消費者の心を読む技術:ニューロマーケティングの力

「ニューロマーケティング」という言葉を聞いたことはありますか?


ニューロマーケティングとは、脳科学の知見を利用して消費者の無意識の反応を解析し、それをマーケティング戦略に活用する方法だそうで、最近では「アース製薬」がニューロマーケティングに関する技術の特許を取得し活用していることで話題になっています。


アース製薬がニューロマーケティングの新評価法で特許取得 「ウルモア」等で活用 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

2021年、アース製薬は脳波や視線計測などを組み合わせたマーケティングリサーチ手法で特許を取得しました。
この手法は、消費者の視認性、好感度、情報伝達効果を多角的に評価することができます。
この技術は、入浴料「温泡 ONPO Kids」や高保湿入浴液「ウルモア」のパッケージデザインに既に応用されており、商品開発やブランド価値向上に大きく貢献しています。

https://www.advertimes.com/20240404/article455391/より引用


今回は「ニューロマーケティング」について学びたいと思います。


ニューロマーケティングの重要性

ニューロマーケティングは消費者がどのように製品や広告に反応するかを科学的に理解することを可能にし、それにより企業はより効果的な広告キャンペーンを展開し、より魅力的な製品を開発することができると言われています。


ニューロマーケティングに使われている技術

ニューロマーケティングで使われている技術やその進化についてまとめました。

1. アイトラッキング

アイトラッキング技術は、広告や商品パッケージを見る際の消費者の目の動きを詳細に記録するもので、これにより、どの要素が注目を集めているか、また視線がどのように移動するかが明らかになります。
このデータは、広告のレイアウトや商品パッケージのデザインを最適化するのに非常に有効だと言われています。

2. fMRI(機能的磁気共鳴画像法)

fMRI技術は、消費者が特定の広告やブランドメッセージに触れたときの脳の反応を可視化するもので、どの脳領域が活性化するかを調べることで、消費者の情動や動機付けられた行動が何によって引き起こされるかを理解する手がかりを提供します。

3. 表情認識

表情認識技術は、広告を見た際の消費者の微妙な顔の変化を捉え、その感情反応を解析するもので、喜び、驚き、不快などの感情は、商品や広告の受け入れ方に直接影響を与えるため、この技術は感情的なエンゲージメントの測定に役立つと言われています。


技術の進化とマーケティングへの統合

これらの技術は時間とともに劇的な進化を遂げ、より精密で包括的なデータを提供できるようになってきているそうです。
また、これらの技術を組み合わせることで、一層深い消費者洞察が可能となり、ニューロマーケティングは従来のマーケティング手法と比べて、消費者の本音により近づくことができると言われています。


実際のマーケティング戦略における
ニューロマーケティングの応用例

ニューロマーケティングの技術は、様々な業界で具体的なマーケティング戦略として取り入れられています。具体的な例でについて紹介します。

1. 商品パッケージデザインの最適化

例えば食品業界では、アイトラッキングと表情認識技術を組み合わせて、パッケージデザインが消費者の注意をどのように引き、感情にどのように作用するかを分析しています。
このデータを基に、より魅力的で購買意欲を刺激するデザインへと改良が行われます。


事例:アサヒビール缶チューハイ「アサヒもぎたて(以下、もぎたて)」
アサヒビールは缶チューハイ「アサヒもぎたて」のパッケージデザインをリニューアルする際に、マクロミルグループ センタンが提供するニューロリサーチを活用しました。
このリサーチでは、色彩、キャッチコピー、パッケージ上のテキストや画像の配置など、100以上のデザイン案から2つに絞り込んで調査が行われ、脳波計測とアイトラッキングを組み合わせて実施し、これまでの調査結果とも組み合わせることで、最終的な新しいデザインが決定されました。

https://markezine.jp/article/detail/32303より引用


2. 広告キャンペーンの効果評価

fMRIを活用して、広告が見る人の脳内でどのような感情や記憶と関連して反応が起きているかを分析し、これにより、広告メッセージが消費者の意思決定プロセスにどのように影響を与えているかを詳細に理解し、より効果的な広告戦略を構築しています。


