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グラフィックデザインの国際賞「東京TDC賞」受賞作品展「TDC2024」を開催中Webマガジン「AXIS」
私たちの日常はタイポグラフィ※に彩られています。
※タイポグラフィとは
・特定の目的にしたがって印刷材料を正しく配置する技
・読者が本文を正しく理解できるよう文字を並べ、余白を配置し、活字書体を使う技
(https://schoo.jp/matome/article/1605より引用)
本棚に並ぶ書籍のタイトル、街を行くバスの行先表示、通勤途中の街角に掲げられた看板、近所のカフェのメニューボードに描かれた味わい深い手書き文字。
これらはすべて、私たちが日々接するタイポグラフィの具体的な例です。
これらの文字は、私たちにメッセージを伝え、環境に彩りを加える重要な役割を持っています。
しかし、日常に自然に溶け込むこれらのタイポグラフィは、緻密に考えられ、創意工夫が凝らされています。
今回は、タイポグラフィが広告やデザインにどのように作用し、どのように活かすことができるのかを再考し、その魅力と可能性を探ってみたいと思います。
タイポグラフィとは?
タイポグラフィとは、文字や文字列を視覚的に表現するための技術や芸術です。
文字の選択(フォントやタイプフェイス)、配置、サイズ、行間、文字間の調整などを通じて、テキストを視覚的に魅力的かつ読みやすくすることを指します。
タイポグラフィの目的は、情報の伝達効率を高めることと、特定のスタイルや感情を表現することの両方にあります。
グラフィックデザインの国際賞「東京TDC賞2024」の「タイプデザイン賞」にStudio DRAMAが制作した「Vogue Brasil Sans & Serif」が選ばれました。
https://tokyotypedirectorsclub.org/award/2024_type/より引用
Vogue Brasilのデザインリニューアルに合わせてデザインされた見出し用の書体です。
Vogueの象徴的なブランドイメージとブラジルの豊かな文化やタイポグラフィの伝統を象徴するデザインで表現されています。
この書体は、様々なタイポグラフィの状況や創造的な用途に対応できるようデザインされており、ポルトガル語の発音区別符号を考慮したデザインは、読みやすさと視覚的魅力を高めています。
この書体は、Vogue Brasilチームや読者、さらには世界中のクリエイティブなコミュニティからの賞賛を受け、TDC賞を受賞しました。
タイポグラフィの基本
タイポグラフィは、フォント選択、サイズ調整、行間、文字間、そして色の選択など、さまざまな要素が組み合わさって、読み手にとって魅力的で理解しやすい視覚的コミュニケーションを作り出します。
- フォントとタイプフェイス
「フォント」とは特定のスタイルやサイズで表示された文字のセットを指し、「タイプフェイス」はそのデザイン自体を指します。
- 読みやすさと視認性
効果的なタイポグラフィは、情報を伝える際の読みやすさと視認性を最大化することを目指します。
これは、読者がテキストをスムーズに理解し、快適に読み進めることができるようにするために不可欠です。
- 階層と整列
情報の階層を設定することで、コンテンツの構造を視覚的に示すことができます。
これにより、読者はテキストの重要なポイントを迅速に把握し、情報を効率的に消化できます。
- 色とコントラスト
色とコントラストは、テキストの可読性と視覚的魅力に大きく影響します。適切な色の使用はメッセージを強調し、適切なコントラストはテキストを背景から際立たせます。
タイポグラフィの重要性
文字という単純な要素が、どのようにして私たちの認識や感情に深く働きかけるのでしょうか?
- ブランドを形作る
タイポグラフィはブランドイメージを作ります。一貫した文字使いは信頼を築き、ブランドをより記憶に残りやすくします。
- 感情を動かす
特定の書体やレイアウトを通じて、読者に対して特定の雰囲気やメッセージを伝える力があります。
例えば、大胆で力強い文字はエネルギーと行動を促し、繊細で細かいフォントは静けさや繊細さを感じさせます。
また、色彩や文字の配置も感情に影響を及ぼし、読者の注意を引きつけたり、特定の部分に焦点を当てたりすることができます。
- メッセージをクリアに伝える
読みやすいタイポグラフィは情報を伝え、理解を助けます。
テキストがスムーズに読めると、伝えたいことがしっかり届きます。
- 行動を促す
タイポグラフィは、読者に意図した行動を取らせる効果があります。
強調したり、目立たせたりすることで、訪問者の関心を惹きつけ、ウェブサイトの成果を高めるのに貢献します。
タイポグラフィは、企業やブランドのメッセージを力強く伝える方法として有効であると言えます。
タイポグラフィ選択のポイント
適切なタイポグラフィを選択する際にはいくつかポイントがあるようです。
- 目的を理解する
タイポグラフィを選択する前に、どのようなメッセージを伝えたいか、どのような感情を引き出したいかを明確にします。
目的に応じて、フォーマルなビジネス向けにはクリーンでプロフェッショナルなフォントを、よりカジュアルなコンテキストではフレンドリーなフォントを選びます。 - 読者を考慮する
対象とする読者層がどのようなフォントを好むか、またどのようなフォントが彼らに響くかを理解することが重要です。
年齢層、文化的背景、業界の慣習など、読者の特性を考慮することが大切です。 - 多言語タイポグラフィを検討する
グローバルな視点を持ち、多言語対応のタイポグラフィの重要性を理解します。
特に国際的なビジネスを展開する場合、異なる言語の文字に適したタイポグラフィを選ぶことが重要になります。 - 視認性と読みやすさを確保する
