全日本広告連盟が主催する、第3回「鈴木三郎助全広連地域広告大賞」で、福岡市の「マリンワールド海の中道」のCMが、フィルム・オーディオ部門賞・最優秀賞を受賞しました。
この賞は、産業、経済、文化、スポーツに関連する広告を通じて、日本全国の地域活性化に貢献する優れた広告活動を表彰し、地域の活性化を目指すことを目的としています。
ニュース記事:全広連地域広告大賞、最高賞に福岡「マリンワールド海の中道」のCM | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
受賞した作品では、深海の生物を宇宙生物のように幻想的に映し出しており、超接写撮影することで、ウニやネコザメの卵などの海の生き物の、見たことのない姿を捉え、視聴者の知的好奇心を刺激しています。
この広告は、水族館の学術的価値を強調し、その本質に正面から取り組むことで、映像とデザインのクリエイティビティを融合させたことが高く評価されました。
今回は、視点を変えたビジュアル表現を活用した広告について考えてみたいと思います。
視点を変えたビジュアル表現の効果
視点を変えたビジュアル表現は、広告に独自性と新鮮さをもたらし、見る人の関心を強く引きます。
感情への影響
独特の視点や予想外のビジュアルは、見る人の感情に深く訴えかけることができます。
新しい角度から見せることで、通常とは異なる感情の反応を引き出せ、広告のメッセージがより印象深くなります。
記憶に残るイメージ
一般的なビジュアルとは異なるアプローチは、見た人の記憶に新鮮な印象として残り、ブランドの認知度が向上して、話題性を生み出すことができます。
認知の拡大
通常見過ごされがちな特徴や機能をクリエイティブな方法で強調することで、製品やサービスへの理解を深めることができ、情報がより効果的に伝達されて、内容を覚えやすくなります。
行動促進への効果
新しい視点から見せることで、見た人が行動に移す新たな動機を提供し、その結果、製品に対する興味や購入意欲の刺激につながります。
文化的共鳴の創出
視点を変えた表現により、文化的な要素や背景が新しい視点で描かれ、ターゲットオーディエンスとの共感と理解が深まると言われていますが、
これは特に多様な文化的背景を持った視聴者との、感情的なつながりを生み出す要因となります。

視点を変えたビジュアル表現の応用
新しい視点からのビジュアル表現は、広告に新鮮さと創造性をもたらし、見る人に予期せぬ体験を生み出します。
視点の転換を効果的に利用する方法については、下記のような例が挙げられています。
- 異業種の要素の導入
普段馴染みのない業界やカテゴリーからのビジュアル要素を取り入れることで、独特のビジュアルが完成します。例えば、ファッション業界のビジュアルテクニックをテクノロジー製品の広告に取り入れると、新しい魅力の創出が可能になるでしょう。 - 抽象的表現の活用
製品の直接的な説明を避け、抽象的なイメージやメタファーを用いることで、受ける側の解釈に幅を持たせて深い関心を引き出すことができます。そのため、広告への没入感が増し、より長い間、記憶に留まる可能性が生まれます。 - 文化的背景の組み込み
地域や文化に根ざしたビジュアルを用いることで、ターゲットオーディエンスとの共鳴を生み出して、感情的なつながりを強化することができ、例えば、地元の祭りや伝統的な装飾をモチーフにしたビジュアルは、地域コミュニティとの結びつきを強調できます。 - 逆説的なビジュアルの使用
期待を覆すようなビジュアルを提示することで、驚きや興味を喚起することができます。例えば、製品の機能を過剰にシンプル化したり、通常とは逆の環境に置くことで、新たな視点を提供し、話題性を生み出すことができます。
これらの方法を用いることで、広告は、ただ目を引くだけでなく、視聴者に深い印象を与え、行動を促す力を持つようになります。
視点を変えたビジュアル戦略
視点を変えたビジュアル表現を利用して、ブランド認知度を高め、顧客との関係を深めるための戦略を、いくつか紹介します。
異文化要素の組み込み
製品広告に国外のデザイン要素を取り入れて、幅広い視聴者にアピールします。
非伝統的なシナリオの採用
製品を予想外の環境やシチュエーションで紹介し、新たな使用方法を提案します。
象徴的ビジュアルによるメッセージ
製品の特性を象徴的なビジュアルで表現し、メッセージを直感的に伝えます。
アートとの融合
広告にアート要素を取り入れることで、視覚的魅力とブランドの個性を強調します。
テクノロジーを利用した体験提供
ARやVRなどの技術を活用して、顧客に新しい体験を提供し、エンゲージメントを促進します。
視点を変えたビジュアル表現を活用した事例
視点を少し変えた広告の事例を紹介します。
・アシックスジャパン
アシックスジャパンは2024年2月から、現場で働く人達に焦点を当てた広告ビジュアルを公開しています。
スポーツシューズのイメージが強いアシックスですが、この広告では俳優の滝藤賢一さんが、建設業や製造業、配送業など様々な現場で働く人達のリアルな瞬間を表現し、様々な業種の人達に、安全で快適なワーキングシューズをアピールしています。

https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/working/24ss-kenichi-takitoより引用
参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000020802.html
・ライフネット生命:「大きな世界と小さなマツコさん」
ライフネット生命は、マツコ・デラックスさんを起用した新しいTVCMと連動した電車広告を、JR首都圏全線で展開しています。
特に若い世代に向けて、彼らの目に触れやすい電車内で、保険商品の訴求ではなく、「保険選びを自分で考える」重要性にフォーカスした広告は、
心に響く言葉とマツコさんのキャラクターが相まって、注目を集めています。
参考記事:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000091.000069919.html
・ボッテガ ヴェネタ
1966年に北イタリアで創設されたファッションブランド、ボッテガ・ヴェネタの2024年春夏キャンペーンで、東京の公園を撮影地に使ったことが、SNSで話題を呼んでいます。
特に、公園のタコやパンダなどの動物型遊具を使用した、シュールで親しみやすいビジュアルとモードな表現が注目され、「聖地巡礼」のブームを引き起こしているほどです。
商業と創造性を結びつける新たな方法を探求し、日本独自の遊具を用いたことで、見る人に新鮮な感覚を提供することに成功しています。

https://www.vogue.co.jp/article/mayumi-numao-bottega-veneta-24ss-campaignより引用
今回は、視点を変えたビジュアル表現を活用した広告について考えてみました。
視点を変えたビジュアルは、新鮮で驚きのある体験を提供し、新たな価値を生み出す可能性があります。
一方で、このような視点の変更を取り入れる際は、ターゲットオーディエンスのニーズと期待を深く理解し、誤解が生じないよう配慮することも忘れてはなりません。
慎重に検討を重ね、新しい視点からのアプローチを取り入れることで、消費者の興味を引き、広告の魅力を高めることができると感じました。