事例:朝日新聞社が行った新聞広告のニューロマーケティング研究
朝日新聞社は脳科学を活用し、新聞広告がどのように消費者の潜在意識に作用するかを検証しました。
具体的には、大日本印刷と慶應義塾大学との共同開発したヘアバンドタイプの脳波計を使用し、新聞購読者の脳波と視線の動きを測定し、これにより、自動車広告がどのクリエーティブ要素によって興味関心度を引き出しているかを解析しました。

調査では、自動車メーカー10社の新聞広告に対する反応を1分間にわたって記録し、視覚刺激による「興味関心度」を0〜100%で数値化し、特に興味を引く部分(車の写真、価格、キャッチコピーなど)に注目が集まる様子が確認されました。

https://adv.asahi.com/marketing/analysis/11053749より引用


3. ユーザーエクスペリエンスの向上

テクノロジー業界では、新しいデバイスやアプリケーションのユーザーインターフェース設計にニューロマーケティングを応用しており、アイトラッキングを用いてどの機能が直感的でないかを識別し、使用時のストレスを減らすためのデザイン変更が行われています。

事例:電子書籍のユーザーインターフェース(UI)およびユーザーエクスペリエンス(UX)の改善
ニューロマーケティングは、電子書籍のユーザーインターフェース(UI)およびユーザーエクスペリエンス(UX)の改善にも応用されており、この技術を利用することで、開発者は読者の視線の動きや操作への反応を詳細に分析し、直感的で読みやすいデザインを創出することが可能だと言われています。
こうした分析に基づくUI/UXの最適化は、読者にとってのストレスを軽減し、快適な読書環境を提供すると言われ、結果として、読者の満足度が向上し、リピート購入にもつながっています。

https://techsuite.biz/16376/#index_id15より引用


4. 新製品の市場適合性評価

例えば新製品の市場導入前に、表情認識と心拍数の測定を組み合わせて製品試用時の消費者の感情反応を測定することで、製品が期待される感情的な反応を引き出せるかどうかを評価し、市場投入のタイミングや戦略を調整することも可能になるそうです。


ニューロマーケティングで配慮する事項

ニューロマーケティングの導入にあたっては技術的な効果だけでなく、倫理的な配慮も非常に重要だと言われています。

  1. 個人情報の保護
    被験者の脳活動データは非常にセンシティブな情報であり、プライバシーの保護が必須です。
    データの取り扱いには最大限の注意を払い、個人情報保護法規に従った厳格な管理を行う必要があります。
  2. 倫理的な研究実施
    ニューロマーケティングの研究や実施にあたっては、倫理的なガイドラインに従うことが求められ、これには、被験者の同意の取得、透明な研究目的の説明、被験者に対するリスクの最小化が含まれます。
  3. データの正当な使用
    得られたデータを公正かつ倫理的に使用することが不可欠で、特に、データを悪用することなく、消費者の利益を守りながらマーケティング戦略を立てることが重要です。
  4. 技術進歩と倫理のバランス
    科学技術が進展する中で、より簡便で非侵襲的な測定方法やAIを利用したデータ解析が可能になっていますが、これらの進歩がもたらす倫理的な課題に対しても、適切な対応が求められます。

ニューロマーケティングは、消費者の深層心理にアクセスし、マーケティング戦略を科学的に裏付けることができる革新的なアプローチだと言えます。
まだまだ小規模ビジネスでは導入が難しい点も多くあると思いますが、今後も注目していきたいと思います。


参考記事
ニューロマーケティングとは?メリットや問題点、活用事例を解説 – GMOリサーチ&AI
ニューロマーケティングのトレンド、マーケティング手法のニーズを詳しく解説|コラム | D-Planner | 株式会社NTTデータ