近年、コロナ禍からの回復や企業の賃上げなどが重なり、人々の消費スタイルは大きく変化していると言われています。
野村総合研究所(NRI)の最新調査(2024年8月実施「生活者1万人アンケート調査」)によると、「安さ納得消費」が縮小傾向にあり、こだわりをもって商品選びをする「プレミアム消費」や「徹底探索消費」が増加していることがわかりました。
今回は、その中でも特に注目を集める「徹底探索消費」について深掘りしながら、今時の消費スタイルの変化について考えていきたいと思います。
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消費スタイルの4分類とは?
NRIが設定する4つの消費スタイルは、以下のとおりです。
- 安さ納得消費
製品自体にこだわりは少なく、安価で手に入れられることを重視する。 - プレミアム消費
自分が本当に気に入った価値や品質には、多少高くてもお金を払う。 - 徹底探索消費
インターネットや口コミなど多方面から情報を収集し、最適な商品を「なるべく安く」購入する。 - 利便性消費
購入時に価格よりも「手軽さ」や「手間の少なさ」など、利便性を最優先に考える。
2024年調査では「安さ納得消費」の構成比が22%に減少する一方、「プレミアム消費」が25%、「徹底探索消費」が12%といずれも増加しており、特にじっくり時間や手間をかけて商品を選び、納得いく条件で購入しようとする「徹底探索消費」の存在感が高まってきているようです。
「徹底探索消費」増加の背景
- 情報収集のしやすさ
インターネットやSNS、口コミサイト、動画プラットフォームなど、あらゆるメディアで商品情報を簡単に取得できるようになり、スマートフォンがあれば、いつでもどこでも詳細なレビューや価格比較が可能で、こうした環境が「徹底探索消費」を後押ししています。 - コロナ禍を経た購買行動の変化
コロナ禍で外出や実店舗での比較検討が難しくなった時期を経験したことで、オンラインでの情報収集と購入が当たり前になりました。
同時に、「せっかく買うなら失敗は避けたい」「長く使えるものを選びたい」という意識が強まった人も多く、結果として、商品選びに慎重になる「徹底探索消費」傾向が増えていると考えられます。 - 個人の価値観の多様化
コロナ禍以降、「自分が本当に価値を感じるものにお金を使いたい」というニーズがより高まっており、必ずしも“高い商品”を買うわけではなく、「自分にとって価値があるものは、少しでも条件の良い形で手に入れたい」という考え方が根付いていると考えられます。
徹底探索消費者の特徴
- 情報収集力が高い
口コミサイトやSNS、YouTubeなどで徹底的にレビューをチェックし、類似商品との比較検討を行い、ブランド公式サイトだけでなく個人ブログやSNS上の実体験も重視するため、宣伝文句よりも生の声や具体的な使用感に敏感だと言われています。 - コスパへの意識が強い
「プレミアム消費」や「安さ納得消費」と違うのは、“質”と“値段”を両立させたいという思いが強い点で、価格が高くてもそれに見合うだけの性能やデザインであれば納得し、購入しますが、同じ品質であれば一円でも安い方を選ぶなど、かなりシビアに条件を見極めます。 - 購入に時間をかける
衝動買いはほぼせず、複数の店舗やオンラインショップで商品在庫や価格を比較してから購入し、大きな買い物だけでなく小型家電やファッション、趣味用品などでも同様のプロセスを踏むことが多いのが特徴です。
マーケティング・ビジネス面でのポイント
1. 信頼できる情報発信
「徹底探索消費」をする人々は、公式な商品スペックだけでなく、ユーザーのレビューや専門家の意見を求めます。
自社ウェブサイトやブログであれば、第三者の検証結果や口コミを積極的に取り入れる、あるいは導入事例やユーザーの声を紹介するなど「客観性・信頼性」を重視したコンテンツを充実させることが重要です。
2. 価格・品質・付加価値の明確化
「徹底探索消費」では、値段だけでなく品質やサービス面、アフターケアなど総合的に比較されるため、価格設定に対する根拠やサポート内容をわかりやすく示すことで、コストに対する納得感を高めることができます。
また、類似商品との差別化ポイントも明確に提示し、「なぜ自社の商品を選ぶ価値があるのか」を情報開示することが大切です。
3. 情報を探しやすい導線づくり
多くの情報から比較検討する「徹底探索消費者」は、欲しい情報にたどり着けないと別の商品に流れてしまう可能性があります。
- 商品ページのレイアウトの最適化
- 詳細なスペック・サイズ・素材情報を確認しやすいUI
- 他サイト(価格比較サイト・口コミサイト)との連携
これらを整備することで「知りたい情報がすぐ見つかる」という体験を提供し、スムーズに購買行動へ結びつけることができます。
4. コミュニティを活用した口コミ拡散
SNSやYouTubeでのレビューは、徹底探索消費者にとっても大事な判断材料で、自社製品のファンコミュニティを育成し、ユーザーのリアルな声や使用感を積極的に発信してもらう取り組みは効果的だと言われており、インフルエンサーとのコラボ企画やモニターキャンペーンなどを活用して、体験ベースの情報を拡散すると、消費者からの信頼獲得につながります。
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「徹底探索消費」スタイルの人々にアプローチするには、信頼できる情報発信やコストパフォーマンスに対する根拠の提示、情報アクセスのしやすさが重要なカギになると思います。
「こだわり」や「納得」を求める消費者の増加は、企業にとってはより丁寧な情報提供やブランドの透明性が求められる時代の到来を意味し、製品・サービスの魅力を正しく伝え、消費者からの信頼を勝ち取ることが、これからのビジネスにおける成長戦略になると考えます。
参考記事
・Yahoo!ニュース2/7掲載記事「「安さ納得消費」は減少、こだわり志向の「プレミアム消費」「徹底探索消費」が増加【最新の消費スタイル調査】」
・https://www.nri.com/jp/media/journal/20220114.html