最近、ニュースでも話題になることが多い“野菜の価格高騰”。
原因としては天候不順や生産コストの上昇など、さまざまな理由があげられます。
消費者からすると「野菜が高いと困るな…」と感じますが、その一方で、産地や流通業者にとっては「高値でも買ってもらう工夫」を見せるチャンスでもあります。
今回は、そんな野菜高騰の時期に役立つ「青果物マーケティング」のポイントについてまとめてみました。
「ブランド」「関係性マーケティング」「店頭マーケティング」というキーワードを知っておくだけで、消費者の購買心理や効果的な販促方法がグッと見えてくると思います。
消費者の購買行動とブランドの役割
「高くても買う? それとも安いほうに切り替える?」
スーパーでの野菜選びを思い浮かべてみると、いざ買う直前まで「いつもの産地」にこだわっているのに、値段が高いと分かった瞬間に別の産地や他の野菜へ切り替える、なんて経験はありませんか?
これは、野菜が高騰したときに起こりがちな購買行動の特徴で、「安さを優先する消費者はブランドや産地名より価格を重視する」傾向があると言われています。
それでも「ブランド」が効く理由
一方で「ちょっと高くても、やっぱりお気に入りの野菜を買いたい」という人が一定数いるのも事実で、ここに大切なのがブランド(産地名や商品名)の存在だと言われています。
- ブランド=“信頼のしるし”
「ここなら安心」と感じられることで、多少高くても納得してもらえる可能性が高まります。 - ストーリーがあると乗り換えにくい
たとえば「この産地は土が良くて甘みが強い」「減農薬にこだわっている」「生産者さんが家族で丁寧に育てている」など、他にはない背景があるほど、消費者は愛着を持ちやすくなります。
こうした“ブランドの力”を育てるためには、消費者にきちんと産地のこだわりやストーリーを伝える仕掛けが必要で、単にパッケージに名前を載せるだけではなく、PRの場を増やして「なぜこの野菜は特別なのか」をアピールすることが大切だと考えます。
関係性マーケティング:
ファンづくりこそ最大の武器
売り手と買い手の「つながり」が重要
マーケティング初心者の方に覚えてほしいキーワードのひとつが「関係性マーケティング」です。
これは、農産物を一方的に売る・買うだけで終わらせず、産地や生産者、流通業者、そして消費者が「つながり」を持って、みんなで需要を作っていく考え方を指します。
- SNSや産直イベントで直接コミュニケーション
天候不順で今年は野菜が高くなっている理由や、栽培にどれだけ手間をかけているかをオープンに伝えれば、消費者も応援したい気持ちになりやすいと言われています。 - 消費者の声を商品開発や販促に反映
「もっとカット野菜があると便利」「このサイズ感が欲しい」など、実際に買っている人の生の声を取り入れることで、より“買いたい”と思われる商品を作りやすくなります。
地域全体で「ブランド」を育てる
近年の気候変動などで価格変動そのものが頻発する時代だからこそ、地域全体で「安定供給」を続けながらブランド力を高めていくことが重要だと言われています。
たとえば、複数の生産者が連携して収穫量を調整したり、地域の飲食店や観光施設とコラボして「この土地の野菜といえば〇〇!」という認知度を上げたりする事例もあります。
こうした取り組みによって、多少値段が上がっても「せっかくならあの有名な産地の野菜を買おう」という“地域ごと応援したい”層が生まれ、結果的に価格変動時にも売り上げを落としにくくなると言われています。
店頭マーケティング:
買い場づくりが勝負を分ける
野菜は「その場で決める」買い物がほとんど
夕飯の献立をイメージしながらスーパーをうろうろ…「今日はキャベツがちょっと高いな」「でもこのPOPに“甘くてシャキシャキ”って書いてあるし、試しに買ってみようかな」といった具合に、その場の雰囲気や予算で決める人は少なくありません。
このような“非計画購買”が多いのが青果物の特徴です。
じゃあ何が決め手になる?
- POP広告(店頭ポップ)
「こんなレシピでおいしく作れます」「〇〇番組で話題に!」などの情報が一目でわかると、購入のハードルが下がりやすくなると言われています。 - 産地フェア・特設コーナー
産地ごとに分かれたコーナーやフェアがあると、「あ、ここならあの産地の野菜をまとめて選べる!」と消費者が足を止めやすくなります。 - 試食販売
実際に味わってみたり、スタッフが「このレタスは水耕栽培で農薬を減らしています」と話してくれることで、価格だけでなく“おいしさ”や“安心感”で選ぶきっかけが増えます。
野菜が高騰すると消費者は「どうしてこんなに高いの?」と敏感になります。そこで、
- ブランドをわかりやすく伝える
- 産地や流通、消費者の「つながり」を強める(関係性マーケティング)
- 店頭でのわかりやすい情報提供や試食など“後押し”をする
この3つを意識すれば、「あ、少し高くても買ってみようかな」と感じてもらえる可能性が大幅にアップすると考えます。
産地や流通業者、そして消費者が一体となってコミュニケーションを深め、価格以上の価値を生み出すマーケティングが重要であると感じました。
参考文献・サイト