ビジュアルコミュニケーションの力
情報過多の時代において、メッセージを効果的に伝える方法の一つに「ビジュアルコミュニケーション」があります。
ビジュアルコミュニケーションとは、言葉に頼らずに視覚的要素(画像、色彩、形、レイアウトなど)を使用して情報を伝える手法です。
テキストだけの伝達に比べて、情報の理解を助け、記憶に残りやすくする効果が高いことが多くの研究で示されているそうです。
防災情報では、緊急時に迅速かつ明確に情報を伝えることが重要です。
そのため、色彩を用いて緊急度を示したり、シンボルやアイコンを使って避難経路を示すなど、ビジュアルコミュニケーションが活用されています。
ビジュアルコミュニケーションにより、言葉での説明よりも直感的に理解しやすく、情報を迅速に伝えることが可能になります。
今回は、ビジュアルコミュニケーションの重要性を掘り下げ、特に「防災情報」におけるその活用事例をご紹介します。
ビジュアルコミュニケーションの基本原則
まずはビジュアルコミュニケーションを取り入れる際に考慮すべき、原則について整理します。
明瞭なメッセージ伝達
コミュニケーションの核となるメッセージを際立たせ、伝えたい内容をクリアにします。
視覚的な優先順位付け
ビジュアル要素を情報の重要度に応じて並べて、視覚的な流れを作り出します。この方法によって、情報の処理がスムーズになり、理解しやすくなります。
色彩の選択と使用
色は情報の受け手の感情や行動に深く影響します。色を利用して緊急性を示したり、注意を引くために効果的に用いられます。
フォントとレイアウトの選定
情報を読み取りやすくするためには、適切なフォントの選択とレイアウトの整理が必須です。直感的に理解可能で迅速な行動を促すデザインが必要です。
これらの基本原則を理解し取り入れることで、ビジュアルコミュニケーションの効果を高め、重要性が高い情報の伝達において力を発揮すると言われています。
異なるニーズに対応するデザイン
防災情報のような緊急性が高く、全ての人に伝わる必要がある情報では、異なるニーズを持つ人々に対しても配慮が必要です。
- 子供への配慮
子供は文字よりも画像や色を通じて情報を理解しやすい傾向にあります。シンプルでカラフルな図解やアイコンを使用して、情報を視覚的に伝えることが効果的です。
- お年寄りへの配慮
視覚や認知機能に制約があるお年寄りを考慮し、大きな文字や高コントラストの色使い、シンプルで直感的なデザインが推奨されます。
- 障害を持つ人々への配慮
聴覚や視覚障害を持つ人々に対しては、テキスト情報の代わりに視覚的な手段や、視覚情報の代わりに音声案内など、複数のコミュニケーション手段を提供することが重要です。
ビジュアルコミュニケーションを活用した
防災情報の事例紹介
効果的なビジュアルコミュニケーションは、防災情報をより多くの人に迅速かつ明瞭に伝えるための強力なツールとなり得ます。
事例をいくつか紹介します。
・多言語対応の避難所マップ【金沢市指定避難所多言語マップ】
金沢市では、国内外からの訪問者に対応するため、多言語で情報を提供する避難所のマップを作成しました。
このマップでは、色分けされたエリアやシンボルを用いて、避難所の位置や避難ルートを直感的に理解できるよう工夫がされています。
・子供向けの防災教育資料【Yahoo!きっず】
子供向けの安全で楽しい学習コンテンツを提供するポータルサイトで、防災に関連するクイズや教材があります。
漫画やイラストを多用して子供たちの関心を引き、重要な防災情報を楽しく学べるようにしています。
これにより、子供たちが防災に対する知識をより効果的に吸収し、緊急時に適切な行動を取れるようになります。
・高齢者向けの視覚的案内資料【シニア世代の防災の手引き】
福岡県の防災ホームページには、高齢者向けの防災ガイド「シニア世代の防災の手引き」があります。
このガイドは、高齢者が災害時に早めの避難行動を取るための情報を大きな文字と高コントラストの色使いで視覚的に理解しやすく提示しています。
また、地域での防災活動への参加促進も意図しています
・防災ツール「マンション地震対応箱 MEAS」
大地震発生時にマンションの居住者が実行すべき行動手順を体系的に整理したガイドで、地震直後から復旧期に至るまでのマンション住民の対応策を、段階ごとに詳述しています。
緊急から通常状態への移行をサポートするために、心理的変化に応じて5つの色で区分された手順が示されており、緊急時でもすぐに理解しやすいように明瞭な色使い、大きな文字、シンプルなイラストレーションで表現されています。
2023グッドフォーカス賞[防災・復興デザイン]を受賞しています。
今回はビジュアルコミュニケーションの重要性について、防災情報の事例を紹介しながら再考してみました。多様な人々に伝わる工夫は、広告やWebデザインにも活用できる重要な視点だと感じました。