS、店頭での接客、社員の言動まで、同じ方向性を保つことが重要で、社内研修や朝礼などでパーパスを繰り返し共有し、実際の行動にも反映させる仕組みづくりをしていくことが必要です。
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2025年のスーパーボウルCMが話題となった背景には、消費者が企業の“本質的な価値”を求める機運の高まりがあると言われており、SNSや口コミの力が大きくなるなか、ただインパクト重視の広告を出すだけでは「一時の話題止まり」になりがちです。
長期的なファンづくり、社会やコミュニティへの貢献、社員のモチベーションアップなどの相乗効果を得るためにも、“自社がなぜ存在し、どんな人や社会をより良くしたいのか”を明確にし、それを発信するのがこれからのマーケティングのカギとなると思います。
参考記事
https://www.advertimes.com/20250214/article489602/