選択するフォントは、どのサイズで表示されても読みやすく、視認性が高いものであることが重要です。
特にウェブやモバイルデバイスでの表示を考慮する場合、スクリーン上での可読性も大切です。 - コントラストと色を活用する
テキストと背景のコントラストは、タイポグラフィの可読性に大きな影響を与えます。
色の選択もまた、メッセージの感情的な響きや強調したいポイントを伝えるのに役立ちます。 - 組み合わせをテストする
複数のフォントを組み合わせる場合は、それらが互いに補完し合い、全体として調和のとれたデザインになっているかを確認します。
異なるタイプフェイスを組み合わせることで、視覚的な興味を引き出せる可能性があります。
タイポグラフィの選択は、メッセージの明確さやブランドイメージの伝達において重要な役割を果たします。
タイポグラフィをプロジェクトに活かす
選んだタイポグラフィを実際のプロジェクトに生かす際のポイントも紹介します。
- プロジェクトの目的に合わせる
タイポグラフィはプロジェクトの目的をサポートするために選ぶべきです。
例えば、教育的なコンテンツでは明瞭性と読みやすさが求められる一方で、アート作品では表現力豊かなフォントが適しているかもしれません。
- ユーザー体験を重視する
ユーザーがどのようにコンテンツと対話するかを考え、タイポグラフィを選定します。
ユーザビリティテストを通じて、実際にユーザーがどのように反応するかを観察し、改善のための洞察を得ましょう。
- ブランドとの調和を考える
タイポグラフィはブランドアイデンティティの一部です。
既存のブランドガイドラインに合致するか、または新しいブランドイメージを確立するためにどのように貢献するかを検討してください。
- 技術的な制約を理解する
特にデジタルプロダクトでは、異なるデバイスやブラウザでの表示の一貫性を保証するために、技術的な制約を理解することが重要です。
フォントのローディング時間や表示性能も考慮に入れましょう。
- 持続可能性を意識する
タイポグラフィ選択は流行に左右されがちですが、時代を超えて持続可能なデザインを目指しましょう。
短期的なトレンドよりも、長期的な価値を提供するタイポグラフィを選ぶことが重要です。
タイポグラフィは文字を美しく見せるだけでなく、コミュニケーションツールとして、ユーザー体験を向上させることができます。
効果的なタイポグラフィの事例
タイポグラフィを効果的に活用した企業の事例を紹介します。
・日本グラフィックデザイン協会(JAGDA):「ジカツデザイン」
公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)は2024年2月22日に『ジカツデザイン』という書籍を発売しました。
この本は、地域に根ざしたデザイン活動を「ジカツデザイン」と定義し、日本全国の8つの地域での事例を紹介しています。
表紙のデザインは異なるフォントを組み合わせたタイポグラフィが印象的で“ジブンで仕事をつくる・ジモトで仕事をつくる・ジマンの仕事をつくるというメッセージをシンプルながら効果的に伝えています。
https://mag.tecture.jp/culture/20240406-109393/より引用
・精美堂:『A Mountain of History』
文字を使った優秀なデザイン作品を選ぶ日本タイポグラフィ年鑑2024でグランプリを受賞した深沢夏菜氏の『A Mountain of History』は、創業126年になる精美堂のインスタレーション展示の告知グラフィックです。
インスターレーションの象徴である「山」をグラフィック化し、山を中心にして横に並べると、精美堂の「美」が山を登っていく演出になるような設計をしています。
https://taichitamaki.com/SEIBIDO-1より引用
・朝日新聞:「坂本龍一が残した言葉」
文字を使った優秀なデザイン作品を選ぶ「日本タイポグラフィ年鑑2024」の審査委員賞・オンスクリーン部門を受賞した「坂本龍一が残した言葉」のWebサイトは、坂本さんが残した言葉とともに、社会活動にも深く関わった半生を振り返りました。
https://www.asahi.com/special/sakamoto-ryuichi/?iref=pc_extlinkより引用
・日本経済新聞社:『関東大震災100年 再現・首都延焼46時間&地図で見る「地震列島」日本・100年の震源』
文字を使った優秀なデザイン作品を選ぶ「日本タイポグラフィ年鑑2024」の審査委員賞・オンスクリーン部門を受賞しました。
関東大震災での大火災がどのように広がっていったのかをビジュアルで表現しています。
災害の怖さやリアルな現場をイメージさせる色使いやフォント、直感的に把握しやすいユーザーインターフェースや操作性も高い評価を受けています。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/kanto-earthquake-46hour/より引用
・サントリー:「サントリー生ビール」
サントリーの「サントリー生ビール」と映画『キングダム 運命の炎』がコラボレーションしたCMでは、映画『キングダム』のダイナミックなシーンと「サントリー生ビール」のタイポグラフィーが特徴的に使用されており、特に「生」という文字のグラフィカルな扱いが印象的です。ビールの缶が隊列を組むシーンや、メイキング映像を使用した部分では、タイポグラフィーを活用した視覚的な工夫がされてます。
https://www.advertimes.com/20230809/article430245/より引用
今回は、タイポグラフィが広告やデザインにどのように作用し、どのように活かすことができるのかを再考し、その魅力と可能性を探ってみました。
タイポグラフィは単なる文字の配置ではなく、言葉やメッセージをより鮮明に伝える力がある方法だと思います。