アメリカ大統領選から学ぶ小規模ビジネスのマーケティング戦略

トランプ氏の1時間40分に及ぶ議会向け演説が話題になっています。
就任からわずか1カ月半ほどの間に数多くの大統領令を出し、その“成果”をアピールする姿が印象的でした。

報道を見て改めて感じたのは、アメリカ大統領選がいかに巨大な「マーケティングプロジェクト」として展開されているかということです。
メディアでの発信やSNSの活用、ターゲット層へのアプローチ手法など、多額の資金と戦略が注ぎ込まれており、そんな大統領選のマーケティング手法は、小規模ビジネスを営む私たちにとっても、ヒントになる部分がたくさんあるのではないでしょうか。

今回は、米大統領選で用いられるマーケティング戦略や実際の事例をひも解きながら、小規模ビジネスが学べる視点について考えてみたいと思います。


なぜ米大統領選で
マーケティングが重要なのか?

大統領選挙は、候補者を「いかに魅力的に見せるか」「いかに多くの有権者を動かすか」という点が勝敗を左右し、ビジネスで例えれば、商品やサービスを「いかに魅力的に見せるか」と同じです。
特にアメリカでは、無党派層が全有権者の約4割を占めるとも言われるため、「自分たちをまだ知らない・興味が薄い相手」に響くアプローチをどう設計するかが重要になります。

ここがビジネスにおける「新規顧客の獲得」や「認知拡大」に近い構造で、限られた予算やリソースの中で効果的に商品・サービスを広めたいと考えるなら、米大統領選のマーケティング視点が参考になると考えます。


アメリカ大統領選のマーケティング事例

米大統領選では多額の広告費をはじめ、多様な手法が駆使されます。
ここでは代表的な事例をいくつかご紹介します。

● 2008年 オバマ陣営
「Yes We Can」「Change」というシンプルかつ力強いスローガンを掲げ、SNSやYouTubeなどのオンラインメディアを積極的に活用しました。
テレビ広告や新聞だけでは届きにくい若年層を取り込み、選挙キャンペーンの認知度を大きく高めたと言われています。

● 2016年 トランプ陣営
「既存の政治家ではないビジネス成功者」という強いイメージを打ち出し、さらにデータ分析を駆使して特定の地域や属性の有権者に的確なメッセージを届けることで、限られた予算を効率的に活用する戦略を取りました。

● インフルエンサーとの連携
2020年のバイデン陣営では、SNSでインフルエンサーを起用し、従来の選挙活動では触れにくかった若年層への認知獲得を推進しました。
著名人の支持表明や、パーティー・イベントに招待する手法も広く用いられています。

● AIの活用
近年はAIによるリアルタイムのデータ分析が進み、地域や年齢層、興味関心に合わせた最適なメッセージを瞬時に出し分けることが可能になりました。
一方、フェイクニュースや偽画像などを拡散するリスクも懸念されています。


小規模ビジネスが学べるポイント

米大統領選で使われるマーケティング手法は、多額の資金や大勢のスタッフを動員できるからこそ成り立つ部分もありますが、そのエッセンスを小規模ビジネスに取り入れることも可能だと考えます。

  • 1. クリアで強いメッセージを掲げる
    オバマ陣営の「Yes We Can」のように、印象に残る一言を全体の軸にします。
    どんなにいい商品やサービスでも、伝わりにくければ興味を持ってもらえる可能性が低くなります。
  • 2. ターゲットに合わせたアプローチ
    トランプ陣営のように、顧客データを分析して属性に応じたメッセージや広告を使い分けると、限られた予算を効果的に使えます。
  • 3. SNSの拡散力を活かす
    オバマ陣営やバイデン陣営で使われたSNS活用は、小規模ビジネスにも必須の戦略で、広告費をかけずに多くのユーザーにリーチできる可能性があると考えます。
  • 4. インフルエンサーやコラボレーションの検討
    自前のリソースだけでなく、インフルエンサーや他のブランドとコラボすることで、認知度や信頼度を高める効果が期待できます。
    フォロワー数の多い著名人だけでなく、マイクロインフルエンサーにも注目します。
  • 5. データとAIで迅速な意思決定
    近年の大統領選で重要視されているのが、データ分析やAIの活用です。
    大規模でなくても、SNSやWeb解析ツールを使って顧客行動を把握し、こまめに改善していく姿勢がマーケティング成果に大きく影響すると言われています。

アメリカ大統領選は、世界でも類を見ないほどの注目度と資金が集まる「巨大なマーケティングプロジェクト」であり、オバマ陣営のSNS活用から、トランプ陣営のポジショニング戦略、バイデン陣営のインフルエンサー起用まで、あらゆる手法が駆使されています。

その一方で、小規模ビジネスも「ターゲットを明確にする」「短く強いメッセージを掲げる」「SNSやインフルエンサーを活用する」「データを分析して戦略を練り直す」といったエッセンスを取り入れることで、限られたリソースでも成果を狙うことができると考えます。

大統領選の華やかなイメージだけにとらわれず、その根底にある「顧客(有権者)とのコミュニケーションや共感づくり」という本質を意識して、ビジネスのマーケティングに活用することが大切だと感じます。


参考記事
・https://www.meltwater.com/jp/blog/us-presidential-election